023.喧嘩友達とか良いものですね
「ここはさ~、僕達が一肌脱ぐべきだと思うんだよね~」
短い尻尾……どこからが尻尾として良いのか不明だが……を振りながらエドワードが発言する。
「何か良案でも有るのですか?」
有るなら早く言いなさい。ピチチと囀ずって、ララがエドワードに詰め寄る。
「他の薬師の所にさ~、偵察に行ってくれば良いんじゃないかな?」
百聞は一見に如かずって言うしさ~。尻尾をふりふり、頭もふりふり。その内妙な節を付けて歌い出してもおかしくない感じである。
「確かに、わしらが何も知らないままでは、デイライト様のお役に立てないしのう」
うむうむとオスカーが頷く。
「皆で一斉に行くと、デイライト様の守りが薄くなるから、二人ずつ交代で行きましょうか」
表に出られるオスカーとララは分けた方が良いかもしれないわね。と、ゾーイも同意する。
うん、うちの子可愛いな。
居間のソファーに、クッションを抱えて沈み込みながら、ラグマットの上で顔を付き合わせて何やらわちゃわちゃと話し合っている妖精達を見て癒される。
結局図書館には、夕飯時まで頑張って残って勉強していた。
もう頭がパンパンで、揺さ振ったらこぼれ落ちそうである。気分的にだけど。
そんな訳で、精神的な疲れからだらけている所なのだ。
「と言う訳で、明日から二人ずつお側を離れる事になりますじゃ」
なるべく早く戻って来れる様に頑張ると言う眷属達に、居ないのは寂しいけど無理はしないようにと言い含める。
実際、彼ら以外に家族や仲間と呼べる存在は居なくて(親は居るらしいけど、顔も覚えていないから実感として無い)、寂しいと言うか心許ない気がする。
そんな訳で買い物です。
妖精達を働かせておいてぼーっとただ待つのも申し訳ないし、回復薬を作れるように偵察に行ってくれているなら、帰って来たら直ぐに取り掛かれるように、器材の用意位はしておかなければ。
道具を取り扱っているお店が分からなかったので、グレアムさんの所に聞きに行ってきた。
普通に生活していたら、調薬器材なんてどこで売っているか分からないもんなんです。
グレアムさんは流石年の功と言うか、顔も広いしどの店が信頼の置ける商売をしているかとか、そういう事にとても詳しかった。
あと、ソフィーおばあちゃんの手作りのお菓子美味しい。素朴だけど幾らでも食べられる。
お店で売れば良いのに。
「こんにちはー、あの、グレアムさんに紹介して貰って来たんですけど」
カロンと柔らかい音を断ててドアベルが鳴って、内部に客が来た事を知らせる。
ちょっと照明が控え目の店内は、硝子戸付きの木製の棚が並んでいて、棚の中には何に使うか分からない様な器材まで並んでいて、興味をそそられる。
「グレアムに?」
片眼鏡をくいっと上げてこっちを見たのは、気難しそうな顔をした狐の獣人さんだった。
この人がグレアムさんの言っていたアイヴァーさんかな?
喧嘩友達なんだそうです。愛想は悪いけど好い人だそうです。内緒だからグレアムさんがそう言っていた事は言っちゃ駄目って言われたんだけどね。
「はい。あ、これ渡すように言われていた手紙です」
訝しげな顔をされたので、グレアムさんに貰っていた紹介状を手渡した。
「ふむ……。確かにグレアムからの手紙だな」
アイヴァーさんは受け取った封筒を引っくり返して表裏確認し、黒くてちょっと細い爪を封に引っ掛けて開けて中を見た。
「あいつが私に対して紹介状を寄越すなんて珍しい。よっぽど気に入っているのか?」
じっと観察するような目で見られて、そう問われても、自分には何とも答え難い質問です。
「冒険者として依頼を受けてから、良くして貰っています」
ソフィーさんとか会う度におやつをくれるので、孫ポジとしてな気がするけど。
「まあいい。……で、調薬道具が欲しいんだったな。どんな物が欲しいんだ?」
手紙をちゃんと畳んで封筒に入れ、カウンターの引き出しにちゃんと仕舞いながらアイヴァーさんはそう聞いて来る。
引き出しの中に仕舞う時に、ちゃんとトレーを選んで入れていた所を見ると、見た目通りに几帳面な人のようだ。
「ええと、これから始めるので基本的な物は一式揃えたいと思っています。出来れば長く使える物が良いです」
グレアムさんが紹介してくれた人だし、要らない物や粗悪な物を売り付けて来たりはしないだろうと、基本一セットをお任せでと言ってみる。
「……ふむ。その買い方からすると、調薬はかじっただけか自己流か?王都の薬師なら弟子にそんな買い方をさせる訳がないからな」
じろりと観察する様に動く目に、ちょっと居心地が悪くなる。グレアムさんと違ってアイヴァーさんは割と背が高いので、見下ろされているのもあって。
「まあ、最初から中級向け以上の道具を買うのは止めておいた方が良い。本当は誰かに弟子入りして師匠の道具を使いつつ自分に合った物を揃えた方が良いんだが。……まあ、人にはそれぞれ事情もあるだろうしな」
アイヴァーさんはそう呟いて、カウンターの床に置いてあった編み籠を手に取ると、商品を並べてある棚の所へ行って、棚の下段から器具を幾つか取り出して戻って来た。
「最初なら下級回復薬か毒消しぐらいからだろう。それ以上は腕も無いのに作っても材料の無駄だからな。……この辺りが有れば事足りる筈だ」
籠から丁寧な手付きで道具を取り出して、カウンターに並べてくれる。
「これは、物は初級から中級の間だが、いわゆる中古品だ。先ずこれを使ってみて、不満点や改良点を洗い出してから自分に合った道具を買った方が良い」
買い換える時はちゃんと使えるなら古い道具の買い取りもしていると、アイヴァーさんは説明してくれる。
「勿論中古品では不満なら、新品の中級以上の道具も取り扱っているが」
ただし、中級以上の道具は職人が丁寧に作っているからそれなりにお高いとの事。一生物で使う様な職人の道具を自分用に調整せずに購入する事はお勧めできないと言う。
「ええと、じゃあこれでお願いします」
言葉に柔らかさは無くても、分かりやすく丁寧に説明されて、アイヴァーさんが用意してくれた器具を購入する事に決める。
「銀貨一枚だ」
頷いて更紙で器具を一つ一つ丁寧に包みながら、アイヴァーさんは値段を言った。
「安すぎじゃ……」
基本的に全部手作りなこっちの世界は、道具とかそういった物が割と高目の値段なのに、一式そろえて銀貨一枚とか肩から下げた革鞄の値段にも満たない。
「中古品だからな。問題ない」
包んだ器具を木箱に入れてくれようとしていたので、それを止めてから上着を脱いで緩衝材代わりになる様に包んで、買い物用の布袋に入れた。
「ありがとうございます、また来ます」
「ああ、不都合な所とか有ったらまた来ると良い」
ぺこりと頭を下げて荷物を持てば、吊り上がり気味の目を細めて、口の端だけ上げて笑みを返してくれた。
ちゃんと上客に成れる様に、調薬を頑張らなければ。
更新ちょっと遅くなりました、暑さが……暑さがいかんのです。
冬生まれなのでめっきり暑さに弱くて、思考能力とかもうもう……。
もふ分ちょっと増量しました。イケ爺アイヴァーさんです。イケ爺というかちょっと学者っぽい気難しい感じなんですけどね。
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そろそろ皆さまお盆休みなんでしょうか?私は姉と妹が帰省してきて振り回される側なんですが……。毎日暑いので熱中症や怪我などには気を付けて過ごしてくださいね。




