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第3話 偉い人からの注文

「なぁヅッキー」


「あん?」


「……どこで○ドアってホントにあるんだな」


「はぁ?」


 俺は昨日の出来事を思い出しながら、ヅッキーこと月野つきの伊里也いりやにぼやいていた。何を言ってるのかわからねーと思うが、ひみつ道具は実在するんだよ……。


「変なもんでも食ったのか、タック」


 ヅッキーが俺を変な目で見てくるが、お前だって俺と同じ体験をすれば同じことを思うに違いないんだ。しかしどう説明したって理解はしてくれそうにないので、俺もこれ以上は何も言わない。


「いや、なんでもねぇよ」


 かぶりを振って否定すると、目の前の作業に集中する。今日もピザ屋でバイト中なのだ。電話注文を受けていると、ヅッキーは焼きあがったピザを保温バッグに入れて配達に出て行った。今日初めて注文の電話を受けたが、いたってまともな客だったことに安心する。あんなことは二度あってたまるかという話だ。


「ふう……」


 時計を見るともう二十一時を過ぎたところだ。もうすぐラストオーダーの時間だ。……と安心しきったのがいけなかったんだろうか。


「お電話ありがとうございます! ピザ・チックタックです!」


 いつものようにかかってきた電話を取ると。


『――ザザ――――おぉ……、本当に繋がりよった』


 雑音が入ったかと思うと、急に音声が鮮明になる。


「……えーっと、ご注文でよろしいしょうか」


 背中に一筋の冷や汗が流れるのを感じつつ、定型文となっているセリフを電話越しに返す。


『――ゴホン。あぁ、よろしく頼む』


「それではご注文をどうぞ」


『例の肉に白いソースのかかったピザを頼む』


「…………」


『おい、聞こえとるか?』


 ――はっ!


 いかん、思わず思考が停止していた。昨日の中二病を拗らせた外国人の言葉がフラッシュバックしてしまった。……いやあれは外国人と呼んでいいのか?

 いやそれはどうでもいい。ってか『例の』ってなんだよ! まさか昨日のやつとつながりがあるとか言うんじゃねぇだろうな!?


「……失礼しました。プルコギマヨピザですね。サイズと枚数はいかがいたしましょう」

『あぁ、一番大きいやつで何人前だ』


「……Lサイズは3~4人前となっております」


 仕事中にツッコミを入れるわけにもいかず、マニュアル対応しかできない自分が恨めしい。嫌な予感が膨らんでくるが、まさか二日連続でよくわからん不思議体験はしないだろ……。


『そうか、ならば三枚ほどくれ』


「かしこまりました。他にご注文はよろしかったでしょうか」


『あぁ、それでかまわん』


「……では、お名前とお電話番号と……、ご住所をお伺いしてもよろしいでしょうか」


 ごくりと喉を鳴らしつつ、最後の砦となりそうな住所を確認する。

 ……頼む、日本国内であってくれ。もうわけのわからん注文は勘弁なんだ。俺は普通に配達がしたい……!


『おっと、そういえば自己紹介がまだだったな。私はセイグリッド王国近衛部隊副隊長をしているヘングラル・ゴルディストという者だ』


「あ、はい」


 なんか聞いたことある王国きたよ、おい!

 前回はよくわからん扉が出現したけど、まさかまた同じことになるとか言わねぇよな……。絶対に行きたくないんだが。……もし帰ってこれなくなったらどうすんだよ。代わりにヅッキー……って配達に行ったんだった。


「おいタック、注文取り終わったんなら伝票もらってくぞ」


 ――あっ、ちょっと待っ!


 電話中に声を出すわけにもいかず、手を伸ばすがむなしく空振りしてしまった。ちらりと横を見たのがいけなかったのか、他のバイトが空気を読まずに伝票をもって厨房へと行ってしまう。


『ところでなんだが……』


「は……、はい、なんでございましょう」


 去っていったバイトを睨みつけていると、変な言葉で応対してしまう。


『でんわばんごうというのはなんなのだ……?』


 客の声に思わず耳を離して受話器を見つめてしまう。おいおい、いったんあんたは何から電話をかけてんだよ。電話じゃねーっつーのかよ。


「ええと、電話番号がないとこうやって通話できないと思うんですが……」


『む……、そうなのか。……魔女のやり方で問題なく話はできているんだが……。ふむ……』


 いやしかし、今は電話番号通知サービスがある時代だ。通話中の今は確認できないが、あとで調べたらわかるか。……そういえば昨日は慌てすぎてたのか、電話番号見てなかったな。


「わからないのであればこちらで調べますので大丈夫です」


『それならばよい』


「ただその、大変申し訳ありませんが、配達できるエリアは限られておりまして、当店からはだいたい半径二キロとなっております」


 前回と同じセリフで、配達は無理だと伝えておく。よくわからん王国まで送り届けられるわけがない。前回は失敗したが、今回こそ自分の家に配達して今日の晩飯に……、ってLサイズのピザ三枚も食えるか!

 思わず受話器を床にたたきつけそうになったがぐっとこらえる。


『はは、大丈夫だ。きちんと送り迎えはしよう。魔女の時のように玄関先で放置などせぬ』


「はぁ……、ありがとうございます」


 まったくもってよくわからないが、反射でお礼が口に出てしまう。いやだから送り迎えできるんなら店まで取りに来いと小一時間――。


『ではよろしく頼んだ』


「あ……、お会計――」


 合計12,150円になります、と続けようとしたところで電話が切れた。『ツーツー』としか言わなくなった受話器の切りボタンを押すとため息を一つつく。払ってくれるとは期待していないが、それでも伝えないわけにはいかないんだが。しかし一万円越えとか痛いな……。


「そういや電話番号は……」


 気を取り直して履歴ボタンを押すと、電話番号の欄には「----」の文字が並んでいた。


「……なんでやねん」

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