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◆時刻は12時 場所は例のゲーム部屋

 例のテンペストってゲームのある部屋に戻るとユラは徐ろに服を脱ぎ始める。つっても上はパーカーしか着てないし、ショーパンだって服としての体を成してるかと言えば疑問に思える部類なんだよなぁ。それで今度は同部屋内に椅子が無いもんだから、カーペットにケツを下ろしてスニーカーブーツを引っ張ってた。最終的には体を床に倒しながら勢いよくすっぽ抜いて、空中へ飛ばしたブーツを俺がキャッチする。


 起き上がりローファーへと履き替えたヤツに返すと、靴のつま先で地面をトントンとノックしながら笑って楽になったと話した。コスプレも大変だな。ドア側の壁を開いて衣類を収納する姿の向こうは、まだ見ぬ混沌ともいうべき珍妙な服が眠っているのだろう。それにしても……


「ねえ、今日はどのネクタイがいいかな」


「まず服着て、それから聞いてきてくれ。風邪引くぞ」


 昨日に引き続いてまたネクタイを取り出したユラは現在、パンイチ、ローファー、ミドルソックスだけの姿だ。まだ殆ど何も着てないのにネクタイだけ先に選べとか、気が早いすぎる。目立つ青白い肌と相反してパンツは意外にも、生地がやけにテラテラした黒のローライズボクサータイプで、靴下も靴もおんなじ色。もっとド派手なパンツ履いてそうなもんだと思ってたが、多分さっきのズボンに合わせて短いのにしたってだけか?


「あ、そうだね。ありがとう」


「……また昨日着てた支配人の服か?」


「うん!」


 てかホント、マジで人形みたいなカラダしてる。目を逸らして変に思われても嫌だから、なるべく真っ直ぐ見るようにしてたが、直でピンク色の乳輪見えるしなんか微かにプックリしてるし乳頭埋もれててスジだけしか見えないし、本当にコイツ男かよ……てか今まで女のいなかった俺を誰かが試してんのか? なんか自分が怖いわ。と少し思ってた自分への恐怖に戦慄が滲む。奴はその場で更に、最後の壁ともいうべき下半身の一枚にも手をかけていた!


「まて何でパンツを脱ぐ、ここは更衣室か?」


「え? だって今からシャツ着るから」


「は?」


「あ、知らないの?

 Yシャツってパンツと一体で、下の撓んだとこで留めるんだよ」


 い つ の 時 代 の 話 だ よ。 てかそんな情報どこで植え付けられた。んで昨日の服ハンガーフックに掛かってるけどよく見たらうわあああレオタードみたいになってるし! もう既に股下で留まってて正にパンツと一体じゃねぇか、寧ろそんな服どこで売ってんだ!


「おいおいおいおいちょっとまって脱ぐな、俺の後ろで屈むな!

 仮にそれが下着を兼ねてたとしても汚れ防止用で一枚下に履いとけ、な?」


「えー、だってまだズボン履くし蒸れるし」


 いやたしかに俺もなんか熱くてたまらん……でもなんか違う、あらゆる意味において!


「蒸れるってんなら……なんだ? あれだ!

 通気性の良い薄いやつとか履け、な?

 お前ならシルク生地とかの持ってるだろ?

 金持ちなんだし、服が汚れるのはヤじゃん?」


「……確かに。じゃあ履き替えるだけにしとこっと」


 ユラは俺の説得に応じて、とりあえずパンツは履くことに関し了承はした。てかコイツがパンツ履こうが履かなかろうがどうでも良かったよな、何でこんな必死だったんだと今更ながらに考え掌を顔に当てた。そしたらトドメとばかりに指の間からとんでもないものが見える。


「また奥からなんか出してきてるが、それ履くのか?」


「うん、これなら蒸れないしね」


「……俺上で炭酸ジュース買って来る」


「あ、いってらっしゃい」


 後は部屋から無言で出た。奴の持ってたのはTバック……というかレオタードの付属品かなんかだって考えるなら、多分水着のインナーみたいなものだと思う。男の水着でもインナーは別ってのあるもんな……だよな、アレなら確かに蒸れはしないしOKだ、と必死に心を落ち着かせた。


 暫く時間を開けて再び下に降りると、扉を開いたすぐ先には着替え終わったユラが笑顔で待ち構えていて、さあ選べと言わんばかりに早速ネクタイの束を突き出す。めんどくさかった俺は中でも一番目立ちそうな、真っ黄色でビニールっぽい変な素材のタイを手に取り付けてやった。


 ……自分で選んどいて何だけど素材同士が重なると滑らなくて付けにくい。それでもやっと結い終わって見ると、ブレードには安全第一と修悦体フォントで描かれ、第だけ赤、後は白抜きに印字されている。工事の立て看板?


「ほい、付け終わったぞ」


「ありがと、フフフ。変なの」


 言ってる割には笑って眺めてる。俺もつられてぼおっと見てると、そのスキで頭の上に何か被せられた。……安全ヘルメット? ユラも同じのを被っている。


「はい、という訳でダブルチェック、ヨシ!ヨシ! 今日も一日ご安全に」


「どこでそんなの覚えてくるんだ?」


「フフ、それじゃあ着替え終えたので、早速始めましょう。

 楽しいゲームの開始です」


 ユラは支配人の姿になり、ヘルメットを胸に抱え劇の幕開けみたいに礼をした。すると待機モードが溶けたのか奥のコンピューターが少し忙しそうに動き始める。握りしめたコインは手の温度が伝わって、手汗のせいでしっとりしていた。この部屋に戻って聞いた質問、このゲームは何? に対し帰ってきた答えを思い出す。


 ゲームはゲームだよ。

 でもゲームってどこからどこまでがゲームなんだろうって。

 そんな風に考えたこと無い?

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