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50話

いい加減怒り狂うアクティビティにも飽きてきて、出るはずもないあくびを我慢しながらただ走る続ける。

先程の街が捨てられた時と同じくして、使われなくなったのであろうこの道は三車線ほどの広い道幅を持ちながら高速道路のようにまっすぐと伸びていた。

街の規模にしては大きな道だと、退屈のあまりふと気になった。

きっとあの街は炭鉱街か何かで、廃坑に伴って放棄されたんだろうか? そんなどうでも良い事に思いを寄せる。


牽引車を片付けた事によって軽くなったにも関わらず、アクティビティとの差はジリジリと離れる程度に留まっている。

何処か壊れたのかと不安になったが、一瞬アクティビティの排気音に混じって聞こえた過給器の音に、流石に向こうも更に改造してきたらしい。

HOSODAの車に過給器なんて邪道極まりない話だが、思い返せば、現行型のバージョンRだって、確か2リットルターボで320馬力になったなんて話を聞いた覚えがある。

とは言え、俺より馬力が出ている風ではない、無知なのか限界なのか知らないが、ポン付けタービンの類でも付けているんだろうか?

どちらにしても、前輪駆動に成ってしまっている俺としては、このまま改造に改造を重ねた馬力競争になると分が悪いので、これが限界であってほしい。


僅かにアップダウンはしてるが、視界の限り、道路は真っ直ぐに伸びた一本道だ。

アクティビティとは100メートル程離れているが、曲がるなり何なりしてもらわないと撒くことが出来ない。

俺のほうが早いんだから問題ないだろうと言われるかもしれないが、いつまでも追われ続けているというのも精神的にキツイ物があり、テクニカルなコースに成ってくれないかと、切に願った。


「あっ…どうしよビーちゃん…道がなくなってる…」


若干の下りに差し掛かった時、レヴィが前方を指さしながら淡々と声を上げた。


『お、やっと終わりか。それじゃ獣道に備えてセッティング変える準備しないといけないな。』


道が無くなってることにレヴィは不安を感じてるようだけど、俺としてはこんな直線道路が続くよりも有難い。

さっき迄のダウンヒルで、俺のほうが技術があると判明した以上、道が複雑な方が引き離せる確率が高いからだ。


「いや…そうじゃなくてね…なんていうんだろ……そうだ。地面が無くなってるんだよ」


『はぁ?????』


何の事か分からずナビを見るも、廃棄されているからだろうか、街跡はもちろん道路も地図には反映されてない。

それ以上うまく言葉が出ないレヴィの言葉に混乱していると、ナックが横から補填してくれた。

それによると、地割れか何かでこの先の道路がプッツリと途切れていると言う事だった……。


『クソッ、一度横の森に入って戻るしかないか…』


ナビを見ながら迂回路を探すも、付近に道らしきものは見当たらない。

この場所自体も、山に囲まれた谷の突き当たり部分で、地割れが何処まで続いてるか解らない以上、再びさっきの峠を越えて戻るしか王城に続く道が無いと俺は判断する。


「…飛べないかな?」


ポツリとレヴィがこぼす。


『いや、流石にそんな漫画みたいなことは無理だろ』


事前に下見でも出来ていて、ジャンプ台でも設置できればともかく。ぶっつけ本番で地割れを飛び越えるなんて、いくらなんでもロマンが過ぎる。


「でも、あの人一人じゃなかったよね?もう一度山を越えるとして、上り坂で挟まれたらマズイんじゃないの?」


『何だそれ?初耳だぞ??』


「え?だって橋のところに沢山いたよね?」


レヴィはナックに視線を送って同意を求める。

ナックはコクリと頷きながら、確かに橋の向こうに10頭ほどの馬に乗った一団が居たと、証言する。


「橋から少し離れていたから、ビーちゃんは気が付かなかったのかもな?」


合わせて、そんなフォローもしてくれた。

一先ず、もう一台Kトラが居たわけじゃなかったかと安心した。

とは言え、ここ迄の経過時間を考えてみれば、レヴィの言う通り、上り坂の途中で挟まれる可能性は少なくない。

そもそも、その10騎が追手である確証はないんだけども、今の状況からすれば淡い期待過ぎるだろう。


「無理は承知で私からもお願いします。」


いつの間にか開かれていた後部窓から、王女様が顔を出してそんな事を言う。


『いや、お願いしますと言われても、成功する確率なんて皆無に等しいギャンブルだぞ?!!』


「構いません。王城を目の前にここで引き返し、あまつさえ捕まるような事になれば悔やんでもくやみきれません。そもそも、彼が居ない世界に未練はありませんもの。引き離され、別々に死に逝くのでしたらここで共に添い遂げたく思います。」


王女はそんな事を言いながら、うっとりした眼でアルマンドを見つめ、アルマンドもそれに答えるように王女の手をそっと掴む。

…………二人の世界に浸るのは構わないんだけど、俺はこんな所でレヴィを死なせるつもりはないから…

そんな言葉を言いかけた時、


「良いんじゃねーかビーちゃん…どうせ捕まったら王女様以外は生き残れねぇ。別に自暴自棄に成ってるわけじゃねーぞ?引き返して逃げ切れる確率よりも、あの地割れを飛べる確率の方が高いだろうとふんでるだけだからな。」


王女様の後ろからそんなルーフェンの声が聞こえた。


『それ何の根拠だよ!!』


なんの根拠のかけらもないルーフェンの言葉に、自暴自棄に成ってるとしか思えない。

しかし、サリューもナックも、ルーフェンと同じような眼で、ナビを見つめていた。


「行くしかないね」


レヴィがにこやかに笑ってハンドルを握る。


『だけどレヴィ…』

       「大丈夫だよ。ビーちゃんなら絶対できるから」


まるで未来を知ってるかのように、レヴィは欠片の不安を見せることなくそう言い切った。 



新年おめでとうございます。

本作はこのまま土曜日更新の予定です。


稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。



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