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48話

スパイクタイヤをこまめに履き替え、なんとか80キロぐらいを保っているが、俺にできることはこれ以上急勾配にならないことを祈るくらいだ。

追い越される心配のない状況で、なぜ速度にこだわっているかというと、コーナーの立ち上がりでアクティビティに押されて止まらずに済んだ場面が2度ほどあったのだ。

喜んでぶつけに来るような奴だからよかったが、普通に車間を取られてたらとっくの昔に動けなくなっていたかもしれない。

流石のアクティビティもその2回で察したのだろうか、コーナーの立ち上がりで突いて来なくなり、なんとか前に進んでくれと、コーナーの立ち上がりの度にヒヤヒヤしっぱなしだ。


対するアクティビティはと言うと、同じように無茶な積み替えをしているのに、しっかり四輪駆動できているようだった。

どうやらエンジンやミッションと言った主要部分の改造に関しては、ベース車のメーカーに限定されてるらしく、開発してきた車種数の違いが思わぬハンデになってしまった。




苦し紛れの神頼みの綱渡りみたいなヒルクライムにもようやく終わりが見えた。

道がなだらかになり始め、とりわけ深く彫り込まれた崖の間を抜けると、眼下に広大に広がる森が見え、ようやく峠にたどり着いた。


「おいビーちゃん、あれ王都じゃねーか?!」


ナックが前方を指差し、弾けるような声でそう叫ぶ。


『マジか?!!!』


指さされた方向にカメラを凝らしてみるが、相変わらず俺には見えない。

とはいえ、予期せず入ってしまった山越えだったが、結果的に王都に繋がっているならば嬉しい誤算というやつだ。


「あっ…だめだよナック…途中で道がなくなっちゃってる…」


レビィはナビを操作しながら、沈んだ声でナックに返す。


『大丈夫だレヴィ。獣道すらなかったとしても、地面さえ続いていればなんとかなる!』


自分で言いながら呆れそうになる、俺の大丈夫…

いい加減気休めにも成らないかも知れないが、未来が見えるわけじゃ無いんだから勘弁してほしい…


『とは言ってもここで引き離さないと色々と苦しくなるからな…限界まで攻めるぞ!怖いだろうが我慢してくれよ。』


俺は一方的にそう言い放つと、返事を待たずにアクセルを全開にした。

目の前で戦争でもしてるかのような爆音が響き渡り、慌ててマフラーを取り付ける。

ノーマルよりは抜けのいい、吹き上がりを重視した物にしよう。

エアクリなんかも容量は上げるが、タービンは敢えてノーマルのまま。こんな路面じゃ、馬力よりも扱いやすさが重要だ。

そしてミスファイヤリングシステム。ノーマルタービンで必要か?とも思うが、少ないターボラグをこいつで更に消していく計算だ。


さっき迄とは打って変わった心地よい排気音を響かせながら、砂の浮いた路面を猛スピードで駆け下りていく。

こっちの下りは、上りのときよりもなだらかに成っている事を考慮しても、傍から見たら明らかに頭の悪い速度だろう。なんせ下りの道は尾根の様になっていて、右も左も壁がない。

タイヤのスパイク一つ一つが、路面に突き刺さる感覚を感じ取れる今であっても、正直ヒヤヒヤが止まらない。


コーナーを前にしてブレーキング。

いきなり一気に踏み込むわけでなく、最初は軽く。前だけでなく、後輪のサスにも荷重がかかったことを確認して初めて全力で踏んでいく。

ほんの僅かな事なので、傍から見ても分からないが、上手くなればなるほどこれを更に一瞬でやってのけるわけだ。

競技する上では基本とも言える技術なんだけど、これがまぁ奥深く…何処かの豆腐屋の息子の様に、親の仇みたいにドカンと踏んだら、たちまちフロントがロックしてしまうので慌ててはいけない。

ブレーキのタイミングは、流石に一発目からの冒険はできないので、余り過ぎるくらいのタイミングから、徐々に詰めていき路面とタイヤ噛み具合を探っていく。

いくつかのコーナーを抜け、大凡の効き具合を確認できれば、あとはそれを信じてブレーキタイミングを決めるだけだ。

綱渡りすぎるのは解っているが、そうでもしないとなかなかアクティビティとの差が広がらない…後ろから付いてくる分には、ブレーキタイミングもコーナーの深さも俺を見て決めればいいのだから、それを引き離すと成ると兎に角攻めていくしかない。


目の前にまた次のコーナーが迫ってくる。ナビの地図から深さを探り、突入スピードを決める。

この世界の峠道には当然ガードレールなんてなくて、遮蔽物なくパノラマの景色が広がっている。

青々とした空の下に広大な森が空の境目まで続いてて、前世では写真でも見たことなかったようなその雄大な景色に心奪われそうに成るが、実際に心奪われてたらそのまま空と繋がっているわけで…生きた心地がしないなんて可愛いものじゃない。

それでもだんだん慣れてくるんだから…人間の神経ってやつは恐ろしい………

Kトラだけど…。

ブクマ及び評価有難うございます。

まだまだ手探りで書き進めていますので、忌憚のないご意見ご感想、お寄せいただければ幸いです。

稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。



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