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45話

川沿いの堤防道路みたいな道を、アクセル全開で走り続ける。

左右の土手はさっきまでよりまだ高く、道幅は俺の大凡1.5台分といったところだろうか?

曲がりくねっているわけではないが、ナックにとっては綱渡りしてるみたいな心境なんだろう。力強く握られた手すりから、滴るくらい汗ばんでいて気持ち悪い。


『レヴィ、後ろ来てるか?』


「ん~……来てないね。もしかして本当に壊れたのかな?」


ミラー越しにアクティビティの姿が見えるかと聞いたつもりが、レヴィは躊躇うこと無く窓から身を乗り出して後ろを確認してくれた。

ナックと違って恐怖は感じていないらしい。

余程俺の事を信頼してくれているのかと、グッとなにかが込み上げてきたが、考えてみれば前の世界でも女性はこういうジェットコースター的なものが大好きだった。世界が変わってもその辺は同じなんだろうか?


既に500~600メートルは離れただろうか?アクティビティが追ってくる気配は未だ無い。

本当に壊れたか?

俺と同じシステムだとしたら、例え全損だとしても一瞬で治る筈で…

可能性としては修理代が足りなかった位だろうか?

淡い期待が頭をよぎる。


ンンンーーーーーーパァァァアアア!


得てして冴えない時は、期待したら裏切られるというのが世の常で、あまりにも絶妙すぎるこのタイミングに、敗北フラグなんて言葉が頭をよぎった。


『だぁぁぁ!フラグなんか気にしててタイムが縮まるか!くだらねえ心配する暇があったらとっとと逃げろってんだ!なあレヴィ。』


「え!?…あ、うん逃げなきゃね。だけどビーちゃんこれ以上スピード出ないんじゃないの?」


『そうなんだよなぁ…』


逃げると言っても、アクセルはとっくにベタ踏み。

ギアもエンジンも伸びる余地が残っていない。


「そうだぜビーちゃん、何とかしないと追い付かれるのも時間の問題だぞ!」


『うるせー!言われなくてもわかってんだよ。なんならナック、飛び降りてくれるか?図体がでかいぶん結構早くなるかもしれねぇぞ。』


「ビーちゃん…俺の扱い悪すぎだろう……。とは言っても俺もプロだ。それでなんとかなるなら飛び降りるぞ?」


ナックはそう言って、真顔でドアレバーに手をかける。


『あーそうだなあ…2キロ位早くなったら上出来じゃねえか?』


「2 キロ?…ってどういうことだ?結構違うのか??」


『おー違うぞ。これぐらいから…これぐらいだ』


アクセルを少し緩め、2キロ減速してから再びゆっくりと加速していく。


「はぁ?」


『だから……これぐらいから…これぐらいだよ』


伝わらないナックのために、俺は再び実演してみせる。


「誤差じゃねーかそんなもん!!」


狭い車内にナックの怒声が響き渡たった。


『ハハハ。この程度のことで何とかなるならとっくに叩き出してるに決まってるだろ。………っと…ふざけてないでナックも真面目に考えろよ?』


ついつい何時ものように、ナックを弄って悪ノリしていると、レヴィの視線に気がついた。

今は遊んでる場合じゃないでしょ?

無言のレビィの冷めた視線がそう語る。


確かに遊んでいる場合じゃなかった。

アクティビティはすぐ後ろまで迫ってきてる。


(『…やっぱこれしかないか……。』)

 

色々と追い詰められてた俺に、ナックをいじる余裕ができたのは、改造項目の中に現状を打開できそうな物を見つけたからだ。

それでもすぐに実行しなかったのは、主に俺のちんけなプライドと、本当にできるのか技術的な不安…。まぁ、技術的な不安といっても、気持ち的にはなんとかなるだろうと達観してる割合の方が多い。既に色々とツッコミどころは満載な仕様なわけだし。

だけど、何とも言葉にし難い諸々の不満なんかが積み重なって、決断を踏みとどまらせていた。


アクティビティはピタリと後ろに付けて、わざとらしく余ったアクセルを吹かして煽る。

同時に何やら叫んでいるけど、排気音が煩くて聞き取れない。

好きなだけ煽れば良い。この道幅じゃ絶対抜けないし、今度の土手を降りようとしたら…

おっと、またフラグが立ちかねないからこれ以上は止めておこう。

とにかく……

“ゴンッ!”

「うおっ!」

「キャッ」


突然の鈍い衝撃と同時に挙動が乱れる。

アクティビティが勢いを付けて後ろからぶつけてきやがった。


『あーくそ!どうにでもなれ!!』


こうなってくると、不安とかこだわりとか言ってられない。

挙動が乱れてるところに続けて当たってこられたら、さすがに為す術もなく吹き飛んでしまう。こんな速度で土手の下まで転がり落ちたら、たとえ外装は無事でも中の人間がどうなるか想像もつかない。

やけくそぎみに叫んだ俺は、王女様達に二階に上がって貰うようナックに頼み、移動が完了したのを見届けてから、実行ボタンを押す。


荷台の後ろ半分以上がキラキラと強い光につつまれる。

同時に唸りを上げていたエンジン音が消え、惰性のままに速度が落ちること十数秒といったところだろうか?

デロロンと、重く低いエンジン音が鳴ると同時に、フロントタイヤが砂を巻き上げ、俺は爆発的な勢いで加速を始めた。


ブクマ及び評価有難うございます。

まだまだ手探りで書き進めていますので、忌憚のないご意見ご感想、お寄せいただければ幸いです。

稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。

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