42話
そんなこんなでまたしばらく走り、交代時間を迎えたナックはレヴィに運転席を譲るために人気のない場所を選んで車を停める。
「いいぜレヴィ。」
ナックは車内から周囲を見回し、ドアを開けて車から降りると、再び周囲の気配を念入りに探り探ってからレビィにそう声をかける。
レヴィが車から降りると、ルーフェンとサリューが万一に備えて待ち構えてくれていた。
(『きちんとやってたらこいつら本当かっこいいんだけどな…』)
取り立てて気取った様子もなくきびきびと動くナッサルを見て、素直にそう思えるだけに、普段の情けない姿が残念でならない。
「ん~」と、1つ大きく伸びをしたレビィが、ふと、何かを見つけて動きを止めた。
「ふぁ~…ビーちゃんと同じ魔道具って他にもあったんだ…」
(『ん?』)
レヴィの言葉の意味が理解できずに、俺は存在しない首をかしげる。
ギッ っと、ボディーが少し左に傾いた。
「おーほんとだな。もしかして、ビーちゃんの友達だったりするのか?」
レビィに続いて、ナックも遠くを見ながらそんなことを言う。
二人の視線の先を目で追うが、ドラレコのカメラは勿論、ヘッドライト辺りにあると思われる俺の目でも、何も見つけられなかった。
(『この世界の人間は、視力6とか平気であるんだろうな…』)
ルーフェンとサリューも混ざり、何だかんだと言っている。
俺には見えない遠くの物を見る四人を前にそんな事を考えた。
クワン、クワン、クワーン…と、遠くの方から甲高いエンジン音が響いてくる。
「あ、動き出した」
皆が見つめる視線の先に、モクモクと土煙が立ち始めている。
俺は ”ビッビッ” っと軽くホーンを鳴らして、車に乗り込むよう催促する。
「おっとすまねえ、ぼーっと見てる場合じゃないな。」
我に帰った四人は、ナックの号令で急いで俺に乗り込んでいった。
「王女様、念の為外から見えないよう隠れていてください。」
レビィの言葉に王女さ様は頷くと、小窓から出していた顔を奥に引っ込める。
同時にレビィの視線が小窓とナビを往復する。
一瞬何かと考えたが、直ぐにレビィの考えに思い当たり、俺は外していた小窓のガラスをはめ込んだ。
『言っとくけど対して音遮らないからな?』
小音量で言いながら、マフラーをチタンに代えてアイドリングを少し上げておく。リアエンジンなので、多少は声が漏れにくく成るだろう。
「うん、だけど筒抜けよりマシでしょ? それよりビーちゃん、友達っていう線は無さそうなの?」
レビィは、爆音撒き散らしながら迫ってくる物を見ながらそう聞いた。
『んー見る限り俺と同類なのは間違いないと思うけど、流石に友達だなんて事はあり得ないと思うよ…』
爆音の主は、既に俺の眼でも輪郭を捉える事が出来ている。
(『アクティビティか…』)
ボンネットに輝くエンブレムを見て、細田技研工業のKトラ、アクティビティだと断定した。
『ごめん。本当は直ぐに逃げるべきなんだろうけど、初めて出会った同類でさ…』
こんな異世界で出会えるとは、夢にも思わなかった同郷の奴が目の前にいる。確率的に9割は敵だろうと思っていても、1割の可能性を無視できない。
「あはは。それは仕方ないよ、それに私も結構興味あるし。」
「ビーちゃんの事だ、どうせどうとでもなるんだろ?」
トラブルに自ら足を突っ込むような俺の我儘を、嫌な顔1つせずに受け入れてくれてほんとありがたい。
(『絶対王都まで無事に届けるからな…』)
改めて、一人心でそう誓った。
まぁ、実際の所勝算はある。
ノーマルNA同士でも5psからの差がある2台だ。
その上俺はスーパーチャージャーを搭載してる。
キャンプキャリーの重量を相殺してもお釣りが来る計算だ。
対するアクティビティの排気音からは過給器の音は聞こえない。軽トラとは思えない爆音から、マフラーもスカスカなんだろう。
ハイギヤードが売りのアクティビティだけど、その域に達するまでに引き離す自信は十分にあった。
”バリバリバリバリ”と、車好きでも騒音にしか聞こえない排気音をさせながら、白いアクティビティが目の前に停まる。
真っ黒なスモークがフロント三枚に貼られていて、車内の様子は見えなかった。
キャビンの天井がキラキラと光り、広報用のスピーカーが姿を表す。
”キィィィィィィン!”
と、つんざく様なハウリングを響かせてから、アクティビティが話す。
「コラ!ボケカスハゲェ!!そこに王女乗ってるんは分かってるんじゃ、このチンカス!タラタラしてんとさっさと引き渡さんかい、ボケなすが!!」
開口一番、言いたい放題だ…
ブクマ及び評価有難うございます。
まだまだ手探りで書き進めていますので、忌憚のないご意見ご感想、お寄せいただければ幸いです。
稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。




