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40話

「レヴィ、そろそろ代わるぜ」


「そだね。それじゃぁお願いしようかな。」


レヴィはそう言って俺を肩路に停めて、運転席をナックに譲る。

王女様の俺の評価は上々で、移動しながらでも十分眠れると言うので、皆と相談して夜営せずに進む事になった。

とはいえ、流石にレヴィ一人で運転し続けるのも無理があるので、時折ナックと代わってレヴィは助手席で仮眠するようにした。

その後はいつ現れるかわからない刺客の存在に緊張しながら走っていたが、結局誰一人現れる事無くディスティナに到着し、行程の半分を終えた。

考えてみればこの世界には電信があるわけでもなく、クロードが俺たちを追うことを誰かに伝えていたとしても、俺の移動速度に追いついて あまつさえ先回りするなんていうのは無理な話だと気が付いた。


「 アルマンド!」


レヴィがルーフェンの実家近くに車を停めて、キャンピングキャリーの扉を開けると、王女様はルーフェンの兄の名を叫び飛び出すように走って行った。

ナッサルと付き人の女性は 慌ててそれを追っていく。

そのあまりの勢いに取り残された俺とレビーは互いに顔を見合わせて苦笑いした。



ルーフェンの両親は、ナッサルは勿論、レヴィも家に招き入れ、ちょっとした宴で(もてな)した。

相変わらず渋るレヴィも、飯くらいは頂いてこいと送り出した。

日が暮れて、星が瞬きだした空を、俺はただ無心で眺めてた。

寂しくないと言えば嘘になるが、無い物ねだりで落ち込むほど若くはない。

空なんて、変わり映えするような物でもないが、無心で眺めていると意外と時間は経過していて、案外俺にあってるらしい。


”コンコン”


っと助手席の窓がノックされる。生身に体ならすっ転ぶ程びっくりしたが、この体じゃそれも儘ならないのが幸いした。


「ありがとうなビーちゃん」


助手席に座らせたルーフェンが真顔で言う。


『何だそれ、気持ち悪いな…死期でも悟ったか?』


「おまっ…人が素直に感謝してるのに気持ち悪いって酷くないか?」


『いやいやいやいや、何でそんな終わったつもりなんだよ。邪魔が入るとすればむしろこれからなのは分かってんだろ?』


「あぁ。それはもちろん分かってるよ。なんていうかな、これは終わったつもりとか油断とかじゃないんだよ。ただ、兄貴達の嬉しそうな顔を見てたらよ、ここまで無事に来れたことだけでも感謝したいって気にさせられたんだよ。」


見たことなくしおらしいルーフェンに、なんだかむず痒くなってくる。


『わかった!それ以上は何も言うなルーフェン。フラグが立っちまう。』


「フラグ?」


『いや、なんでもねえよ。ほら明日の朝も早いんだ呑みすぎて使い物にならないとかは勘弁してくれよ?』


「ハハハそんなことはありえねェ!……とは言い切れないのが辛いところだよな?」


『だよな?じゃねーよ!そうならないようにしっかり監視してこい!』


「あぁ、それもそうだな。それじゃあビーちゃん明日からまたよろしくな。」


ルーフェンはそう言ってドアを閉めると、手を振りながら家の方に向かって歩いて行った。


ルーフェンが立ち去ってから程なくして、今度はレヴィーが帰って来る。


「ビーちゃんただいまっ!」


『おかえりレヴィ。食事は美味しかったか?』


「うん美味しかった。初めて見るような食べ物も沢山あってね、流石は貴族だなーって感心してたらさ、ルーフェンも「こんなの見たことない!」とか言って驚いていたのが面白かったよ。」


『そりゃすごそうだな。まぁ、この結婚がうまくいったら下級貴族から一気に王族へ仲間入りだ。親父さんに気合が入るのも当然か。』


「だねー。正直、当人達以上にご両親のテンションが物凄かったよ……ふぁ~。」


レビィはそう言って中の様子を振り返り、最後に大きなあくびを零す。


『ははは。お疲れ様……ほら……』


俺は牽引車に風呂をセットしてしてから連結を解除する。

少し車を移動して、風呂と運転席のドアか目の前になるように配置した。


「おぉ…いたれりつくせりだ。」


レビィは小さな感嘆を上げながら、もぞもぞと風呂に向かって移動して行った。

風呂場の鍵がかけられたのを見届けて、車体のメンテナンスでもしようかとステータスを開く。

予算が続く限りという前提だけど、気になる部分は早めの交換を心がけてる。例えばフィルターエレメントなんかは、毎日砂埃を巻き上げて走っているので、殆んど毎日交換しているだろう。


『あの頃にもこれだけ資金の余裕があったらな…』


一通りのチェックを終えて、そんな独り言を溢しながら、競技時代を思い出す。

壊れかけのパーツを騙し騙して使っていた頃が懐かしい。

何気なく、昔のことを思い出し、ちょっと感傷的な自分に浸る。


『おっ元気に走ってるな…』


遥か遠くからカン高い排気音が聞こえた気がした。頻繁にシフトチェンジしているので、多分峠を攻めているんだろう。

釣られて自分の峠時代まで思い出す。

誰よりも技術があれば、誰よりも速く走れると夢を見ていた青い時代だ。


(あれ?)

“カチャリ”


妙な違和感を感じた瞬間、レヴィが浴室のドアを開けて出てきた。


「ビーちゃん、石鹸の買い置きってまだあった?」


レヴィの湯上がり姿にアイドリングが若干高まる。いい歳こいてと言われるかもしれないが、こればっかりは毎日見てても見飽きることがない。


『あーうん。あと一個だけあるな。』


「ほんと?良かった…。全くどんな使い方したのか知らないけどさ、滅茶苦茶ちっちゃく成っててビックリしたよ。」


『マジか!間違いなくナッサルだろうな。後で別経費で請求しとくよ。』


「あはは。そうしよう。」


その後は、ベットに潜り込んだレヴィと窓越しに他愛もない会話を交わし、再びレヴィが大きなあくびを溢したところで、明かりを消した。


ブクマ有難うございます。

まだまだ手探りで書き進めていますので、忌憚のないご意見ご感想、お寄せいただければ幸いです。

稚拙な文章で読みにくいとは思いますが、生暖かく見守って頂けますようお願いします。

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