33話
次の日、変わらず俺たちはカンパニアの村に居た。
この村から首都ウナチオネまでは350キロもない、移動は1日有れば十分なので今日はこの村で骨休めだ。
『レヴィ、あっちに混ざらなくて良いのか?』
「うん、さっき朝ごはんの分くらいは食べさせて貰ったし。流石に朝からアレに交じるのはきついよ」
そう言って呆れた様な笑顔を見せるレヴィ。
俺とレヴィを除いた他の面々は、村長宅で朝からどんちゃん騒ぎを繰り広げてる。
初日といい、今日といい。それだけ宴会を開ける予算があるなら、もっと成功報酬を上乗せしとけば早い段階で依頼を受ける奴が居たんじゃないだろうかと思わずにいられない。
その日レヴィは一日中、俺を洗車したり、荷台で昼寝したりして、殆どを俺のそばを離れなかった。個人的には非常に嬉しいんだけど、このまま俺主体の生活を送らせてもいいものかと悩ましい。
更に次の日、少し遅めの朝食を食べて首都に向かって出発する。
行きと同じ様にレヴィとナックの肩の距離に、誰にも言えない苛立ちを感じながら2時間程走ると、首都へと至る大通りに差し掛かった。
『レヴィ、ちょっとナビに魔物って入れて検索してみて』
荷台に聞こえないよう俺はコソッと話しかける。
ハンドルを握るレヴィにそんな事を頼むのはどうかと思うが、自分で操作出来ないのだから仕方がない。まぁ、脇見運転した所で、俺という自動運転機能が付いてるんだから問題ないだろう。
それにしても物理スイッチなら操作できるのに、タッチパネルは操作できないとか、何とも中途半端な設定だ。
「はい。いれたよ。」
『お、有難う。よし、予想通り検索できたな。』
レヴィに入力してもらったのは、ルート上検索だ。アラシシシの検索が出来たので、もしかしたらと試したら、見事にルート近辺に居る魔物の位置が表示された。
「すげーなビーちゃん。コレって全部魔物の位置だろ?………って、もしかしてコレでアラシ…」
「ナック!ナッサルというパーティの今後の為にも、それ以上は言わないほうがいいと思うよ」
「………それもそうだな……すまねぇレヴィ。危うくアイツらをまた調子にのせるところだった…」
首都へと続く街道は、国が管理する主要道路だけ有って、魔物や盗賊の類は殆ど出ない。
更に俺の移動速度も相まって、首都に向けての移動はとてもスムーズに進んでいった。
強いて言えば、先いく馬車を追い越す時が中々大変だ。
ギアをニュートラルに入れて、尚且つピストン運動を気合いで抑え込んで惰性で走る。
俺の排気音で馬を驚かせる訳にはいかないので仕方ないのだが、流石は首都えた向かう街道だ。頻繁に馬車が行き交い、非常に疲れる。
「ふぁぁぁぁぁ~おっきいねぇ~」
夕方前 、首都ウナチオネにそびえる城門を見上げて、レヴィが声を漏らす。
三日月状の湖を背負い建てられた城塞都市を囲む城壁は、花崗岩の様な白っぽい石が40~50メートル積み上げられていて、その城壁の中心部にある城門には、磨きあげられた繊細な石の彫刻が施されている。
絵画と塗り絵の違いすらわからない俺ですら、思わず息を飲み込むほどの圧倒的な存在感に気圧された。
そんな城門の前に出来た50人ほどの列の最後尾に並び着ける。
ナックが言うには、都民以外はここで入門許可審査を受ける必要が有るそうだ。もっとも審査と言っても前科や手配の有無を確認するだけでなので、真っ当に暮らしていれば問題なく許可証を貰えるのだが、アナログ作業で指紋や人相書きを照合するためやたらと時間が掛かるらしい。
一応有効期限は一年有るのだが、隣町までの移動に半月とか掛かるこの世界では、頻繁に感じられる面倒な手続きなんだそうだ。
「ねぇナック…これって失敗したんじゃない…?」
「ん…あぁ…俺もだんだんとそんな気がしてきた…」
レヴィとナックが背中を丸めながら辺りを伺う。
いつの間にか、俺を中心に半径10メートル程の円を描く人だかりが出来ていた。
俺を見る奇異の目には、すっかり慣れてしまっていたのでさほど気にもしていなかったのだが、後に控える仕事の性質を考えれば確かにこれ程注目を浴びるのは失敗したかもしれない。
挙げ句、レヴィとナックがどうしようかと相談しているうちに、城門から出てきた20人程の兵士に囲まれて、根掘り葉掘り取り調べを受けるハメになってしまった。
ある意味国に喧嘩を売るような仕事を受けてる身としては、先行きが不安なさい先だった。




