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28話

翌日、生憎の雨の中レヴィの宿を引き払う為、俺達はイニチョの街を目指す。


「いゃぁ、正直ビーちゃんの事だから雨くらい気にすんなって言われると思ってたぜ」

ナックは嬉しそうに後部窓から顔を覗かせる。


『ひでーなそれ、俺の事なんだと思ってたんだよ』

なんて言いながら、そう言われる心当たりは無数に自覚している。

ネタとしては雨ざらしの方が面白いんだが、いい加減レヴィに怒られそうだと、荷台に緑の幌をかけてやり、昨日買った折り畳みの長椅子を2脚並べる、イメージとしては自衛隊のトラックを軽トラで再現だろうか?

更にはレートの異なるバネを10セット購入し、減衰やストローク等を調整しながら最高の乗り心地を目指してみた。

これで文句を言う奴が居たら二度と乗せてやらない。


そんな俺の努力の甲斐もあって、60km/hで走っているにも関わらず荷台が静かだ。あまりに静かなので荷台のカメラに視点を移すと3人揃って爆睡していた。

首都までの運賃と相殺して護衛する事になっているのでイラッとしたが、起きてても五月蝿いだけなのでそっとして置いた。



1時間半程走ると雨も上がり大きな河に出た。

小さなアーチが列なる石造りの橋を渡り、河沿いを流れに合わせて走って行くとイニチョの街に着くそうだ。


森と河に挟まれた街道をしばらく走っていると、レヴィが速度を落とし停車する。


『お?どうした疲れたなら運転代わるぞ?』


「うぅん。そうじゃなくて、あれ見て」

レヴィの視線を追い目を凝らす、遠くの川沿いに動物らしき姿が見える


『なんかが水飲んでるな』


「あれ。アラシシシじゃない?」


『マジか?!!』

アラシシシと言えば先日お世話になったとても儲かる魔物だが、、、よく見えないな、、、


『ズーーームオン!、、、、、、、、』

ダメ元で言ってみたが、そんな機能は無いらしい。まぁアラウンドビューにもドラレコにもズームなんて付いてないしな、、、、


「???」

レヴィがキョトンと俺を見る。

塗装が赤くなっていないか心配だ、、、、、


『いや、何でも無い。どうするナッサル起こすか?』


「ん〜、、、ビーちゃんと私で倒せないかな?」


『倒せると思うが、こんな時のためのナッサルだぞ?少しは仕事させないと』


「寝てるのが悪いと思うんだ」

そう言いながらレヴィがいたずらっ子の様に笑う


『なる程そういう事か。、、、、よし、それじゃぁまた体当りするからしっかり掴まっててな。動きが止まったら押さえ付けるからトドメ刺してくれ』


「うん、わかった。」

そうして静かに車を進める、ある程度近づくと姿がはっきりした。


「間違いない、アラシシシだ。」


『よし、それじゃぁ行くぞ』

そう言って徐々に加速して行く、あまり速すぎても互いのダメージが増えるだけだ。前回の速度を思い出し70km/h前後で接触するよう調整しながら加速して行く。


街道を外れ河べりに降りる、軟かく積もった小石が巻き上がりカンカンとボディを叩く


「なっ!」

     「なんだ?!」

            「敵か???!」

ようやく起きたナッサルが抜群の呼吸で順番に驚き叫ぶ。

同時にアラシシシも俺に気が付き、踵を返して走り出す


『逃がすか!』

アラシシシが逃げる分だけ速度を増す


ドンッと小さく車体が揺れて、アラシシシはつんのめりながら横に逸れる。


『弱過ぎたか?!』

小石を激しく撒き散らしながら転倒するアラシシシを横目に一度通り過ぎ、距離を開けてからターンする。

荷台ではゴロゴロと荷物が転がり悲痛の声を挙げている。


よろよろと立ち上がるアラシシシ目掛けて再度突っ込んでいく。


ドンッ!

逃げようと走り出す始めたアラシシシの側面に体当りすると、そのまま体に乗り上げズルズルと2〜3メートル引きずり押して、俺は停止した。


「行くね!」

そう言ってレヴィは素早く外に出て、アラシシシの首を掻き切った。




「何事だレヴィ?殺気も何も感じなかったが、、、、?」

ナックが頭を擦りながら降りてきた、


「あーーーー!アラシシシじゃねーか!!」

続いてルーフェンが指差し叫ぶ。


「ヒョ〜また見つけたのか!すげーなレヴィ!!」

サリューもナックと肩を組み大喜びだ。


「なんだよ水クセーな、言ってくれれば俺達で対処したのによ。討伐のランクだって一応Cなんだぜ」

ナックはキラリと歯を光らせながら片手で胸をドンと叩く


『いやー3人とも護衛に疲れてぐっすりだったから悪いと思ってな、なぁレヴィ。』


「だねぇ、護衛中にぐっすり眠る程だからよほどの事だもんね。私達も出来ることは自分でしないとさ」


「なんだよそんな事、気にせず起こしてくれりゃぁ良かったのによ!」

ルーフェンはニコニコしながら剣を抜き構えたりしてみてる。前回、余程美味かったんだろう。


「それにしてもなぁ、また食えるとは夢にも思わなかったぜ!!」

サリューもやみつきだ、漫画みたいにヨダレを垂らしてる。


そんな二人を差し置いて、ナックだけは神妙な顔だ、、、、、、気がついたな?


「レヴィ、今回はどれくら、、、、、、」

            「まてルーフェン!」


「ん?どうした?」


「俺達にもらう権利はねーよ、、、、」

さすがはナックすぐ気がついたな。


「なんでだよ、護衛中の成果は山分けだろ?」

そうだぞルーフェン、間違ってないぞ。


「だからだよ、、、、、」

そうなんだよ。


「何がだよ?」

何がじゃねーよ。


「護衛してないだろ、、、、、」

寝てたもんな?


「「あっ、、、、」」

あっじゃねーよ。


「「、、、、、、、」」

正に絶句って奴だな。


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