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13話

街の人々が動きだして街が少しにぎやかに成り始めた頃、ようやく出発の準備が整った。

それに併せて急遽集められた3組の護衛も到着する。


「我々はワイルドミート、主に魔物の討伐を受けている。俺がリーダーのザウスでこいつがエラン、二人共武器は盾とロングソードだ。あとはヒーラーのゴメスと攻撃魔法のミザリー。ミザリーの事は一応女性として扱ってくれると助かる」


「神様が間違えたのよ、慣れないと思うけど宜しくね」


野太い声のミザリーがしなりを作る。


「次は俺かな、俺の名はナッサル、見ての通り獣人だ。同じ名のパーティーが有ると聞いているので俺の事は獣人とでも呼んでくれればいい。

普段は希少な薬草を求めて世界を回ってる、ここにはたまたま立ち寄っただけだが組合長に頼まれて参加した。

人族よりは五感に優れているので皆の目や耳として役立つと思う、武器は一応ダガーと短弓だが、そっちはあまり期待しないでくれ」


ファンタジーの代名詞獣人だ、特長は耳と尻尾と頭部から尻尾まで生えてるらしい(たてがみ)の様な髪の毛だ。それ以外は人族と違いが無くパーカーでも被れば区別が付かないだろう。

因みに人の耳と獣耳は両方が機能しているそうだ。


当初予定していた馬車と共に護衛パーティーも戻っていないので、本職でない二組も今回の護衛任務に抜擢された。


そして最後に、唯一護衛を本職とするパーティーがこいつらだ。


「あー、俺たちはナッサルだ、俺はナック、こっちがサリューでこっちがルーフェン。一応護衛が本職だ…いててて…」


ナックが今にも死にそうな顔色で簡潔な紹介をする。


「ちょっと、しっかりしてよ?護衛のノウハウはあなた達しか持ってないんだからね?」


呆れたレヴィの視線が二日酔いでボロボロの3人に向けられる。


「いててててて、、わかってる、分かってるから少し声を落としてくれ…」


ナッサルの三人は早々に俺の荷台に乗り込みへたり込んでいる。


「はぁ、同じナッサルでもこうも違うとは…ナック失礼だからパーティ名変えたら?」


レヴィさんが厳しい


「ちょ、勘弁してくれよ。俺らも休みの予定返上で狩りだされてるんだからよ…」


どうやら彼等には拒否権が無かったらしい。


「それでも受けたんだったら言い訳しない!」


ビシッと10代の少女に駄目出しされて、小さくなるおっさん。

三人は35歳位だと言っていた、婚期の早いこの世界では娘といっても誰も驚かない年の差だ、流石にちょっと同情した。


「まぁまぁ、余程の事がない限り指示さえくれれば我々で対処できるだろう。今は無理せず体調を整えてくれ」


見かねたザウスが仲裁に入る、顔色を見る限り俺と同じような心境なんだろう。


「それではソロソロ出発します。ワイルドミートさん獣人のナッサルさん宜しくお願いします」


”ビッビィーーーー”

レヴィが景気良くホーンを鳴らして出発の合図とする。


荷台でへたる三人の悲鳴が聞こえた…。







6頭引きの馬車にはワイルドミートの4人と獣人ナッサルが、続いて走る俺にはレヴィと残念ナッサルの三人が乗り込み走っている。

荷台の三人は幾分か回復したのか、立ち上がり風を受けて恍惚している。


「ってか、レヴィは何でなんとも無いんだよ…」


ルーフェンが、荷台から助手席側の窓に顔を突っ込みレヴィに話しかける。


「何でって言われても分かんないよ、お酒飲んだの昨日が初めてだし。普通はそうなるの?」


ルーフェンが言うには、ナッサルの3人も初めは殆ど飲むつもりは無かったらしい。

それこそ娘ほどの歳の少女を3人の男が囲って酒を進めていれば世間に何を言われるか解った物じゃないからだ。

しかし、軽く乾杯だけして後は飯だけ食おうとしていた3人にレヴィが絡む。

それでも初めは断っていたが、次々にグラスを開けるレヴィ誘いを断り続けるというのも男が廃る

。仕方が無いのでレヴィのペースに併せて酒を飲みだした辺りから記憶が無いそうだ。

レヴィには今後酒を控えてもらおう…。




太陽が真上に登る頃、前を走る馬車から停止の合図が出された。

馬車に続いて車を止める。


「どうしました?」

運転席から顔を出し、走ってくる獣人ナッサルに問いかける


「すまない。昼食の事なんだがな…」


昼食は時間短縮の為に馬車に乗りながら食べるという打ち合わせをしていた。

しかし急遽乗り換えた6頭引きの高速馬車は全てを引き換えに速度だけを追求した物で、

獣人ナッサル曰く「馬車酔いした獣人の話は聞いた事が無いがこの馬車ならその限りではないだろう」との事だ…。

板バネすら無い馬車で未舗装の路面を20km/h位で走ってきた、言われてみれば酔わない方がどうかしてるだろう。


青い顔をして食欲も無く街道の脇に座り込むのはワイルドミートの三人だった。

獣人ナッサルと共にケロッとしているのは神様に間違えられたミザリー、神様の決定を間違いだと断言し自分を貫く彼女はやはり強かった。





「ふぅ、すまなかった…」


ザック達三人は一時間ほどの休憩で何とか回復した。


「レヴィさん時間が無いのは分かっているが少し速度を落としたても良いだろうか?無理に走ってもこれではいざという時に動けないだろう」


獣人ナッサスが提案してくる。


「ん~そうですねぇ…そうだ、ザンナッサル達と交代で乗ったらどうですか?」


「ん?ザンナッサルってなんだ?」


横で聞いていたサリューが尋ねる


「残念なナッサルで、ザンナッサル♪」


微塵の悪気も感じさせない笑顔で傷をえぐるレヴィさん…


「な!そんな虐めんなよレヴィ…」


「ハッハー!諦めろルーフェン、汚名を晴らすのは行動で示すしか無いだろう」


ナックが軽く笑い飛ばすように言ってるがその笑顔は若干ぎこちない…


「…………と、話がそれたが、護衛対象は岩石かぼちゃ及びそれを積むビーちゃんだ。そこにはやはり専門の者が居るべきだ」


先ほど醜態を見せたザウスは他人事ではないんだろう…こっちも回復したはずの顔色が若干悪くなる。


「そうですね…それじゃぁ酔わない程度の速度を探りながら先に進んで、多少日が暮れても視界が確保できる内は馬車を走らせるという事でどうでしょう?」


レヴィはナックに視線を送る。

レヴィもボロカスに言ってはいるが、行動方針に関しては彼らの意見を最優先に尊重している。


「そうだな、獣人は夜目が利くと聞く。そのあたりの限界は彼の判断に任せることで良いと思う」


「任された、周囲の地形次第だが極力進めるよう努力しよう」


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