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9話

「凄い魔道具だな、こんなのどこで手に入れたんだ?」


荷台の側面あおりに腰掛けるナックが、車内のレヴィに話し掛ける。


「ん〜秘密」


「ハッハーそりゃそうだ、野暮なこと聞くなよ!」


隣に座るサリューがツッコむ。



意地と気合で二頭目を積み終えた三人は真っ白に燃え尽きていた。

そろそろ出ないと日が暮れるからと立ち上がった三人の足は生まれたての子鹿の様で、流石に気の毒になったので荷台に乗せる事にした。


「ビーちゃん、大丈夫…?」


ミシミシと車体を軋ませながら走る俺をレヴィが心配そうに覗き込む。


『おぅ、スピード出すのは厳しいけどこれくらいなら何とかなるよ』


法定積載量の350kgの3倍近い荷物を積みながら10km/h位の速度で街道を走る。

フロントは陥没しフレームも歪んでしまっているようだ、パワステもオイルが漏れているのだろうか、パワーしてくれない。とはいえハンドルが切れる事が既に奇跡的で想像よりも随分軽傷ですんだ。

最悪動けなくなる事も覚悟していたが、強度という項目に助けられたのだろう。


車名:スカル

型式:T1-AT

駆動方式:4WD

排気量:658cc

最高出力:48ps/6400rpm

最大トルク:5.9kgm/6000rpm

燃料(FULL):34.2L/(37)

燃料回復量:0.4L/h

燃料消費率:18km/ L

強度:120

オプション:パワステ・パワーウィンドウ・オートA/C・ナビ

OP:4088


現状を確認すると回復量と強度が少し増えている、大幅に増えたOPが経験値だとすると、それでレベルが上がったんだろうか?


運転をレヴィに任せてそんな事を考えている間に目指す街に辿り着いた。


「止まれ!」


街の入り口にある小さな門で兵士に止められた。


「誰かと思ったらレヴィじゃないか、どうしたんだこの馬車は?」


「へっへー、いいでしょ」


「見たことの無い馬車だが、危険は無いんだろうな?」


「当たり前だよ、失礼だなぁ!」


「怒るなよそれが仕事だ…ってお前らも何やってんだ、怪我でもしたのか?」


荷台に座る3人を見つけて声をかける。


「いや、ちょっとくたびれてな、気にするな」


ナックは恥ずかしいのだろうか?目を逸らし構うなというように手で兵士を追い払う。


「まぁ、何もないならそれでいい。通っていいぞ」


ブオンと、軽く煽られたエンジン音に兵士が反射的に手に持つ槍を構える


「本当に危なくないんだろうな…?」


「大丈夫だって!」


ヒラヒラと手を振りながレヴィは俺を街中に進めた。





「よしついた。ビーちゃんここが共同会館だよ」


酒場が併設された建物の前でレヴィが車を止める。


「手紙とか売却とかして来るからちょっと待っててね」


レヴィが運んだ手紙は共同会館を通して街に配られるそうだ。

リュックを背負い会館に入って行くレヴィを追うようにナッサスの3人も建物の中に消えて行く。

共同会館はいわゆるギルドの支店の建物だ、レヴィが所属するのは冒険者共同組合。

その組合の中では運送業や護衛業、魔物を駆除する討伐業や薬草等を集める採取業などに分類して管理されているらしい。




会館の前にビシャ止めされた俺を、通り行く人が怪奇の目で伺いながら通り過ぎていく。

なんともいえない居心地の悪さに心の目を逸らす。


「ただいま〜!みてみてみてみて!」


勢いよく車内に乗り込んできたレヴィがご機嫌で手に持つ袋の口を開けると大量の金貨が詰め込まれている、それがリュックから何袋も出され助手席に積まれていく。

高級肉と名高いアラシシシの肉は、キロ3万ポソで買取られ、ナッサスへの報酬を差し引いても1155200ポソにもなったと言う。

ポソというのはこの世界の共通通貨で1ポソ=10円の感覚で良さそうだ。


『凄いな、当分遊んで暮らせるんじゃないか?』


「あはは、身体が鈍るから遊ばないよ〜ってそうじゃなくて、これはビーちゃんのお金だからね?」


『なんでよ?』


「だって倒したのビーちゃんじゃない」


『だとしても俺に金なんて必要ないよ』


「必要なくても受け取ってくれなきゃ私が困る!」


『なんで困るんだよ』


「こんな簡単に大金が手に入ったら、今の配達の仕事が辛くなるじゃない!」


レヴィが主にしている手紙の配達はだいたい1通100〜200ポソの報酬になるそうだ。

30〜40通溜まったところで配達に出かけるが、レヴィが回る配達先は近い所で片道3日、遠い所は更に2~3日かかるそうで、平均月収は1万ポソ前後だと言う、勿論それだけでは暮らしていけないので、薬草の採取や店番、田畑の収穫の手伝いなどで日銭を稼いでいるそうだ。


「そんな仕事だからこの辺りの配達は私が独占出来てるんだけどね、それにいろんな仕事の手伝いをする事で広く顔を売れるから悪い事ばかりじゃないんだよ」


早くに親を亡くしたレヴィにとっては体を売らずに生きれるだけ幸せなのだそうだ…


『そんなの聞いたらよけい受け取れねーよ!』

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