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金曜日4

「――で、連日の調査でなんかわかったかね? 少年探偵団」

「先輩。喋り方がおばちゃん臭いです。――端から何かわかるとも思ってないすけど」

「女子高生におばちゃん言うな! ……自分でカギまで持ってるから何事かと思ってさ。そんなに入れ込んでるわけ? んー? ははーん、さては昨日の美人の一年生だなぁ?」


「カギは来週まで預かる事になってるんです。――理由的にあの人は関係なくて、友達を助けたい、というか」

「友達? 高等部に知り合い居ないって言ってなかった?」

「あの、生意気でした。ごめんなさい。……助けたいの、常禅寺先輩なんすよ」


「うん? ……友達って、もしかして私のこと?」

 あ。つい、高等部の人を友達なんて言っちゃったけど怒らせちゃったかな。

 ……深い意味なんか無いんだけど、でもやたらフランクな人だし常禅寺先輩に知り合い、って言うとそれはそれで失礼な気がするし。

 しっくりくるのはやはり友達、だよな。この人の場合。


「私がようクンの友達。って言う括りに混ざっちゃって良いの?」

「いや、あの。怒ったならごめんなさい、その。そう言うわけでは無く……」

「怒ってないよ、そうじゃ無くて。……昨日合ったばっかりで、お互い名前しか知らないし、意地悪ばっか言った気がするけど。それでもようクンは友達って思ってくれるの?」


「もし常禅寺先輩が良かったら、なんですけど。……だって歳とか関係なく、なんか友達だと思ったら友達。って感じじゃないですか? その辺理屈で説明するとか常禅寺先輩、したことあります?」

 良かった、どうやら怒っては居ないようだ。怒らせてしまったらお願いとか絶対聞いてくれないだろうし。


「ん~。……なら、ようクンとつっきーのの友達にして貰っても良いのね」

「悪い理由、あるならべつですが……」

「ま。色々と私の方に、ある。と言うかなんと言うか。……ようクンとつっきーのが良いヤツっぽいからますますなんだけどさぁ」


 わかったようなわかんないような。深い理由があるような無いような。

 この辺は常禅寺先輩だから、で済んじゃう気がするのは、やっぱりそう言うキャラなんだろう。

 得するか損するかは置いといて、良い意味でも悪い意味でも。この人、なんかふわふわしてるもんな。

 つかみきれないというか。 


「でさ、今日は調査の続きでは無くてなんか私に用事だったって事? 助けるって、私なんかやばい感じなの? 昨日なんかわかったの?」

「そんなまとめて聞かれても。――調査じゃ無いですよ、基本的に準備室の不審火はわからない。と言う事で断る予定ですから。今日来たのは常禅寺先輩にお願いがあるからです」


「私にお願い? 現国と世界史以外だったら宿題見てあげられるかなぁ。ただ、頼ってくれたところ悪いんだけど私、頭悪いんだよ。94人中87位だからなぁ」

 ……意外と頭が悪かった。

 とは言え地頭は良さそうだからにーちゃんと同じ、学校の勉強だけが出来ない、テストで点が取れないタイプか。わりとこういう人、居るんだな。


「高等部の人に宿題の面倒見てもらえたら嬉しいです。でも今回はそうじゃ無くて……」

「ようクン、ちょっと待った。その前に一つ、私からもお願い、聞いて?」

「は? 常禅寺先輩から?」

「そう、それそれ。それよ。……せっかく友達なんだから、常禅寺先輩ってやめてよ」


「いや、でも先輩は先輩で……」

「幼なじみとか、従兄弟の女の子を何とか先輩、って呼ぶ? ……傷ついちゃうよ」

 ――いやいやいや。……確かに南町のお兄さんの事は今でも会えばおにいちゃんと呼ぶし、宇都宮のちい姉、なりちゃんをなりひ先輩、と呼んだりはしない。それはそう。

 ……でも俺の幼なじみとか、従兄弟の女の子。では絶対無いですよね? 常禅寺先輩は。昨日会ったばっかりですよね?


「名前で呼んで」

「え?」

「ようクン。私のこと、名字で無くて名前で呼んで頂戴。――さん、はい」

 そもそも基本的にハードルが高いところに持ってきて、そのふりはちょっと過去のトラウマが……。


「利香子…………、先輩」

「なんで先輩って付けるの?」

「なんでって、先輩だし。……んーと。利香子、さん。……みたいな事ですか?」

「惜しい、もうちょっとだ。がんばれ少年!」

「……り、利香子ちゃん! これで良いっスか!?」


「うん、良い響き。まぁ合格で良いか。つっきーのにも言っといて。――いつまで友達で居られるかわかんないかもなんだし、今だけでも。そう、今、此所だけで良いからようクンがそう呼んでくれたら、そしたら。……嬉しいな」

 なんか時々表現が極端なんだよな。……、……えーと。……利香子ちゃんは。


「それで良ければ、俺的に呼び方はどうでも良いんすけど」

「褒めて使わす。うむ、苦しゅう無いぞ。――で。ようクンのお願いって、なぁに?」

「……聞いてもらえなさそうなのでランク的に強中弱を用意しました。中身は基本全部一緒。お願いに至った理由は……、うーんとね、後で説明します」


「上中下とか松竹梅とか甲乙丙、みたいなこと? ……いずれお願い強度の強い順に来ると言う事か。私が首を縦に振らないようなお願いだと言うことなの?」

 エクセレント、グッド、プア。でも良いかな。昨日の宿題の時にこれくらい頭が回ればもっと早く終わったのに。


「多分、そうなんじゃ無いかなぁと」

「いずれ聞かなきゃ良いも悪いも無いし、じゃあまず。その強のお願いから聞いてみようか」

「じゃあ、一応。――当分ここに来ないで欲しいです」

「却下。なんのお願いなの? ――まぁいいや。理由は後っつってたよね? じゃあ次、中。行ってみようか」


「お昼寝は自粛してここに居る間は起きてて欲しい」

「断固として断る、ここにはお昼寝しに来てるんだってば。――はい最後」

「この部屋に居る時は扉は開けたまま、カーテンも絶対開けない。ソファの位置ももう少し廊下寄りに変更した上でクッションと毛布は使わないで欲しい、あと燃えるものは窓際と扉の近所から除けて貰って、中扉の周りかたづけて、……あと、なんだっけ」


「……えと、なに? それ。……なんで弱だけやたらに具体的なの?」

「……もちろん理由はあるし、ちょっと長くなるけど、それを今から説明しても良い?」

 我が天使長様から依頼の時に聞いた話をそのまま利香子ちゃんに伝える。……そして昨日のボールペンの件も見たままそのまま、月乃の感じたこと以外全て話す。


「あのね、私は……」

「ちょっと待った、俺に全部喋らせて。――利香子ちゃんは見たことも実害も無いから関係ないって言ってたけど、俺達は見ちゃったし害も出た。……危ないんですよ、この部屋は本当に。自分で体験しちゃった以上、友達をそんな場所に置いとくわけには行かないでしょ? 知らないものは気の使いようが無いけれど、でも俺と月乃はこの部屋は危ないんだ、って知ってるんだから」


「ようクン、私は……」

「それにどうやって火を付けてるのかは見当も付かないけど、もしも自由に火を出せるなら入り口や窓を最初に潰すことだって出来るはず。――今日この部屋にドアを全開にして入ってきたのは、なんかあったらすぐに逃げられるように。です」


「えーとさ。あのね、ようクン……」

「だいたいお昼寝するだけだったら他にいっぱい部屋、空いてるじゃ無いですか」

 ……予定はここまで。これでも話に聞く耳を持たない頑固者だったらここでさようなら、の予定ではあるんだけど。

 そんなにばっさり割り切れないよなぁ。それこそ利香子ちゃんとは友達なんだし。


「利香子ちゃんのことを具体的に知ってるわけじゃ無いけれど、多分旧校舎のカギくらいは、利香子ちゃんなら簡単にどうにでも成ると俺は思う。……実際そうでしょ?」

 教室のカギくらいこの人は安全ピン一本で開けそうだ。――基本的に目つきも悪いし。

「目つきは関係ないでしょ、ほっといて! ……実はちょっと気にしてんのよ、これでも。――確かに教室のカギくらいなんでもないんだけどさ。だけど違うの、この部屋で無いと、だめなんだよ……」


「今、不審火が出てるのってこの部屋だけなんだから他の部屋でお昼寝したら良いだけじゃ無いですか。逃げ遅れたらどうするつもりです! そもそもこの部屋にそこまで拘る理由ってなんなんですか!?」

 この部屋以外でお昼寝をしてくれるなら、少なくても利香子ちゃんを心配する必要は無くなるのだ。

 依頼を断るのに躊躇する必要が無くなる。

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