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木曜日8

「あぁ、おほん。――イタズラなんかしないに越したことは無いんだが。……お前ら、変な事にクビ突っ込んでないだろうな?」

「な、何を唐突に。……覆花山おうはなやまの時だって南町の視線の時だって、すぐに相談しただろ? なんか有ったら秘密になんか出来ないよ」


 秘密じゃ無い。

【内緒にね。おねがい、ようクン】

 ……約束を守ってるだけだ。


「にーちゃんとランちゃんが居なきゃ何も出来ないって、中学生なんかガキだって。それはこないだから連続であんな事があれば、身に浸みてよくわかったもん」


「わかってれば良いんだけどな。急に変な事を聞くから気になってな。――話がこじれて進退窮まってしまっても、にっちもさっちもいかなくなってしまっても。僕はお前達のためなら何でもするから、だから何かあったらキチンと話してくれ。その時は法律も常識も関係ない。相手がヤクザだろうが警察だろうが、世の中全てが敵になろうとも僕だけはお前達の味方だ。それだけは忘れないでいてくれ」



「それはよく知ってるよ。その、……ありがとう。――でもそこまでやって貰うようなことは、俺達きっとしないと思うけどな」

 二ヶ月連続で気の良い真面目な若者、と言うせっかくのご近所の評判を豹変させかねないような事をさせている。

 俺達兄妹の言動は当然、にーちゃんやランちゃんの評価にも影響すると言う事だ。

 これも絶対忘れてはいけないこと。


「しないならその方が僕も助かるよ。おお、そうだ――風呂はどうする? 出来てるぞ」

「先に入って良いよ。……そうだ。にーちゃん、ここちょっと借りて良い? ――陽太、今日はあんまり無いから二人で真面目にやれば三十分かかんないで片付くだろ?」

「ここでやっちゃうか。確かに今日はにーちゃんが風呂入ってる間に終わりそうだな」


 月乃の言うのは宿題。部屋に入る前にダイニングのテーブルでやってしまおうという、そう言う話だ。二人で、の部分は学校に聞こえたら怒られそうだけど。

「じゃあ、ランさんも帰ってこないし僕は先に風呂に入って寝るぞ。あとは僕、降りてこないから。窓、開けても良いけど戸締まりな?」




「いってらっしゃーい」

 月乃の、なんか間の抜けた挨拶に送られてにーちゃんが階段を上がっていく。

 お風呂が二階にあるおかげで我が家のリビングはやたらに広い。

 ダイニング部分も普通の家よりも広々としている。

 おかげでテーブルも大きいので教科書やノートを広げようが問題ない。


 月乃が俺の隣から、向かいの今までにーちゃんが座っていた席へと移る。

「……火が出た時さあ、常禅寺先輩、もしもソファで熟睡してたら」

「うん、多分逃げ遅れる。……あの部屋だし、すぐにはベルが鳴らないって言ってたしな。――英語、最後の小作文。二行で良いとは言え、俺が二つ作るのか? もしかすると」


 歴史の穴埋めの他、数学と英語、今日は全てプリントで渡されている。と言う事は授業開始前に一旦回収される公算が強い。

 いつもより少ないとは言え、この量だと授業開始前に誰かに見せて貰って写しきるのも中々大変だ。

 兄妹が同じクラスだと鬱陶しいことは多々あるけれど、助かることも事実だな。


「他に誰が作るの? それともこの、AC=BDを自力で証明するか?」

「……わかったよ。――明日、当然女子サッカーは練習有るよな」

「使用許可ギリギリまで練習だけど。――え、まさか一人で準備室行くの? 陽太は自分が狙われたのに何も感じなかったんだよ?」


「明後日は日曜の施設開放の準備があるから、生徒は例外無しで部活無し午前で強制下校だし。ならさすがの常禅寺先輩だって帰るしかないだろ? それにアレを目の前で見ちゃった以上、すぐに常禅寺先輩にあって話がしたい」

「何処まで話す気?」


「一応ボールペンまで含めて常禅寺先輩に伝えた上で、しばらく準備室には近づかないようにお願いする。ファイアスタータの存在は俺達の能力がバレるから、それは当然秘密にしとくけどな」


 おねがい、内緒に……か。

 ――あなたが約束を守るように私は頼んだ。なぜなら……。これから英語にするんだけれど、なんか日本語の時点で変じゃないか? これ。


「聞いてくれるかなぁ」

「どうしても聞いてくれないような分からず屋だったらそれまでだ。その時点でこの件はお終い、とっとと帰ってくるよ。俺だって燃やされたくないしな」


「にーちゃんじゃ無いけどさぁ、ムリはすんなよ? マジで」

「それこそ、何がムリなんだかわからないよ。お願いはする予定だけど説得する気なんかないんだから。……にーちゃん達にバレたらまた迷惑かける事になるし」


 ――私はあなたを守る事を約束するので忘れないで欲しい。なぜなら……。だから英語にする前に日本語おかしいって絶対。

「なんか日本語の文章作ってくれ。今日はダメだ、おかしい」


「ふむ、しょうが無いなぁ。そんじゃ、――私は二度と火災報知器を炙らないと約束します。何故なら母に冷たくあしらわれたからです。……どうだ?」

「どっかで聞いた事ある話だな、それ。火災報知器は英語でなんて言うんだ?」

 普通にファイアアラームとか? って。――訳せたってそんなもん、提出出来るか!


陽太の言う

「覆花山の時」

は、シリーズ二作目

「山頂の風景」での出来事になります。

よろしければこちらもどうぞ。

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