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ユグドラシルの樹医師  作者: 海原 瑛紀
第1章 全ての始まり
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―幕間―報せ

 乗客を呑み込み煙を吐き出しながら荒野の真ん中を我が物顔で闊歩する列車、その列車の真ん中辺りにある車両の席に座り読書に没頭しているフィンと、その横で何やら丸い木の実を転がして遊んでいるスティンク、いつもと変わらない日常だ、だがその日常を破る様に甲高い金属音が鞄の中から聞こえて来た。


「あれ? 今音したよね?」

「うん、おいらも聞こえたよ、何だろう?」


 足元に置いてある鞄を膝の上に乗せ二人で覗き込む、真っ先に視界に捉えたのはあの羅針盤だ、手を入れ取り出し蓋を開けると針が窓の外を指していた。


「ラタトスク? でもまだ薬は足りてるし―依頼かな?」

「何だろうね、この前道具とか貰ったばかりだし」


 窓の外を眺めているとやはりラタトスクがこちらに飛んできている、気付いたフィンは小さく手を振ると、この先で待っている―、というような感じの素振りを見せ前方へと姿を消した、手に持っている本に栞を挟み鞄の奥に静かに仕舞い込む、スティンクも木の実を持ちあげ鞄の脇にある小さなポケットのような所に片付けると鞄の上に登り、それをフィンが背負う。


「うーん、スティンクちょっと重い、大きくなったね」


 笑いながらそんな事を言った、生まれて二年と半年程経っただろうか―、スティンクの成長に喜んでいるようだ。


「そうかな? でもフィン程じゃ」

「何か言った?」


 黒いオーラを纏い笑顔で、しかしその表情の裏は怒りに満ち満ちている、そんな表情かおでこちらに視線を向けるフィンにスティンクは。


「ご、ごめんなさい」


 駅に着いた列車が口を開け乗客を吐き出し、また新しい乗客を呑み込んでいく最中、駅の外でラタトスクと話している姿が見える。


「非常招集―、こんなの初めてだ」


 フィンの手に握られている蒼い紙、そこには良く見えるようにか、将又はたまた事の重大性を表しているのか、大きく非常招集と書かれていた、不安そうにそれを眺めているフィンのコートに手を掛け心配そうに見上げているラタトスク。


「何か起きてるの? それとも起ころうとしてるの?」


 手紙を睨みながら戸惑いを含む声を上げる、何かが近付いてくる様な―、そんなざわつきが胸を満たす、手紙を折り畳み胸のポケットに仕舞うと。


「―招集に応じます、ベレッタさんに伝えて―丁度この駅からならユグドラシルまでの直通があるしすぐ着くと思うから」


 ラタトスクの頭を撫でると駅構内に戻り、反対側にあるホームへと歩いて行った、その後姿を見送るラタトスク。


「リンベルちゃん―、本当ならリンベルちゃんには武器を持って欲しくなかった―、綺麗な手のままでいて欲しかった―樹を守り誰かを助ける、そんな手であって欲しかった」


 ゆっくりと視線を伏せ悔しさに満ちた口調で呟く。


「あんな歳の、まだまだ色んな可能性がある少女に戦えって言うんなら、俺はあんたらを恨むぜ―女神ノルンよ」


 ラタトスクは飛び立ち来た道へと戻る、全ての樹医師へ言伝は終わった。


 嵐の前の静けさ―、しかし確実に少女はその嵐に向かっていたのだ。


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