同人誌でボツになった理由(K.M氏から手紙にて)
望月笑子様
前略にて御免下さい。ご無沙汰致して居ります。
「返信」はがきメッセージを戴きました。出版記念会「欠席」残念ですが、いろいろご都合もあると思いますのでやむを得ません。またの機会があると良いですね。
『同人誌51号』原稿のことが書いてありましたので、若干、私見を述べさせて戴きます。望月さんの文章力向上ぶりには、目覚ましいものがあると思って居ます。
今回の原稿【はすっぱ八面六臂】について事務的会議(=編集委員会)で話し合いました。編集人から、三枚目二一行目から「蛇足だが東日本大震災の福島原発事故以来、相当の人数の割合で奇形児が生まれているという。最近は福島の病院で、片手の亡い奇形児が生まれたという」の記述の部分について、どうだろうか。「福島の人々が読んだらどう思うだろうか。福島の人々を傷つけることにならないか」と言う提起がありました。討論では「単なる噂か、根拠、出典等の裏付けがあるのだろうか」「単なる噂を文章化して、傷つけるようなことがあれば、良くないのではないのか」この部分については、「本人にもTEL済みで、要再考を話した」との事でした。
一枚目七行目からの記述で、「…ウチの職場には、歯の無い男の人達が多い。…なぜ治療しに行かないのだろう。…治療を受ける金が無いのかもしれない。余計なお世話かも知れないが、…」ともう一ヵ所「…デブでも、チビでも、ハゲでもいいから…」の表現はどうだろうか。私もハゲだが、この身体的問題は、本人がどんなに努力しても、今の医学、科学ではどうにもならない。そういう身体的欠陥を、貧しい我々庶民が、攻撃し、あざ笑うようなことを、文章に表現して傷つけることが、物書きとして、許されることだろうか、と言う意味の発言がありました。
弱者や貧しい者、分けても容貌に対する攻撃などは人間としてやってはならない行為では無いかと思います。権力者は、庶民から、絞り上げのうのうと自分の権力を欲しいままにしている。ここにこそ目をむけるべきで、貧しい庶民同士が苛めあって喜んで居るのは、あまりにも惨めではないかと思います。
「弱者への攻撃は、たとえ偉い物書きと言えども許されない」これが私の言いたいことです。真実、事実であっても、弱者への攻撃は卑怯です。せっかくの文章力を「弱い者いじめに使って欲しくない」これも私の言いたいことです。
「人間とは何か」「人生とは何か」を追求することが、小説の神髄と私は思います。「きれい事だけの小説」がもしあるとしたら、それは的外れだと思います。真似する必要は無いと思います。また人の容貌をけなして面白がって居るようなことも感心できません。現象の奥に有るものそれは何なのか追求してみたいものと思います。
私はまだまだ自分の満足の行く小説が書けていません。皆さんの意見を聞き、多くの本を読んで、少しでも向上したいものと思います。
K.M
※Iさん、Nさんにも別紙の通りの手紙送りました。