子供同士
『‥‥子供?』
問われたことに否定の余地はない。
口は塞がれ、いつの間にか両手を縛られて地面に押し倒されてしまっているからだ。
背負っているランドセルのおかげで、なんとか体は無事みたいだが
いきなり突進してくるなんて予想外でただただ硬直してしまった。
『なぁんだ、子供か~、頼りないわね〜』
懐中電灯の光をわざとらしく僕に向けて、彼女は呆れたようにため息をついた。
その間、光の眩しさに耐えながらも、殺されるんじゃないかと冷汗が出る。
そんな僕をよそに、平気で話を続けようとする。
怖くて、目をぎゅっと閉じていると、『あ、ごめんごめん。つい癖で。怪しい人間を見ると自分から襲いかかりたくなるのよ』
(なんだその癖は)
心の中でツッコミを入れるとほぼ同時に彼女は僕から離れた。
もちろん両手を縛っていた布も外してくれた。
ひとまず命を脅かす相手ではなさそうだ。
少しホッとした。
けれども、ランドセルを背負ったまま体を起こすのは少しの力ではうまくいかなかった。
それを察したのか彼女が手を差し伸べた。
『私って優しい?』
雲に隠れた月がゆっくりと顔を出した。
そこには月明かりに照らされる少女の姿があった。
見るからにさらりとした黒くて長い髪‥‥紫色のワンピースから伸びる白い手足。
瑠璃色の瞳は、宝石のように輝かしくて‥‥
『ふーん、ようやく月が出て来たみたいね‥‥。ん?なにボーッとしてるの?』
『えっ?あっいや‥‥』
『もしかして見蕩れてたの?』
図星だ。
『ち、違う、いや、違います!』
『え〜?私もそうよ?』
『?!』
『綺麗な月‥‥そう思わない?』
(なんだそっちか)
『‥‥あのう』
とにかく、ここの情報がほしいとばかりにいろいろ尋ねてみることにした。
『何かしら子供』
『ここには‥‥その‥‥他に誰かいるんですよね?』
『‥‥知らないわ。知る訳がないじゃない。』
急に冷たい態度になった。
『?どういうことですか』
『私だって、ずっと誰かを探していたの。だって誰もいないんだものこの街‥‥暇で仕方ないわ』
『つまり、あなたも僕と同じ?』
『さあ、どうでしょうね。気がついたら、こんな気味の悪い街に居た‥‥ってところかしら』
『僕もそんな感じでした‥‥家に帰れんのかな‥‥』
『しおらしい子供は子供らしくないわよ、子供』
さっきから気になっていたが、いくら子供っていったって『子供』呼ばわりされるのは不愉快なものだ。
しかも、この人も対して歳の差があるようには見えない。
『あのう、とりあえず子供って呼ばないでもらえませんか?』
『じゃあ、ランドセル君でいい?』
『僕の名前は西谷幸平です!!』
『あっそ。私は美樹よ』
彼女の髪のようにさらりと名乗り合った。
つづく
会話増えてきました。




