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野垂れ死ぬよりマシだろう  作者: まぎうす
プロローグ
4/69

プロローグ4

「ステータスとスキル? なんだかRPGみたいですね」


「その通り、RPGを参考に作りました。もちろんあなたもこれから行く世界の人々も、けっしてゲームのキャラクターなどではありませんが、ある程度わかりやすく自分の能力を把握できるように採用してあります。さらに言うなら、判断力や経験など、ステータスやスキルでは測れない部分もありますので、あくまで目安として見たほうがいいでしょう。当然のことですが、あなた以外の人のステータスやスキルを見ることもできません」


 全くの異世界に行くわけだから、確かに目安がないと何を目指していいかもわからない。自分の能力だけでも把握できるのは大きなメリットだ。


「では、まずステータスと念じてみてください」


「念じる? 声に出さなくても大丈夫なんですね?」


 確認した上で目を閉じて念じてみると、目の前にどこかで見たようなデータが現れた。


ステータス

器用度  17(13)

敏捷度   9( 5)

知力   22

筋力    9( 4)

耐久力  10( 6)

精神力  11(10)

魔力値  11/11


 驚いて目を開けて見るが表示はそのまま彼の視界に重なって映っている。


「これがあなたの今現在のステータスです。これはあなたの視神経に直接出力されていますので他の人に見られることはありません。ちなみにこれから行く世界の人間族の平均値は一般市民の成人で12前後、冒険者で15前後といったところです。」


 さすが機械文明に毒された日本人、身体能力はファンタジー世界の一般人以下だ。知力が高いのは良いことだが、器用度が高いのは趣味のパソコン自作とプラモ制作のせいだろうか。ただ、それだと手先の器用さのみを数値化していることになる。それにカッコの中はなんの数値なのか、やけに低い。


「あ、カッコの中はここに来る直前の数値です。ちなみに器用度は身体制御能力と手先の器用さを合わせたものですよ。あくまで目安の数値なので、たとえば筋力が高くても、腕力だけ強くて下半身を鍛えていないとまともな攻撃ができなかったりします」


 思わず膝をついた。筋力4とは幼児並みか? いや、すでに健康体になったのだから以前のことを考えても意味はない。今後の方針を考え始めた時にふと気づいた。


「精神力も1上昇しているようですが、ひょっとして脳や精神に異常でもあったんでしょうか?」


「いえ、もともと数値が上昇する直前の状態だったのでしょう。ここでの経験で鍛えられて精神力が上がったようですね」


「とすると、これから先も体を鍛えたりすれば上昇していくわけですか」


「はい、逆に自堕落な生活を続ければ下がることもあります」


 当然のことながら、また太れば元の数値に戻ることになる。


(うーん、このステータスじゃ戦士系は無理だな。敏捷度的に盗賊系も難しい。生産職に付くことができればともかく、そうでなければ魔術師か僧侶か、とにかく魔法系だな。それでも精神力がもう少し欲しいよな)


「見ただけで大体わかっていただけたようですが、魔力値はいわゆるマジックポイントに相当します。最大魔力値は精神力と同じになりますが、取得したスキルによってはさらに加算されることもあります」


「あの、生命力、ヒットポイントのような数値はないんですか?」


 ここはきちんと聞いておかないと本当に野垂れ死にしかねない。


「はい、そのような数値はありません。あくまで現実ですから、どれだけ体を鍛えても打ち所が悪ければ一撃で死ぬのが当然です」


 それは確かにその通りだ。生命力が半分になっても何の支障もなく行動できるなど、現実にあるはずがない。


「当たり前ですが怪我などによる部位欠損も自然回復しませんし、怪我がある程度治るまでは痛みで動きに支障が出たりしますので、薬や神聖魔術などですみやかに治療したほうが良いですね。ちなみに、部位欠損も高位の神聖魔術なら回復できます」


 納得した祐一は次の質問に移った。


「魔力を回復させる方法はありますか? あと、ゼロになったらどうなりますか?」

「ああ、一晩きちんと眠れば完全に回復しますよ」


(一晩きちんとってことは、交代で見張りをしながら2~3時間の睡眠では駄目ってことか。それに一晩……昼間寝るのはだめなのか?)


「鋭いですね、種族によって差はありますが、睡眠時間としては大体6時間前後は必要ですし、魔力を使い切ったからといって眠くもないのに昼間眠っても、回復はしません。もちろん魔術で無理やり眠っても駄目です」


 つまり、安全な寝床を確保するのが最優先ということになる。


「魔力値はゼロになっても即死亡ではありません。気絶したりはしませんが、ひどい頭痛や脱力感などがありますので、普段通りの行動は難しくなりますね」


 温存するだけでなく、場合によっては限界まで使う必要がある。祐一は魔力値を管理することの重要性に気づいた。


「では次にスキルの説明に移りますので、いったんステータスを閉じてください」


 どうやって閉じるんだと思った瞬間、目の前のステータス表示が消えた。どうやら軽く思うだけで出したり消したりできるようだ。


「慣れれば視界の好きな位置に表示したり、一部の数値だけ表示することもできますよ。さて、スキルを決めるためにはあなたの生まれ育ちを設定する必要があります」


(生まれ育ち? 日本生まれじゃ……いや、異世界から来たなんて言ったら怪しまれて研究材料にされかねない)


「実際それに近いこともありましたので、人物設定を作っておくことにしています。ただし、あくまで設定を作ってあなたの記憶に転写するだけで、設定内の登場人物を存在させたり他人の記憶をいじったりのつじつま合わせはしませんので気を付けてくださいね。あと、行っていただく世界についての知識もその設定にふさわしい分だけ一緒に転写させていただきます」


「記憶に転写するって、痛みがあったりしますか? それに今までの記憶と混同しないか心配なんですが」


「それは大丈夫です。痛みなどはありませんし、作り物の設定だということははっきり認識できます。ただし、会話に詰まったり違和感が出ないように、送り込んだ知識のほうを常識と感じるようにしておきますね。」


「ということは、本当に芝居の設定みたいなものなんですね」


「そう、まさにその通りです」


 彼の記憶だけということだから、たとえば大貴族や王族などは不可能だ。他の人間の記憶には彼の設定がないわけだから、自称貴族になってしまう。そうなると、人との接点が少なくて、なおかつ今後の生活に役立つ知識をできるだけ多く得られる育ちが必要になる。結局彼が思いついたのは、小説などでそこそこ見るものだった。


「こんなのはどうですか? 山中の庵に一人で暮らす偏屈な老魔術師に拾われて小さい頃から弟子兼下働きをしていたが、老魔術師から独り立ちするように言われて生まれて初めて山から下りてきた」


「うん、ありがちですがいいですね。関わる人も少ないから、矛盾を突かれることもなさそうです。ただ、どうやって生計を立てていたのかという問題が出てきますので、年に数回行商人がやって来ていたということにしましょう」


「はい、わかりました」


ご意見やご感想、誤字の指摘などお待ちしています。

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