第九話:激戦
激昂するクシルから放たれた妖力が鳴神を狙った。
進む道に在る物を破壊しつつ妖力はまるで蛇のようにうねりながら鳴神へと向かう。
しかしそれは鳴神へと届く事なく鳴神の右手に握られた刀により一閃され、虚空へと散る。
予定調和の茶番劇かのような一連の戦い。
それが火蓋。それが幕開けだった。
次の瞬間、鳴神の織り成した結界ごしにすら響くほどの激闘が始まる。
クシルより放たれる妖力、鳴神が返す刀。
その陣営は崩れない。
いや、それはよく見れば鳴神が若干押しているかの見えた。単純な力を放つクシルに対し、的確に力を打ち破り一歩ずつクシルへと間合いは狭められて行く。
しかし、
「クシル、茶番になんの意味がある?」
鳴神から伝わるのは、先ほどまでの軽薄さが消えた声。
隙をみた鳴神の刀が、クシルの体を切り裂くが、鳴神の表情は声のごとく、冷たく硬い。
見れば、
今度はクシルが、先の鳴神のごとく嗤っていた。
「おにーさん、やるねぇ。でも効かないよ、ぜーんぜん」
嘲笑。
子供のように、甲高い声で鳴神を嘲っていた。
「おにーさん、楽そうじゃないし、僕を怒らせちゃったしね……。全力で殺してやるよ!」
最後の一言は激昂だった。怒りはとけていないらしい。
言葉を合図とするように、クシルの背中に触手が生まれ出た。
見るだけで嫌悪感に捕らわれる黒い暗い色の触手。それはあのナメクジもどきの物だった。
「おいおい…、触手は18禁ゲームの特権だぜ……。」
鳴神が心底嫌そうに呟いた―。
終わりが見えてきました。皆様どうかお付き合いくださいませ。