第八話:激突必至
鳴神が殺陣を止めてなお、クシルが現実へと還るのに数瞬の間を要した。
舞うかのような殺陣。
行われるのは明らかな殺戮であるにも関わらず、それは演舞と評すべきものであった。鳴神を取り巻いていた妖達は既に無へと帰していた。
「驚いてるな?」
楽しそうに、そして不敵に笑う鳴神。その姿に、クシルは一瞬恐怖を覚えた。そしてそれは激しい怒りと不甲斐なさへと変わった。一瞬でも恐怖などという感情を抱いた自分への怒り。ごちゃまぜとなる怒りの矛先は鳴神へとむく。
「おにいさん・・・なんなんだよ・・・気持ち悪いんだよぉ!!」
叩き付けるかのような叫び声。それでなお、鳴神は五月蠅そうに、片目をすがめるだけだった。
「わんわん、ぎゃあぎゃあ五月蠅いな。いつまでもそんなとこにいないで、さっさと降りて来いよ。」
真っ直ぐ見据える視線は、沸点を超えているクシルの怒りを増大させた。しかし鳴神は刀を突き付け、さらに言葉を紡ぐ。
「クシル、お前は既に器物損壊、障害未遂及び殺人未遂の罪を重ねてる。このまま陰陽寮に出頭するなら減刑を考えてやってもいいぞ?」
不敵に笑い、首をかしげる鳴神。クシルからは、常人に視認できるほど陽炎のような気配が立ち上ぼっていた。
「殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!殺してやるよ!おにいさん!!」
目を見開いた鬼気迫るクシルが鳴神へと向かう。鳴神の全身から油断は消えた―。
かなり久しぶりですが、読んでやって下さい。