第7話:戦闘開始
「なかなかやるな。幻術が効いていないのか?」
「しばらく騙されちゃたけどね。お兄さんやるね。オンミョウジって言ったっけ?なにそれ?」
「なんだぁ?最近の妖も学力低下か?日本は目茶苦茶だな。」
襲撃者の顔に苛立ちが浮かぶ。妖気が陽炎のように揺らめくのが見えた。
「お兄さんムカつくね。死んじゃえば?」
端正な少年の顔に残酷な笑みが張り付き、するどく尖ったような妖力が放たれる。
しかし、鳴神には当たらない。左足で弧を描き、半身にて攻撃をかわす。右手に握られるのは、いつ取り出したのか、銃が握られていた。
「最近のガキは、ホントにキレやすいな!」
言葉とともに放たれる銃弾は3発。それらは違う事なく少年の姿を持つ妖に突き刺さる。
銃弾に込められた符が効力を発揮、妖の身体の三ヵ所から放射状に消滅が始まった。
少年の顔に苦悶の表情が浮かぶ。が、それはすぐに気に障る嘲笑へと転化した。
それと同時に身体の消滅が止まり、再生が始まった。すぐさま再生は終了し、少年は握っていた手をゆっくりと開く。その手からこぼれ落ちたのは先ほどの銃弾。軽い音を立て、床を転がる銃弾は、不思議な沈黙の中に沈んだ。
その沈黙をやぶったのは、襲撃者だった。
「お兄さん、僕、目茶苦茶ムカついたよ・・・。僕の名前は、苦死流。お兄さんを殺すよ。」
「クシル?また妖とは思えない名だな。」
場を焦がさんほどの殺気を受けてなお、鳴神の口からは軽口がこぼれ出る。
「お兄さん・・・いい加減にしろよ!!行け!」
クシルが手を横に薙げば、先ほどまで幻術で力を無くしていた雑鬼たちが我に帰り、すぐさま鳴神へと向かってきた。
鳴神は素早く人差し指と中指を立てた刀印をつくり、術を放とうとするが、それよりも早く、駿足を誇る妖に踏み込まれていた。あやまたず、その妖の爪が鳴神の喉笛を狙う。
誰もが、首を取られたと、その妖すらそう感じた。
しかし、実際に斬られ消滅したのは、その妖だった。
気付けば鳴神は刀を携え、その妖の斜め後方に佇んでいた。
「術が使えなければ、銃が効かなければ、陰陽師はただの人ってか?実に短絡的だな。」
刀を構える鳴神に雑鬼たちが若干怯む。
が、すぐに我へと返り鳴神を囲い始めた。
それに対し、鳴神は笑みを崩さず。
「来いよ。叩き斬ってやる。」
怒り狂う雑鬼が襲い来る。
爪が、歯が、牙が様々な方向から襲う。鳴神はそれを防ぎ、躱し、受け流し、雑鬼たちを斬り捨てていく。
華麗に。美麗に。まるで舞うかのような立ち回りに、クシルは目を奪われた。
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