第七話 空色は雨に濡れて
装備の返却手続きを終え、王都についた時と同じ様に、背面で二本のカタナの鞘で×の字を描くようにしてベルトに吊り下げる格好に戻っているコウキは、現在ミーシャとルクセリアを伴って、手甲を装着しつつ城への道をガチャガチャゴツゴツと歩いている所。
灰色の地面を戦闘用のブーツで叩くコウキの右には、跳ねる様にして金色の髪を揺らすミーシャ。左には、あくまでゆったりとした歩調で、深い青の髪を静かに波立たせるルクセリア。
二つの軽い足音がコウキの横に並び、特にミーシャは心なしかいつもより元気に、そして矢継ぎ早にコウキへと話し掛けている。
城下町の雑踏に紛れる事なくコウキの耳に届く、元気に鈴を鳴らす様な綺麗な声は、しかしてその元気さとは裏腹に僅かに陰りが見て取れる。
いや、元気すぎると言うのが正しい。
明らかにいつもよりも身振り手振りが大きく、わざと跳ねるような歩調でコウキを覗き込んでみたり、弾けるような笑顔で話し掛けるミーシャの様子に、コウキが何も気が付いていない訳がない。
長い付き合いである故に、その辺りの機微は手に取る様に理解出来るコウキだからこそ、その対応は全く持っていつも通り。
「お城ってすっごいのよ! ただの廊下なのにドーンと広くて、何か真ん中に赤くてすんごい長いカーペットが敷いてあるのよ」
「無意味っちゃあ無意味だが、まぁ、華やかさはある……のか? どうなんだ?」
「え? 私? それは勿論、似たような物は私の実家にもあった様な気がするけれど……」
「チッ、金持ちはこれだから」
「ねー? 困っちゃうわよ」
「ちょっと待って。私責められる要素何処にもなかったわよね? 今私実家に居る訳じゃないじゃない?」
コウキのこれみよがしな睨みつけるような半眼と舌打ちの後に、打ち合わせたかの様にミーシャの空色の瞳も半眼を形作り、ルクセリアへと向けられ、コウキを援護する様な言葉が飛んでくる。
ただ単に実家がこの様なものだと語っただけのルクセリアからしてみればとばっちりもいい所であり、心外だと言わんばかりに寄せられた眉根がそれを主張。
勿論、それがただの冗談やじゃれ合いだと理解出来ているルクセリアにしてみれば、特に気分を害するような物ではない。
付け加えて、何故現在のミーシャが必要以上に元気でありノリがいいのか、その理由は外から見ていて付き合いの浅いルクセリアでも、朧気ながら理解出来る。
コウキとミーシャの関係は、外から見てみれば仲がいい事はすぐにわかる。そして、ミーシャがコウキへと向けるその感情も、透けて見えると言う言葉がしっくりと来る程に明け透けだ。
人前では滅多に明確な言葉にしないものの、その内心は本当にすぐ察する事が出来る。
言葉の端々に溢れるミーシャの感情。コウキを見つめる空色の綺麗な瞳。コウキに話しかけられた時に浮かべる弾ける様な笑顔。あからさまにコウキへ向けて一喜一憂してみせるその姿は何よりも魅力的な物で、どう言った感情がミーシャの魅力を押し上げているのか、それを察するのにそう時間はいらない。
そして向かうのは城であり、ミーシャは魔法騎士団の団員、コウキは世界を自由に飛び回ることが出来る傭兵。
二つの事実を考えれば、この先で起こる事はミーシャにとって辛い事であると想像するのは容易い。
門からまっすぐ城に向かう道のりは、遠いようで近い。
灰色のトバリ石を加工して敷き詰められた道の両側には、活気あふれる店や家屋が立ち並んでおり、その喧騒が更に城までの道を短いものだと錯覚させる。
その証拠に、コウキ達の視線の先には小さく城への門が見えている。
城下町を囲う城壁ほど堅牢でも大きくも無いが、それでもそこが最後の砦なのだと理解させるには十分な存在感、そしてそこを塞ぐのは金属製のしっかりとした城門。
近くには詰所らしき建物が存在し、兵士達が常に詰めている事を考えれば、見張りとしても一時の防備としても十分な機能を果たす事が伺える。
国の軍と言う戦力ではなく、ローデンハルトの兵士は民間からの有志で成り立っている部分が大きく、国としての戦力には数えられていない。
有志とは言っても、そこに指揮系統は存在しているし、多少ではあるが危険手当と言う名目で給金も発生する。
そして、万が一戦争が起きた際の役割は防衛ともしもの時の時間稼ぎが主な役割であり、有志である故に、義務も責任も存在しない事から敵前逃亡は死刑などと言う規則も存在しない。
無論、一定の訓練は課せられるし、民間からの協力とは言え、誰でも採用するわけではなく、人選は国が直々に選出を行う。
少ない給金。一定の訓練。と得にならない事柄が多いが、兵士への志願者が絶えた事はここ数年なく、その事実が、ローデンハルトは豊かで平和で良い国であると言う証明の一つになっている。
「コーは、これからどうするの?」
「取り敢えずカタナ打ってもらうつもりだしな……暫くはここを拠点に支度金稼ぎだな」
「そっか……じゃあ、それが終わったら出て行っちゃう、のよね?」
「そうなるな」
自らの後ろで組み合わせた手をギュッと握り締め、前を向いていた空色の瞳は城が見えた瞬間には軽く伏せられ俯く。俯いてよく見えない顔には、今にも泣きそうでくしゃりとした儚い笑顔が浮かんでいる。
必死に我慢して、目尻に溜まった涙を零さない様に笑う――笑う。
目一杯釣り上げようとする口元が、ふるりふるりと震えており、しっかりと笑えているかどうかすら最早怪しい。だが、ミーシャは笑おうとする事をやめない。
その様子はコウキとルクセリアにも見えており、二人共ミーシャの方へ視線を向ける事はなく、ただただ真っ直ぐに城を見据えるだけ。
「私はこう言う時気の利いた事は言えないのだけれど、例え誰かに非現実的だと笑われても、夢だって言われても、信じていい事って多分あると思うわ」
必死に涙を堪えて、笑おうとしているミーシャを見かねてか、視線は城へ向けたまま豊かな胸の下で腕を組むルクセリアから、静かに紡がれた言葉は何とも抽象的な言葉。
え? と顔を上げたミーシャの空色の瞳がルクセリアを捉えるも、ルクセリアの方は視線を合わせる事はない。それ所か、ミーシャの視線から逃げる様にそっぽを向いて見せ、青い肌を持ち艶とハリが絶妙なバランスを持って同居した頬を少し赤く染めている。
抽象的且つロマンチックとでも言えばいい言葉を紡いだルクセリアに、ミーシャだけでなくコウキも鋭い瞳を少し驚いたようにしてルクセリアへと向ける。
そして苦笑と共に、右手を軽くミーシャの後頭部へと触れさせ、質のいい金糸と言ってもいい髪へと、節が目立つ指を差し入れ、するすると梳かす様にして何度も撫で付けていく。
ルクセリアを見ていたコウキの瞳は、その行動と共にミーシャへと向けられており、空色の瞳に映ったコウキの顔には本当に珍しく、ただ純粋な小さい笑みが浮かんでいた。
「随分ロマンチックな事を言ってるが、コイツにはそれじゃ伝わんねぇと思うけどな?」
「う、うるさいわね……な、何て言うか、その……想いはきっと伝わるって言えばいいのかしら……あぁもう、恥ずかしいわ……要は想いはきっと空から繋がってるんじゃないかって事よ。貴女の瞳みたいにね」
「要約するとだな。綺麗な空色の瞳を持った貴女の綺麗な想いは、やっぱり空を通じて繋がってると信じていいんじゃないか、ってよ」
「な、何で態々要約するのよ……恥ずかしいから誤魔化してたのに……」
小さく笑みを浮かべたコウキの言葉に、ルクセリアは小さく唇を尖らせ、ますます頬を赤く色付かせる。
自らの性格に合ってない台詞だと思っているのか、コウキがわざわざ要約してみせた事に対しての反論は弱く、珍しく消え入りそうな程に小さい声。
しかし、それでも言ったのは、ルクセリアと言う女性が、直向きなまでの想いを持っているミーシャを気に入った証でもある。
少しほうけた様な空色の瞳がゆっくりとルクセリアとコウキを交互に捉え、最終的には小さく笑みを浮かべたままのコウキを捉える。
まだ金色の髪を一本一本撫で付ける様に触れているコウキの手を感じ、城の門の前で足が止まると同時にぼんやりとコウキを見つめる空色の瞳から、ほろりと透明な雫が流れ落ちる。
崩れてしまえば後は早いもので、次々と溢れる雫は止まらず、頬を伝う雫は川の様な流れを作る。
小さく整った口からは、嗚咽が篭った短い声が次々と溢れ出し、それは止まる事なく溢れては空気へと溶けて消える。
ひぅ、ひぅと嗚咽を漏らすミーシャの声に合わせて、横長の耳が垂れ下がったまま小さく幾度も震え、段々と動きが大きくなるにつれて肩も震え、ついにミーシャは耐え切れなかったのか、くしゃりと切なそうに悲しそうに眉根を寄せたまま涙を流す。
城の前でみっともなく涙を流し、やだよぅ、やだよぅと小さく繰り返し嗚咽を上げるミーシャは、確かにみっともなく見えるのかもしれない。
人通りが多く、未だ喧騒やまぬ城下町から然程離れておらず、指揮系統で言えば部下とも言える兵士達や住民達の目もある。その中で肩を震わせ耳を震わせ、小さな子供の様に嗚咽を上げるミーシャ。
国が誇る魔法騎士団のローブを纏いながら、何とみっともない。そう思うのは人の勝手であり、自由である。
しかし、それを口に出す事は許されない。自分の為に、嫌だと叫ぶ事、泣く事は絶対にしてはいけない事なのか? みっともない事なのか? そうではない。みっともないと自分自身が思ってしまうからこそ、自らの為に嫌だと声を上げられなくなる。涙を流せなくなる。
年月を重ね、経験を重ね、他人の目を気にするようになって、常識を覚え、そうなっていく。だが、そうなってもミーシャは自分の為に、自分の感情に対して素直に嫌だと声を上げ、涙を流す事が出来る。
それはとても純粋で、綺麗なものだ。誰もが忘れていくものだ。そして、そんな誰もが忘れたものを持っているミーシャを、多くの人間はみっともないと思うかもしれない。
それは正しいが、正しくない。何故なら今のミーシャの姿は、とても綺麗で、とても純粋な姿だから。
拭っても拭っても溢れてくる涙を、手の甲で、掌で、何度も何度も拭うミーシャは、小さく嫌だ嫌だと繰り返す。
そんな彼女に言葉を掛けるでもなく、コウキはただミーシャのさらりと流れて輝く金色の髪をゆるりと撫で付けるだけ。
「ぐじゅ……やだ……ひぅ、やだ、私コーと離れるの、やだ」
「そうか」
「コーも、いや……よね?」
「そーだな」
「でも、行く……のよね?」
「そーだな」
「だから、せめて、心配ないよって言おうとした、うっく、のに」
「泣いてもいいじゃねーの。嫌だって言えるのはいい事だと思うぜ?」
苦笑と共に紡がれたコウキの軽くも低く、それでいて珍しく柔らかな声に、ミーシャは、うあーん! と恥も何もなく、大きな声を上げて泣いてみせる。
もう涙を拭う事すら諦め、両手をだらりと垂らして、ただ嫌だ泣き続ける彼女の姿は、切なくも美しく、悲しくも尊い、みっともなくも純粋で、誰もが忘れ去っていく人の姿だった。
「一杯泣いちゃったわ」
「んだな、注目の的だったな」
「うぅ、今思うとちょっと恥ずかしいわね……」
「いいじゃない。素敵な事だと思うわよ? 誰かの為じゃなく、自分の事にも泣ける人って、実はそんなに多くないのよ?」
恥ずかしいと声に出し、頬を染め上げて身を捩るミーシャに、コウキは薄く笑い、ルクセリアは苦笑でもって応えてみせる。
空色の瞳には、まだ小さく涙の揺らぎが見え、目元は赤くなってはいるが、それでも落ち着きを取り戻したミーシャは、とててっと軽い足取りでコウキとルクセリアの前に立つ。
その顔色は吹っ切れたとはとても言えず、まだまだ未練が残り、全身の雰囲気でコウキの傍にいたいと語っている。
それでも、彼女の足はきちんと自分の居るべき場所へとしっかり向いている。
正面に立つミーシャへ、コウキは笑みを消した黒く鋭い眼差しを向け、ルクセリアも猫の様な金色の瞳で空色の瞳を射抜く。
黒の外套に黒のシャツとズボンと言う簡素な服装に、二本のカタナと手甲、ベルトに取り付けた道具袋と布に包まれた金属塊。シャープな輪郭に鋭い瞳。その全てを刻み込む様にしてコウキをじっと見据えるミーシャの空色の瞳が、また揺らぎを見せるが、ぐっと堪えて頭を振る。
ふぁさりと跳ね上がり、金色の扇を思わせる様に舞い上がったミーシャの髪が落ち着いた時には、顔を上げてぐっと胸を張り、しっかりとコウキとルクセリアに相対するミーシャの姿があった。
堪えても堪えても泣きそうに揺れる空色の瞳を、今出来る精一杯の笑顔に変えてみせる。
今にもくしゃりと歪んでしまいそうな、しかして精一杯の笑顔を浮かべたミーシャは、まずルクセリアへと言葉を紡ぐ。
勿論ルクセリアも、しっかりと聞き届ける様に、金色の瞳をミーシャから外す事はない。
ミーシャが声を上げて泣いた時、ぱったりと収まっていた喧騒が戻ってきてなお、ミーシャの紡ぐ鈴の鳴る様な声は、それに紛れる事なくしっかりルクセリアの耳に届く。
「ルクセリアさん。コーの事、よろしくお願いします。きっともう何処でも飛んで行けちゃう人だから、目を離さないでしっかり見届けてあげてください」
「えぇ、任されたわ」
精一杯の笑顔を浮かべ、僅かに震える声でコウキを頼むと言い切ったミーシャに、ルクセリアは静かに頷き、しっかりと返答してみせる。
切なく真撃なその願いには、自らも真撃な意思でもって受け止めなければならない。そう思わせるには十分なミーシャの様子と声には、相応の想いが詰まっていた。
想いが詰まった言葉をしっかりと受け止めたルクセリアに、ミーシャは軽く一歩踏み込んでみせる。
そして、弾けるような笑顔ではなく、珍しく小さく何かを企むような笑みを浮かべたミーシャは、しっかりとハリと艶を保っている青い肌が特徴的なルクセリアの長く尖った耳へと自らの唇を寄せる。
金色に輝く髪と深い青の髪が軽く触れ合い、ルクセリアの耳元でぼそりと囁かれる声は、コウキに届く前に喧騒の中へ掻き消える。
「コーならきっと、ルクセリアさんの全部と一緒に飛んでくれますよ。きっと」
「っ!? 貴女……」
「えっへへ、だから、目を離しちゃダメですよ?」
「……わかったわ」
えへへ、と笑みを浮かべて、ふわりと軽やかにルクセリアから離れるミーシャが残した言葉は、ルクセリアの耳に張り付いて消える事はなく、同時に驚いた様に金色の瞳が見開かれる。
体の後ろで両手を組み合わせ、笑みを浮かべるミーシャに対して、小さく吐き出す息と共に肩を竦めてみせる。
ルクセリアの静かで、仕方ないと言わんばかりの了承の声に、うんうん、とミーシャはいくつか満足そうに頷く。
小さく呟かれた声は、コウキには聞こえる事はなかったが、彼自身その内容には興味が無い様に、ただ笑顔を浮かべるミーシャを鋭い黒の瞳で捉えるだけ。
満足そうに頷いたミーシャの瞳が、鋭い黒の瞳と交差。
先程まで笑顔を浮かべていた表情が崩れそうになるが、何とか持ち直したように、精一杯笑顔を保ってみせる。
ふわりとソレイユ独特の柔らかで暖かく、そして穏やかな風が吹き込み、ミーシャの金色の髪を少し舞い上がらせる。
腰まで伸ばされたミーシャの金糸の様に美しい髪が、ふわりふわりと風に流されて行く様は、言葉を失う程に幻想的で儚い。
柔らかく穏やかな風と遊んでいる妖精の様なミーシャが、空色の瞳でコウキを捉えたまま、小さく口を開く。
「私、待ってるわよ? コー」
「あぁ」
「次会った時にはちゃんとお嫁さんにしてよ、ね?」
「…………あぁ」
恥ずかしがる事もなく、しっかりとコウキの瞳を見据えて言い切るミーシャに、少しの沈黙の後、諦めたのかため息と共に応えてみせる。
コウキの反応がどうであれ、しっかりと聞きたい返事を貰ったミーシャは、にっこりと笑顔を浮かべ、一歩コウキへと近づく。
こつ、と軽い音が響くと同時に、少しミーシャとコウキの距離が縮まり、同時にミーシャは口を開く。
何かを誤魔化す様に、企むように、小さく笑みを浮かべたままのミーシャに、コウキはため息を吐きつつも、その場を動く様子を見せず、しっかりとミーシャの言葉に耳を傾け、視線を逸らさない。
「一杯女の子連れててもいいけど、あんまり遅いと私、別の人の所に飛んでっちゃうわよ?」
「まぁ、仕方ないんじゃねぇか?」
「むぅ! 少しは、行くな! とかそういう事言ってくれてもいいと思わない?」
「キャラじゃねーよ」
「それはわかってるけど……でも、コーが繋いでくれないとホントのホントに飛んでいっちゃうわよ?」
「だから、それは仕方ねーって」
言葉と共に、一歩、また一歩とコウキに近づき、その場から動こうとしないコウキとの距離は、既に少し手を伸ばせば届く距離。
連れないとも言えるコウキの言葉と表情に、むっと頬を膨らませ、耳をピンと張るミーシャだが、その距離まで来ると表情を一転。
ふわりと柔らかく、小さな笑顔を浮かべ、しっかりと空色の瞳でコウキの顔を見つめる。
少し下にあるミーシャの空色の瞳を見返す黒の瞳は、やはりこんな時でも鋭く輝いており、その瞳は昔から今までずっとミーシャの心を掴んで離す事がない。
じっとコウキを見上げるミーシャの両手が自然と伸び、コウキの肉が少なくシャープな輪郭を形成している頬を柔らかく挟み込む。
そして、小さくミーシャは、うそ……と言葉を紡ぐ。
「うそ、うそよ。私はもうコーから離れられない。他の人の所になんて飛んでいかない。コーの所へ飛んでいくわ」
「そーかい……もう既に次の行動が予測出来るが、まぁ今なら文句言わねぇよ」
「むー、ムードないわねー……まぁいいわ、んっ」
雰囲気をぶち壊すコウキの言葉と共に、鋭い黒の瞳はルクセリアへと向けられる。
その瞬間ばっちり黒と金色の視線が交差しており、どうやらルクセリアはチラチラとコウキとミーシャへ視線を向けていた様で、視線が交差した瞬間、頬を赤く染め上げ、わたわたとあからさまに慌てつつ体ごとコウキとミーシャから視線を外す。
ぐっと踵を浮かしたミーシャとコウキの距離が一気に零になり、しっかりと頬をミーシャの手で挟まれたコウキの唇がミーシャの唇と重なる。
陶酔する様に瞳を閉じたミーシャは、小さく吐息を漏らしつつも、コウキの男性的な薄い唇に小さく何度も吸いては離れを繰り返す。
名残惜しい、寂しいと言う感情をしっかりとコウキに伝える様に、何度も何度も唇を触れ合わせては小さく吐息を漏らすミーシャは、寂しがる小さな子供の様でもあり、ねっとりと男性を絡め取る淫魔の様でもある。
唇を湿らせる小さな音がコウキとミーシャの間から何度も上がり、ちぅ……と最後の名残惜しさを伝えるような音と同時に、ぶるぶるとミーシャの横長の耳が小さな震えを見せる。
はっ……と言う小さな吐息を残してコウキから離れたミーシャの頬は薄く桜色に染まり、今はコウキしか映していない濡れた空色の瞳でコウキをしっかりと見据える。
熱に浮かされた様に揺れる空色の瞳が捉えるのは、変わらず鋭い輝きを宿す黒の瞳で、これからもその鋭い輝きは曇る事なく輝いたままである事をミーシャに確信させる。
そして、にっこりと笑顔を浮かべ、たたっと二歩、三歩とコウキから視線を外さなま後退。肉付きの薄い頬から外された指が名残惜しさを伝える様に、するすると肌の上を滑り、空気を撫でる事になったミーシャの両手は自然と己の後ろへ回される。
背面で両手を組んだミーシャが、再びコウキとルクセリアの二人を視界に捉える頃には、弾けるような笑顔ではなく、にひひ、と何かを企む様な笑みへと変わっていた。
「じゃあ、そろそろ行くね」
「あぁ」
「ルクセリアさん。コーとくっついてもいいけど、私の席も残しておいてくださいね?」
「だから私は……はぁ、言っても無駄なんでしょうね。わかったわよ。そうなったとしたらその時はちゃんと残しておくわ」
コウキには興味以外の積極的な感情はないと伝えようとして、ミーシャの笑みを見たルクセリアは続けようとした言葉を飲み込み、ため息と共に肯定の意を伝える。
にひっと笑ってみせるミーシャの表情は、ルクセリアがコウキに好意を持つ様になると言う事実を全く疑っていない。
根拠も何も存在してはいないが、ミーシャの表情に浮かぶ確信を見てしまえば、ルクセリアがその意見を強く否定出来る要素も確かに持ち合わせていない事も事実。
そんな未来はない。そう思い込もうとしても、確かな自信を込めたミーシャを見てしまえば、そんな未来もあるのかもしれないと思わせるには十分な表情だ。
込められた自信を表す様にぴんと張り詰めていた横長の耳からフッと力が抜けた時には、またもう一度魅力的で透明感と明るさを込めた弾けるような笑顔を浮かべたミーシャが、コウキとルクセリアに柔らかい光を宿した空色の瞳を向けている。
「じゃあ、二人共、バイバイ。またね」
「あぁ、またな。ミーシャ」
「えぇ、また会いましょう?」
短くも切ない、儚く小さく鳴る鈴の音の様な声で紡がれた別れの言葉に、コウキは短く端的に応えて見せ、ルクセリアは静かな笑みを浮かべて答えてみせる。
二人の言葉をしっかりと受け止めたミーシャは、一層笑みを深く刻み、二人から視線を外さないままに一歩、二歩と足を後ろへ運び、三歩目を運んだ時に小さく控えめに振られる右手は、誰かを求める様に、誰かに握って欲しいと言っている様に、小さく小さく振られていた。
その求めに応える者、その手を力強く握り締める者は、今はまだここには居ない。
猫の様な金色の切れ長の瞳と鋭い輝きを宿した黒の瞳を振り切る様にして、くるりと踵を返したミーシャは、それから足を止める事なく城へとその姿を消した。
きらりと陽光に反射しながら地へと零れ落ちた雫は、しっかりとコウキとルクセリアにも見えており、ミーシャがどう感じて、どう決断してここから離れたのか、それを察するには十分な一雫だった。
また会おう。その意味を込めて別れの言葉をミーシャと交わしたコウキとルクセリアは、再び喧騒の真っ只中である城下町へと舞い戻っていた。
金色に輝く明るい髪と弾ける様な笑顔を持ったミーシャが居なくなった二人の雰囲気は、静かなものだが決して悪いものではない。
人混みの中を歩いているとは言え、つい昨日会ったばかりにしては距離が近く、どちらかの歩調が速すぎる事もない。意識せずとも自然と合わせられる歩調や、両者とも気負っていない雰囲気を総合すれば、相性がいいというやつなのだろう。
視界には人の波が広がり、耳には数多の喧騒が飛び込んでくる中でも、互いの声を拾い損なう事はなく、聞こえてくる喧騒の何倍も小さい声にも拘わらず会話が成立する。
会話の間にもコウキの瞳はいつもの鋭さが少し鳴りを潜め、未だに珍しそうな光を宿して辺りをきょろきょろと動き回る。
人族。エルフ族。ドワーフ族。狼や猫、犬、熊、鳥等の獣人族達が所狭しと行き交う光景。視界にこれほどの人が溢れかえる光景など、コウキにしてみれば有り得ない事に含まれる。
時折この世界の服とは思えない服装をした黒髪黒目の人族、金髪碧眼の人族等がいる。珍しい事ではあるが誰もその事実に対して不思議そうな視線を向ける事はない。
多少おかしな服装をしていようと、ここは一つの国の中でも最も栄えている場所、王都である。故に、様々な人種が生活を営んでおり、その中で趣味嗜好が違う事等珍しくもない。服装や容姿の違和感など些細な事だ。
「あれでよかったの? ミーシャ、泣いていたけれど」
「泣いてるのがあいつだからこそあれでいいんじゃねぇか」
「……私には理解出来ない哲学なのかしら? 私の気の所為でなければコウキの言っている事は恐らく意味不明よ?」
「そんな高尚なもんじゃねーっての」
少し咎めるようなルクセリアの静かな声に対して、特に構えた様子も見せる事なく、視線は人混みに行き交う多くの人達へ向けたまま、彼女の質問に答えてみせる。
肩を竦めて答えたコウキの言葉に、ルクセリアの頭はこてんと小さく右に傾き、疑問を感じているかの如く猫の様な金色の瞳は宙を踊る。
考えても考えてもコウキの意図を理解出来ないルクセリアは、どんどんと頭が右へ右へ傾いていくが、その答えも時間を置くことなくコウキからもたらされる。
摩訶不思議、理解不能と声を上げて首を傾げるルクセリアに答えを寄越す頃には、行き交う人々の姿に飽きたのか、黒の瞳は既に鋭い輝きを取り戻し、横目でルクセリアを捉えている。
「あいつと俺がそれこそ古い付き合いだって話だ」
「ふぅん? それってどう言う……あぁ、そういう事ね。大体理解したわ」
「そりゃなにより」
「間接的に惚気けられたって事よね。藪蛇だったわ」
抽象的とさえ言えるコウキの答えを受けて、その意図する所に思い当たったルクセリアは、わざわざ両手を広げて肩を竦めてみせる。
付き合いが深く、その心の内がわかってしまう知己が泣いている時と、見知らぬ人物が自らの前で泣いている時に、どういった観点でどう心配するか、と言う話だ。
面識がないが泣いている人物がいたとして、周りには自分しか頼れる人間がいない場合、まず何があったのか聞き出し、あの手この手を使って泣き止ませようとする。
しかし、心の内がわかってしまう程に深い仲の人物ならばどうか?
泣いている原因が何かもわかるし、その中で泣いている人物がどうしたいのか、どうしなければいけないのかもわかってしまう。
つまり、言葉を尽くさずとも今のミーシャにとって最善の行動を自分は取ったし、ミーシャもコウキの行動を最善だと思っている。
そう言いたい訳であり、確かにこれは間接的に盛大な惚気と取られてもおかしくない。
軽く瞳を閉じて、呆れたと言う様にため息を吐いて見せる事も忘れないルクセリアだが、じゃあ聞くんじゃねぇと言わんばかりにコウキもため息を吐き返して見せる。
しかし、そんなコウキの仕返しに対しても、白々しく右手で目元を覆う様に疲れたポーズを見せてくるルクセリアは正しくクールな美女である。
そして、この様なやりとりでも非常に絵になる彼女に視線が集まらない訳が無く、王都に入ってきてからチラチラと彼女に視線を向ける者の数は、今の今まで増える一方だ。
集められる視線には、羨望、憧れ、好意等の淡く輝く感情が乗せられた視線が多く存在する。無論、もっと直接的な欲を乗せた視線も存在するが、それでもルクセリアに対して悪い感情を乗せた視線は存在していない。だと言うのに、ルクセリアの隣を歩くコウキ、この場この時で言ってしまえば、多くの好印象を集める彼女に一番近い場所に立っているコウキがルクセリアに向ける視線は、呆れと言う感情以外何も乗せられていない。
負い目も緊張も遠慮もなく、素直に思った感情をルクセリアにぶつけられるコウキへ妬み、嫉み等の視線が向けられるのは、最早必然と言える。
しかし、それを切っ掛けにしてコウキに対し高圧的な態度で声を掛ける者はいない。当然だ。連れている女性が絶世と言ってもいい程の美女であり、そんな女性と近しい存在とも思える男が傍にいたとしても、いきなり街中で突っ掛る等常識的ではない。
それを理由に喧嘩沙汰を起こすなど、常識的所か正気ではないのは当然の事であろう。そんな事を躊躇なく敢行すれば、晴れて異常性欲者や常識知らずのレッテルを張られる事となる。
盗賊や山賊等の無法者ならばいざ知らず、ここは王都であり、教育や常識が行き届いた街中。その様な事が起こるはずもない。
故に、コウキへと妬みや嫉みの視線が集まり、ルクセリアに羨望や好意、憧れの視線が集まる。ただそれだけの平和的な状況だ。
だからこそ気がついたのかもしれない。
トバリ石と木材で建てられた建築物が作り出す建物と建物の間。細く蜘蛛の巣の様に城下町中に張り巡らされた路地の入口。その一つ。
鋭い輝きを宿すコウキの黒い瞳の端に映った路地の入口。不自然に輝く小さな一対の緑色の光。
自然と宿す瞳の光ではなく、明らかに人為的な要因があるその輝きは、鋭く静かにルクセリアとコウキに向けられている。
穏やかで日常の中で見られる淡い感情、欲に従った素直な感情が乗せられた視線の中で、ふと捉えた無機質で無感情な視線。
それは一度浮き彫りになってしまえば明らかな違和感となってコウキに突き刺さる。
きゅるきゅると回転しつつ一対の輝きが路地の入口で形を成すと同時に、自然とコウキの唇は自らの内にある鍵を呟く。
「解析」
隣から小さく呟かれた低い声に、ルクセリアは不思議そうな光を宿した金色の瞳を向けるが、それに構う事なくコウキの唇は動き続ける。
「ダスト『世界の記憶』|《》(ダストロック)|》》(コンバート)『自由の瞳』」
「コウキ? 何を……」
「ほぉ……これ便利だな」
猫の様な金色の瞳がコウキの声に反応して不思議そうな光を宿していたものが一変、その瞳に宿る感情は驚愕と言う言葉がピタリと当てはまる。
驚きに見開かれた金色の瞳が捉えたのは、面白そうに薄く笑みを浮かべるコウキの鋭く輝く黒の瞳に、きゅるきゅると回転しつつ、赤く輝く陣が浮かび上がる光景。
一つの円の中心に小さい円が存在し、二つの円の間には小さい円を取り囲むように五つの円が存在。中心にある小さい円に沿う様にしてきゅるきゅると回転しており、五つの円自体もきゅるきゅると回転している。
中心にある小さな円のまた中心には点が存在し、それを起点にして中心の円の外側へ向けて幾重にも細い線が走る。
赤い光で構成されたそれは、明らかにダストを行使している事の証拠であり、初めてコウキのダストを見たルクセリアの表情に浮かぶのはただただ驚きだけ。
ダストを行使し、うっすらと笑みを浮かべるコウキの視界は、幾人も行き交う人達の隙間から、一番外側の城壁に存在する鉄門の向こうの光景までハッキリと見渡す事が出来る。
視界に入る人々が今起こしている行動の詳細全てがその瞳はハッキリと見えており、近くへピントを合わせれば近くも見る事が出来る。
意思一つで遥か遠くを見渡す事が出来、生物の小さな動きも見逃す事がない。
今コウキが手に入れたダストはそう言うモノだ。
このダストを手に入れる原因となった人物は、既にコウキ達の後方。未だ背中に突き刺さる違和感は付き纏っている。
ルクセリアが気付かないのはこれだけの視線に晒される事に慣れすぎたが故だろう。数多くの視線に慣らされてしまった彼女の感覚は、視線に乗せられた感情の機微や視線の違和感など気にしなくなっている。
戦場から離れた街中など、特にその傾向が強い。
「それが貴方のダスト?」
「あぁ、視界の端っこで発動してるの見つけてな、ちょいと拝借した」
「それ、解除したらもう使えないのかしら?」
「記憶舐めんな。一回解析すりゃあ後は出し入れ可能だ。一つしか発動させられんがな」
何処か誇らしげに笑みを浮かべ、赤く輝く鋭い黒の瞳をルクセリアに向けて答えてみせるコウキに、ほんと、便利ね……と答えてみせるルクセリアは何処か呆れた雰囲気を滲ませている。
コウキ達に突き刺さる違和感の原因は動きを見せる事なく、ただ視線を突き刺してくるだけ、ならばコウキから仕掛ける意味などなく、口を付くのはこれからの予定。
喧騒の中を連れ立って歩きつつ、人混みの間をするりと同じ動きで抜けていく二人の会話は、当然阻害される事なく互いに届く。
「とりあえず宿決めねぇとなぁ……」
「私が泊まってる所はどうかしら?」
「……もう予想出来てんだが、一応聞く。一泊幾らだ?」
「そうね……確か、宿泊客共有のお風呂と食事が付いて一泊九〇〇〇Cだったかしら?」
頬に右手の人差し指を当て、思い出す様に視線を宙へと投げたまま答えてみせるルクセリアに、コウキはあからさまに肩を落としため息。
自らの隣で歩く深海の様な豊かで深い色の髪を持つルクセリアとの感覚の違いを、呆れと言う感情で表現して見せる様にルクセリアに視線を送るコウキは何も悪くはない。
だからと言ってコウキの隣で静かに青の髪を揺らし、人混みの中を風で舞い散る花弁の様にするりと避けて歩くルクセリアが悪いわけでもない。
強いて言うならば幼少の頃から続く金銭感覚の違いとでも言えばいいかもしれない。
女性と言う括りで見れば高い身長に、細くもしなやかで長い手足を持ち、くびれた腰つきが妖しく動き、歩く度にたゆんと揺れる胸元が男性の目を釘付けにする。美人である事を前提としたシャープな輪郭を持ち、切れ長で猫の様な金色の瞳が突き刺されば、異性はその瞳に意識を吸い込まれるか心を射抜かれるしかない。深海を彷彿とさせる深い青の髪は、誰にも侵される事のない静かな領域の様に妖しく輝き、ゆらりと揺れる様は妖艶ささえ感じる。髪と同じ色の眉は細くも尻上がりの美しい形の眉を形成しており、その下で金色に輝く瞳の魅力に劣ってはいない。スッと筋の通った形のいい鼻に女性である事を意識させる小さめの唇。全体を構成する肌は青い肌であり、その色と艶が普通にしていても妖艶さを押し出す要因になっている。
明らかに美女と言ってもいい彼女の横長で尖った耳が僅かに揺れ動き、ふわっと小さく控えめに羽ばたいてみせる黒く大きな翼。その二つが意図する所は、コウキの反応に対しての不思議さを主張しているのは明らかであり、そう言った彼女の反応は美しさの中にある愛嬌と言ってもいい。
そんな彼女の総評は、整った容姿を持ち、実力も極めて高く、静かな性格だが主張が弱いわけでもなく、決して悪い性格ではない。むしろ人格者とも言えるだろう。
こうして一見してみれば完璧な彼女であるが、金銭感覚という点においては完璧と言えるか微妙なラインである事がここで浮き彫りになった。
コウキの実力を鑑みて、将来の稼ぎがどれほどになるか、それを彼女は確信とも言えるレベルで理解しているのだろう。
だからこそ自分が宿泊する宿を選択肢として出したのだが、金が必要なのは今であり、武器の制作費用、旅の支度金、支度金を稼ぐまでの宿代、そして極めつけは傭兵と言う職業の中でコウキはまだ新人。
それらの事実がすっぽ抜けてしまっているのか、現状としてはそこまで余裕がないコウキを自分と同等に稼げる傭兵として見てしまっている。
つまりルクセリアという女性は、傭兵になってからも稼げなかった時がないのだろう。
だからこそ、現状で見れば余裕はあまりないコウキの事が理解出来ないのだ。
加えて彼女は出る所に出れば、お嬢様と呼ばれて然るべき女性であり、そこへ出れば正しく彼女の金銭感覚はおかしなものではなく、完璧と言えるかもしれない。
しかし、今その金銭感覚はコウキの現状を考えた場合欠点として挙げられるべき所である。
「ここでの稼ぎを基準にして考えたら圧倒的に金が足りねぇっつの」
「そうかしら? 十日止まるとしても九〇〇〇〇Cよ? 問題ないんじゃないかしら」
「オメェは貯蓄があるからいいけどな、俺はほぼ無一文から旅支度まで整えてカタナも打ってもらう。ぜんっぜん足りねぇわ」
「そう考えれば確かにそうかもしれないわね……お金になりそうな魔獣ってこの辺り中々いないものね」
「そーいうこった。つーわけで、もっと安い宿ねぇか?」
「私はここに来た時はいつも同じ宿なのよ。だから宿屋に関してはそこしか知らないわ」
暗にそれ以外ならばそこそこの情報は持っていると言っているルクセリアだが、そこは彼女の職業が傭兵である事を考えれば当然の事。
傭兵にとって大事なのは命を預ける事になる武器と防具。美味い食事。そして情報だ。
それらの物を確実に、そして高い信頼を持って手に入れられる場所を知っておく事は、一流の傭兵になるには必須と言ってもいい。
逆に言えばそれらがしっかりと分かっていれば、一流の傭兵になる土台は整っていると言える故、宿屋を把握していなくとも問題はない。
出費を気にする傭兵ならばその辺りもしっかりとしておかなければならないだろうが、ルクセリアと言う女性に限ればそこは気にする必要がない。
面倒臭気に後頭部を軽く掻くコウキの様子に、困った様に眉根を寄せたルクセリアの小さな言葉が妥協案を弾き出す。
「そうね……だったらまたギルドに行けばいいと思うわ。あそこはそう言った情報も集まる場所よ」
「なら登録ついでに聞いてくればよかったな……まぁ、言っても仕方ねぇ。二度手間になるが行ってみるか」
ルクセリアの出した提案に、コウキはため息を吐きつつも頷いてみせる。
ごつっと重い足音を響かせて向かう先は、先程行ったばかりの傭兵ギルド。
傭兵登録と素材買取の一件でギルドに嵐を撒き散らした人物が、間を置かずにギルドへ足を運んでいる事実など、ギルドにいる誰もが予想し得ない事だった……。
「え、えっとぉ……ど、どうかしましたですか?」
明らかに動揺した声をコウキとルクセリアに向けている人物は、傭兵ギルド王都ローデンハルト支部に所属する人気受付嬢。メルファティナの声であり、その声から察するに現在彼女は混乱の中心にいる。
今日傭兵登録を済ませた傭兵の中に、異彩を放ちすぎる功績を手土産に華々しく傭兵としてのスタートを切った人物が居り、その受付を担当したメルファティナはその人物の対応と、その周りにいる人物の圧倒的な存在感に気疲れを起こしてカウンターに突っ伏していた。
ベテラン中のベテランであり、超一流の傭兵であるルクセリア・ケッフェンヘルト。
王都ローデンハルトに住む者ならば、誰しも憧れと羨望を寄せる魔法騎士団期待の新人、ミーシャ。
そして、何よりメルファティナを気疲れさせた原因である新人の傭兵、コウキ。
既に功績を幾つも積み重ねている者と、確固たる地位と権力をその実力で勝ち取った天才。そして、これからどれほどの功績を上げるのか、想像もつかない程に超ド級の新人。
いつもメルファティナが捌いている人数の半分にすら満たない三人とは言え、その三人に使う精神力はただでは済まない。
何せその三人に粗相があれば、傭兵ギルドにとってとてつもない損失となるのは明らかな事だからだ。
そんな気疲れの原因とも言える三人の内、最もメルファティナの精神を削り取った男の声が、カウンターに突っ伏しているメルファティナの上から降ってきたのは、つい先程の事。
声に反応して、ひんやりとしたカウンターにくっつけていた額をのっそりと持ち上げ、自慢の赤い尻尾をくにゃりとくねらせつつ深い深い青の瞳が捉えたのは、うっすらと笑みを浮かべて小さく右手を掲げてカウンターの前に立つコウキだった。
にっと薄く笑みを浮かべ、よう、と低くも軽い声を紡ぐコウキに、ようやく現実に帰ってきたメルファティナが視線を巡らせた時には、不自然なまでに忙しそうに体を動かすギルド職員の姿があり、確かにこの状況であればコウキ達がメルファティナに声を掛けるのは致し方ない。
ある者は一心不乱に会計書類に数字を記入し、ある者はあからさまに大きな荷物を幾つもギルドの倉庫へ運搬を繰り返し、ある者は依頼書が貼り付けてある掲示板に張り付き、無意味なまでに依頼書の整理を敢行。
「えーっと、今月の予算がこれで、資産運用の見通し表が……あ、あったあった」
「おっく! これおっも! おーい、タイルーちょっと手伝ってくれ」
「りょーかい、今行く」
「えー、この依頼書がこっちで、ここにこの依頼書……もう、今月の整理担当誰よ? ちゃんと大まかな難易度分けくらいしてよねーったく」
「会議室空いてるー?」
「いや、まだだな、この前の傭兵の任務失敗での補填費用の会議続行中だ」
「はい、依頼手続きですね? 記録板の提示をお願い致します……はい、結構ですよ。この依頼についてですが……」
どこもかしこもやたらと仕事をしていると言うアピールなのか、無駄に張り切った声を上げて自らの業務に打ち込んでいる。
当然そんなキビキビと働くギルド職員など、ここ数年では見たことがない。
唐突に飛び込んできた国家間での大きな緊急依頼をこなす時と同じ程に、職員の動きにキレがある。
恐らくこの調子で今日一日仕事を終えれば、これから二週間分は仕事が滞る事なく回せる上に、溜まった有給を使い込めるほどの余裕が出来上がるだろう。
そう思わせる程に全ての業務がテキパキとこなされる。
無論これは、ここの職員が傭兵ギルドとは思えない程に真面目且つ有能な職員が集まっているから、と言う訳ではない。
原因は……。
「み、皆裏切ったですね……普段はそんな仕事しないじゃないですか。素敵な職場過ぎて涙が出そうです」
「ん? どした?」
「い、いえいえです!」
つまりそういう訳であり、引きつった笑みを浮かべたメルファティナが、状況を把握してコウキに要件を聞いたのが現在の状況である。
いつもならば、終業までメルファティナが座っているカウンターの前には人だかりが形成されているのが普通なのだが、その人だかりが形成されていない原因は勿論コウキとルクセリア。
笑みを浮かべるコウキの後ろで、じっと金色の瞳を向けてくるルクセリアに、メルファティナの全身が緊張するが、目の前に立っているコウキがカウンターに肘をついた事により、緊張していた体が弛緩する。
超一流のカリスマ傭兵の視線は、いくら有能なギルド職員だと言っても緊張するものらしい。
「いやー、二度手間になっちまってわりぃんだけどよ。ちょっと聞きたい事が出来ちまってな」
困った様に笑みを浮かべるコウキの顔に、メルファティナの緊張が解され、自然と笑みが浮かぶ。
にっこりと笑みを浮かべたメルファティナは、何です? と小さく小首を傾げてみせる。が、それに答えたのは目の前で困ったような笑みを浮かべるコウキではなく、その後ろに立つルクセリア。
豊かな胸を下から支えるように腕を組んだルクセリアは、コウキを見つつ呆れた様に笑みを浮かべる。
「この辺りの宿で安い宿がないか聞きに来たのよ。ここはそう言う情報がよく集まるでしょう?」
「わりぃな、こいつをアテにしてたんだが、思いの外何も知らなくてな」
「あら? それって嫌味? それとも失礼を承知で言ってるのかしら?」
「そうだな……案外と世間知らずだと思ったって事だな」
「それって貴方も似たようなものじゃない」
ルクセリアの言葉に、違いねぇな! と笑ってみせるコウキの様子を見れば、ルクセリアとはそれなりに仲がいいのは明白である。
超がつくほどに一流の傭兵であり、実家も世界で有数の名家であるルクセリアに、何の物怖じもせずに発言してみせるコウキは、メルファティナの目には新鮮に映る。
良くも悪くも傭兵と言う職業は、人間関係全てとまでは言わないがその大部分は実力で決まる部分が大きい。
厳しい言い方をしてしまえば、弱者は弱者で群れ、強者は強者とつるむ。特に駆け出しの新人傭兵にはその傾向がよく出ている。
集まりが大きくなり、団と呼ばれるほどに大きくなれば話は別だが、駆け出しの新人の頃は、強者と組めずあぶれた者が群れをなす。つまり弱者が弱者と組むと言うのはそう言う事。
駆け出しの弱者である新人が、強者、それも超一流のベテラン傭兵と組める事等殆どない。
ほぼ全てが自己責任の傭兵と言う社会は、明確なまでに弱者と強者が区別されており、厳しい社会構造となっている。
弱者と強者では、強さは勿論の事として、モチベーションの持ち方、価値観、金の使い方に至るまで、何から何まで違いすぎる事が多く、弱者はどうあがいても強者には着いてはいけない上に、命が掛かった状況で弱者の面倒を見る奇特な強者など滅多にいない。
そんな厳しい世界の中で、メルファティナの目の前にいるコウキと言う男は、超一流のベテランであるルクセリアと行動を共にし、仲も悪いとは思えない。
その事実だけで傭兵ギルドがコウキという男に注目すると同時に、トラブルの目として警戒するのも当然の事。突出した強者は、本人の望む望まずに拘わらず事件やトラブルを呼び寄せるものだ。
英雄気質とでも言えるそれは、しかして逆に見れば功績を上げる機会がいくつもあるとも取れる。
カウンターに左肘をついたままに、半身だけルクセリアに振り返って苦笑を浮かべたまま軽口を叩くコウキは、その時点で十分に強者としての資質を持ち合わせている。
超一流の強者に認められる者もまた強者だ。
「えっと、それで……安い宿、です?」
「おぉ、それそれ、どっかねぇか?」
メルファティナの小さな問いかけを逃す事なく、へらっと浮かべた笑みをメルファティナに向けるコウキ。
鋭く輝く黒の瞳が、力のないへらっとした笑みを浮かべる様は、違和感すら感じる。
軽い調子で小さく身振り手振りも加えながら困ったとメルファティナに言葉を紡ぐコウキは、下心こそ見受けられないものの、傭兵とは思えない程に普通の雰囲気。良い言い方をすれば、それなりに親しみやすい空気を纏っていると言える。
そんなコウキの調子に、またしても何やら有り得ない事をやらかしたのではと身構えていたメルファティナの体から力が抜け、くすりと小さく口元に手を当てて笑みを浮かべる。
「分かりましたです。少々お待ちくださいですよ」
「おぅ、わりぃな」
「いえいえ、です」
「良かったわね。受付の子が可愛くて融通が利く子で」
「全くだな。可愛くて有能。言うことねぇな」
「からかわれてる事に気付いて。お願いだから」
「気付いてるに決まってんだろ。そこで過剰に反応したらそれこそ思うツボじゃねぇか」
「あ、あの、さらりと被害を被ってる私はどうすればいいです?」
からかいを込めたルクセリアの言葉を軽く流すコウキだが、その被害はどうやら別の所に飛んでいた様で、手に持った書類、王都にある宿泊施設のリストに視線を落としつつも、頬を赤く染めているメルファティナから小さく声が上がる。
心なしか肩も小さく縮めているようにも見える彼女から上がってきたのは、まさに虫の鳴く様なと言ってもいい程に小さく掻き消えそうな声。
どうやら恥ずかしいらしい。
可愛らしい女性としての反応を見せるメルファティナに、コウキとルクセリアは少しばかり瞳を見開き、視線で会話する様に顔を見合わせる。
羞恥を感じつつも有能な彼女は、リストの上を滑る様に流れる深い深い青の瞳の動きを止める事はない。
「意外ね。言われ慣れてるだろうし、さらりと流せるものだと思ってたのだけれど」
「実際男の傭兵共は軽く流されてたしな……」
「あ、やっ、その……い、いいじゃないですか! そんな事は! それより宿屋です! 三件ほど候補があるです! ッ~~~~!?」
「お、おぉ? おう……」
顔を見合わせて互いに首を捻るルクセリアとコウキに対し、誤魔化す様に声を張り上げるメルファティが、リストから候補の宿屋を書き出した紙を勢いよくカウンターへ叩きつける。
重い木が勢いよく叩かれる大きく乾いた音が響き渡り、その原因であるメルファティナは叩きつけた瞬間顔色が真っ赤に染まり、椅子から転げ落ちる勢いでしゃがみこんで自らの右手を左手で庇う様にして声を押し殺す。
声にならない悲鳴を人前で躊躇なく漏らす辺り、相当に痛かった事が伺える。
無論、コウキとルクセリアからすれば何やらメルファティナが一人で楽しそうに遊んでいるとしか思えず、呆れと少しの驚きを含んだコウキから声が上がる。
その後ろには呆れた様にため息を吐き、胸の下で組んだ右手を持ち上げ、額を掌で覆う様に全身で今の感情を表しているルクセリア。
ため息にもならない小さな息を鼻からフッと吐き出すコウキは、同時に力の入っていない鋭い瞳をリストへと落とす。
へぇ……と静かな感嘆の声を上げるコウキの瞳には、簡潔且つ必要な情報がリストアップされた文字が目に入っている。
ギルド裏の東路地 マトワテリー 風呂なし 食事二食 酒なし 一泊一二〇〇C
ギルド南西の西側路地三本目 コトラ 風呂なし 食事一食 酒あり 一泊一〇〇〇C
ギルド北西の西側路地二本目 トルテ 風呂なし 食事二食 酒あり 一泊一四〇〇C
簡潔にそれだけが記されており、正しくコウキの求める情報だけがそこにある。
感心した様にコウキが鋭い輝きを再び宿した黒の瞳をメルファティナへと向ける頃には、ようやく手の痛みが引いてきたのか、小さく息を吐きつつ椅子に座りなおして赤毛のひょろりとした尻尾をぴょこりと跳ねさせる彼女の姿。
どうにも締まらない光景ではあるが、確かに彼女は優秀なのである。
「どうするの? 安さだけならコトラと言う宿がいいのは明白だけれど……」
「そーなんだけどよ、ちと遠いな」
「まぁ、そうなるわよね……」
「そこは仕方ないと思いますです。それも考慮しての値段だと店主のおじさんも言ってたです」
リストアップされた宿屋の情報を眺めるコウキとルクセリアに、メルファティナもその理由を簡潔に言い渡す。
ギルドがある王都では、宿泊施設の値段を決める基準として、まず宿泊施設内の設備とサービス内容から入り、傭兵ギルドや城までの距離を考えて、宿泊値段が算出される。
風呂に入れる宿屋は何処も軒並み高い値段で揃っているのが常識であり、風呂がないだけで値段がガタリと落ちる。
基本的には風呂は贅沢品、嗜好品としてのイメージが未だに根強い。
時折この世界にやってくる異世界人が根付かせた文化として、そこそこの歴史を誇るのだが、まだ一般的に広まる程に整備されていないのが現状であり、その原因として風呂には特殊な魔法道具……もっと言えば、細かく条件付けされた魔結晶が必要と言うものが理由として挙げられる。
そして、魔結晶は魔族にのみ作成可能な物である事は世界の常識。
その魔結晶も魔族が行使する魔法の過程で出来た産物であり、それを生活に利用する事を思いついたのは異世界人だと言われている。
結局、リストをじっと眺めていたコウキは、決めかねたのか記載されている綺麗な文字から視線を上げて、メルファティナへと鋭く輝く黒の瞳を向ける。
黒い輝きに射竦められたメルファティナは、ぴくりと全身を僅かに緊張させ、それに連動する様に赤い尻尾がぴょこ、ぴょこんと小さく跳ね上がる。
「他の店の店主はどんな感じだ? いい感じの店主か?」
「えっとです……確か、トルテの店主はおばさんです。恰幅のいいお母さんみたいなおばさんで、面倒見はいいです」
「他の従業員は?」
「確か、女性が二人と厨房担当の男性が一人いるです。店主のおばさんは厨房兼任です。旦那さんはいるですけど基本傭兵で出稼ぎだと聞いたです」
ふぅん……と静かに声を上げるコウキだが、右手で軽く顎をさすり、瞳の動きでもってメルファティナに続きを促し、それを察したメルファティナも小さい口を止める事はない。
「マトワテリーの店主は確かハゲのおっちゃんです」
「身も蓋もねぇな」
「事実です」
そう言ってにっこりと笑うメルファティナの笑顔には、悪気が微塵も感じられないが、それ故に彼女が天然でこんな発言をしているとはどうしても思えない。
ただ単に彼女が負の感情を表に漏らさない事に長けているのだろう。
基本的には人当たりがよく、可愛らしいと言ってもいいメルファティナだが、純粋無垢と言う訳でもない。
純粋さで言えば先程別れたミーシャの方がよほど純粋な女性である。
メルファティナと言う女性は、良くも悪くも王都に住まう人間だと言う事だ。
「嫌いなのか? その店主」
「んー、そうですねぇ……個人的にはです」
「なるほどな……じゃ、マトワテリーは外すか」
「あら? いいの? 男性にとってはいい店主かもしれないわよ?」
「性別限定する時点で下品だろ」
「ご尤も」
そう言って上品にくすくすと笑みを漏らすルクセリアだが、会話内容は全くもって上品ではない。
とは言え傭兵にとってこの手の会話は男も女も関係なく嗜みの様なものだ。酒と食事、そして異性の話題は傭兵にとって当たり前に交わされて一番盛り上がる会話だ。
しかし、コウキにとって今重要なのは傭兵として活動し、世界を旅する事であり、女性に関しては関心が薄い……とまではいかないが、二の次である事は確実。
そんなコウキにとって下品な話題を好み、女性が好きな店主など煩わしいだけで何の得もありはしない。
正しくそれを理解しているルクセリアにとっても、ただのじゃれ合いの様なものであると認識している。
軽い調子で冗談を言い、それを受け流す二人を、深い深い青の瞳でぼけっと見つめるメルファティナだが、ただぼけっと見詰めている訳ではない。
未だメルファティナにとってコウキと言う男性は、その人となりをよく掴めていない。
つまりは、まだまだ観察対象であり、コウキがこのギルドを拠点に暫く活動を続けるならば、その性格や実力を把握しておかなければならない。
「個人的なおすすめは……トルテです」
「ほぉ? またなんでだ?」
「店主のおばさんが出来た人なので、宿泊客の管理もきっちりしてるです。後、トルテはここからだとちょっと遠いですけど、周りに日用品なんかのお店が沢山あるです」
「なるほどな、確かにそりゃ便利だ。もうそこでいいか」
「案外とあっさり決めるのね?」
切れ長の猫の瞳の様な金色の目が言葉と共にコウキを捉えるが、コウキは何も含む所はないとばかりに方を竦めて見せ、ルクセリアに半身で振り返りながらも横目でメルファティナを見据える。
黒く輝く鋭い瞳に捉えられたメルファティナは、既に緊張を感じる事はないのか、不思議そうに小さく首を傾げてみせる。
その際に連動している様に赤く長い尻尾もぴょこりと動く。こう言った小さな動きも、彼女が持つ魅力の一つだ。
「旅の支度金稼ぎも重要だが、消耗品なんかをすぐに補充出来るのも確かに重要だ。それに、可愛くて有能な職員おすすめだしな?」
「ふぅん……確かにそうね。可愛くて有能な職員おすすめのお店なら言う事はないかしらね?」
うっすらと笑みを浮かべて意味深なまでに言葉を強調してみせるコウキの意図を汲んだのか、ルクセリアも笑みを浮かべて言葉を重ね、視線をメルファティナへと向ける。
二人の視線と言葉が集中したメルファティナは、ぽんっと音がしそうな程に頬を赤らめて見せ、落ち着きをなくした様に目の前にあるいくつかの書類をかさかさと無意味に集め、無駄にカウンターの上で仕分け。
ぴょこぴょこと幾度も跳ねる赤い尻尾が、今の彼女が感じている感情を如実に表しているが、数秒で書類の仕分けが済んだ時には幾分か落ち着いたのか、わざとらしく、こほん、と小さく咳払い。
落ち着いたとは言え、未だに頬は薄く色付いているが、それでも言葉を紡げる程には回復しているらしい。
「じょ、冗談はともかく、宿屋は決まったです!」
「そーだな。可愛くて有能な職員のお陰だ」
「そ、それはもういいです! さっさと行ってくださいです!」
「怒られちゃったわね?」
「おう、これ以上怒られる前にさっさと退散するか」
赤い尻尾をぶんぶんと振りたくり、恥ずかしさを誤魔化してみせるメルファティナの様子に、くすくす、くっくと小さく笑い声を上げるコウキとルクセリアは、メルファティナに掌を掲げてみせる。
別れの軽い挨拶を送る二人に、もう……と小さく吐息を吐くメルファティナも、結局小さく笑みを浮かべて手を振り返す。
そして、二人がギルドを後にすると、メルファティナはまたしても冷たいカウンターに額を落とし、赤い尻尾をへにゃりと力なくカウンターの上に垂らす事になるのだった。
ギルドが存在する表通りから西に二本を数えた路地。そこを城側へ歩いていくと、トルテと言う宿屋がある。
安く、飯が美味く、店主や従業員の愛想もよい。新人の傭兵だけでなく、そこそこの経験年数がある傭兵でもよく使う宿屋として人気の宿屋だ。
外観もそう悪いものではなく、トバリ石の外壁に、各部屋があると見られる二階には外開きの木とガラスで構成された窓がいくつか――恐らく部屋分だろう――存在する。
ガラスと言うのはそれなりに高級品であり、この世界での主流は基本的に、木製の外開き窓が一般的である。
しかし、このトルテは高い事で知られるガラスを惜しみなく使い、宿泊客が泊まっている部屋に陽光を多く取り込み、見栄えをよくする努力を怠ってはいない。
その窓から見える景色は、窓を開かずともよく見る事が出来、宿泊客の評判も高い。
そんな宿の前にいるのは、黒い髪に鋭く光る黒の瞳が印象的な黒づくめの男。コウキ。
彼の鋭く輝く瞳は、目の前にある宿屋を見上げ、トルテと書かれた小さな吊り看板を認めると、小さく何度か頷き、ここが目的地である事を認識。
先程まで一緒に歩いていた、大きく黒い翼と尖った横長の耳を持った、青肌に深い青の髪が特徴的な魔族の美女。ルクセリアの姿が見えないが、彼女とは途中で別れている。
コウキは宿を取りに、ルクセリアは宿に荷物を置きにと二手に別れ、準備が終わり次第ルクセリアが武器屋へ案内してくれるらしく、後で傭兵ギルド前に集合と言う言葉を残し、青く豊かな髪を翻して去っていった。
一人になったのをいい事に、揺れる深い青の髪を追いかけて、ふらふらと何人か男性がその後ろについていく光景が見えたが、問題ないと判断したコウキは躊躇なく宿屋へ足を向けたのだ。
「ふぅん……中々良さそうな雰囲気があるな」
「おや、それは嬉しいこったねぇ」
「お? あんたがこの宿の店主かい?」
宿の前で小さくコウキが呟くと同時に、宿屋の入口が開き、そこから言葉と共に人の姿。
如何にも人当たりの良さそうなハッキリとした声と共に出てきたのは、恰幅のいい近所のおばさんと言っても良さそうな雰囲気の女性。
食堂としても開放しているのか、その手には何かのメニューが書かれたついたてが持たれており、コウキの言葉に応えつつも、宿屋の入口前にそのついたてを静かに下ろす。
癖のある髪をカチューシャと呼ばれるものでしっかりと留めている女性は、確かに宿屋を経営するには相応しい服装。
無駄に髪が落ない様にとカチューシャをし、あまりの質が良くない生地で出来たワンピースタイプの服。おそらく汚れてもいい様にと言う配慮だろう。その上からは白いエプロンをしており、正しく宿屋のおばちゃんと言うイメージそのままだ。とは言っても、宿屋を経営する人間の格好など、そう大きな差はないだろうが……。
コウキの軽い問いかけに、そうさね、とからっとした笑みを浮かべ、両手を腰に当てて答えてみせる女性は、確かに気前も良さそうで交流も取りやすい雰囲気を持っている。
接客という職業は、恐らく彼女にとってはとても合った仕事なのだろう。そう想像するのは、接客と言うものをした事がないコウキにも簡単に想像出来る。
「あんた、傭兵かい?」
「あぁ」
「だったらウチに泊まっていかないかい?」
「元々そのつもりで来た。傭兵ギルドのメルファティナがオススメする宿屋みたいだったからな」
かちゃり、とベルトに吊り下げたカタナの柄に手を軽く置きつつ、世間話でもするように答えたコウキの言葉に、恰幅の良いおばちゃんの勢いがありつつも穏やかな輝きを宿す瞳が少し見開かれる。
「へぇ~……メルちゃんがここをねぇ~、あんたやるじゃないか」
「うん? 何が?」
「メルちゃんに付き纏う傭兵は皆自分の話ばっかでね。どんな仕事をこなしたどんな魔獣を倒した。とにかく自分の功績を誇る奴が多いのさ」
「別に間違っちゃいねぇと思うが? 傭兵にとっちゃ功績ってのは重要だろ?」
コウキの身も蓋もない言葉に、女性は苦笑を浮かべて肩を竦めてみせる。
すぅっと息を吸うと、はぁっと大きくため息を吐く姿は、メルファティナに付き纏う傭兵達とやらに呆れを感じていると確信させるには容易い姿だ。
「まぁ、そうなんだけどねぇ。女を口説くのに自分の功績なんて必要かい?」
「傭兵としちゃあ全くないのも困りもんだと思うがな。確かに必ず必要か? と聞かれれば、別に? と答えるかもしれねぇな」
「だろう? つまりそういう事さ。あいつらはメルちゃんと会話を楽しもうとしてないのさ。自分の功績を押し付けて賞賛を貰いたいだけ」
子供かい、全く……と言葉と共にまたしてもため息を吐く彼女は、メルファティナに同情しているのか、傭兵ギルドのある方向へ、可哀想にと言わんばかりの視線を投げる。
そして、目の前で、そんなもんか……とゆったりと腕を組んでいたコウキに、関心の感情を宿して、よくやったと言わんばかりの視線を寄越す。
「メルちゃんがここを自発的に教える事なんてないから、あんたが聞いたんだろ?」
「まぁ、そうだが。俺は新人だからな。誇る功績がねぇだけだ。ここには着いたばっかでいい宿屋とか知らねぇしな」
「あっはっは! そうかい! そうだとしてもメルちゃんにとっては久しぶりの傭兵との普通の会話に入るのさ! あの子も嬉しかっただろうよ!」
大きく快活な笑い声を上げてみせる女性に、コウキは苦笑と共に肩を竦めてみせる。
その態度を謙遜と取ったのかはわからないが、よくやったとコウキの肩を叩く女性の機嫌は鰻上りだ。
メルファティナの話題で、まるで自分の事の様に良かったと笑う女性は普段からメルファティナとの交流があるのだろう。
自らの娘の事を喜ぶ様にコウキを褒めている。
「私ゃベスタってんだ。メルちゃんの心を射止めそうなあんたの名前は何だい?」
「射止めるかどうかは知らんが、新米傭兵って事は確かなコウキだ」
「そうかいそうかい。あの子をよろしく頼むよ! コウキ!」
ばしばしと機嫌良さ気に肩を叩いてくるベスタに対し、肩を竦める事で答えてみせるコウキ。
頼むと言われてもあからさまではないコウキの自然体な態度が気に入ったのかは知らないが、宿屋のドアを開けつつ、入んな! と声を張るベスタの機嫌はやはりかなり良い様だ。
足取りや全体の雰囲気から、どう見ても機嫌がいいベスタの後ろに着いて、宿屋の入口を潜ると見えたのは比較的広めの空間。
木造なのは普通と変わらないが、広く作られた一室の奥にカウンターが存在し、その右側には椅子やテーブルがいくつか置かれたスペースがある。
恐らく談話か何かに使われるスペースだろう。食堂や酒を飲む場所としては狭すぎる。
左側には壁に一つだけある扉と二階へと続く階段が存在し、壁の向こうからは話し声や笑い声が聞こえてくる事から考えて、食堂兼酒場となっているのだろう。
一階がそう言った作りになっている事から考えて、宿泊に使う部屋は二階のみ。しかして十分なスペースが存在する一階を思えば、宿泊部屋が二階のみだとしても十分な部屋数がある事が予想出来る。
扉を潜ったコウキは、天井の高さや受付を行い談話を行うスペースまで存在する一階の一室の広さを、鋭く輝く黒の瞳で確かめる様にぐるりと見渡す。
天井にいくつか吊るされたランタンの様な物の中には光源が入っており、恐らくそれは光源として利用される事を目的として条件付けされた魔結晶が放り込まれている。
「鍵渡すからこっち来な」
「あぁ、取り敢えず十日分頼む」
「はいよ、一四〇〇〇Cだね。まぁ、メルちゃんの紹介だし、一二〇〇〇Cでいいよ」
「おいおい、いいのか? それ」
「いいんだよ! 今までメルちゃんにここを教えられて来た奴なんていなんだ。これは私からの期待を投資したと思っときな」
そう言ってにっと笑ってみせるベスタは、女性であるが男前な女性なのは間違いない。
あまりにも男らしいベスタの言葉と笑みに、コウキもコウキでにっと笑みで応えてみせる。
「ま、期待に応えられるかわからんが、そういう事ならありがたく受け取っとくぜ」
「いいねいいね。無駄に遠慮されるより全然いい対応さね! 頑張っておくれよ? 私ゃ野暮な事するのは嫌いだからね。あんたに頑張ってもらうしかないのさ」
「本人のいない所で発破かけるのは野暮じゃねぇのか? あと、既に他の奴から結婚してくれって言われてんだよ」
「おや、そうなのかい? でもあんた傭兵だろ? 女の一人や二人や三人や四人食わせられる甲斐性がないとね! それにこれは私が勝手に期待かけてるだけだからね。野暮な事じゃないさ。言うなればそうだねぇ……近所のおばちゃんが、あんたになら任せてもいいよ! って冗談で言ってるのと同じさ」
そう言って、あっはっは! と笑ってみせるベスタに、コウキは肩を竦めつつもベルトに括りつけてある道具袋の口を開き、金粒一つと銀粒を二つ取り出し、カウンターへ。
世界を形取ったと言われている紋章が刻み込まれた金属、サイコロより少し大きな形をした粒をカウンターへ落とす。
――キンッ。
明らかに木製のカウンターに落とされたとは思えない音がカウンターから上がる。
金属音としか思えないその音に、思わずコウキはカウンターに張り付くようにして姿勢を取り、その鋭く輝く黒い瞳を皿のようにしてカウンターを睨みつける。
よくよく見れば、木と同じ色をしながらも光源を確かに反射するカウンターを見た瞬間、コウキの視線はカウンターの向こう側にいるベスタへと向けられる。
そこでベスタは更に嬉しそうな雰囲気と共に笑みを深める。
「これ、まさか木石か?」
「おや、よく知ってるね……そう、ここだけは木石で作ったのさ宿屋の顔のような所だからね」
「本で読んだ事があるだけで実際見た事はなかったが……初めて見たぜ。すげぇな」
木石とは、ここアガルタ大陸から海を挟んで南東に存在するミンセミシア大陸の職人大国と呼ばれるマグナリアにある鉱山でしか採れない鉱石の一つ。
アガルタ大陸で手に入れようと思えば、マグナリアで採れた木石が物流大国であるピセルに流れ着いた所を買い付けるしか方法が存在しない。
手に入れる事が難しいのだが、それを加工した家具や食器などが、もしアガルタ大陸で出回れば、間違いなくすぐさま無くなってしまうであろう程にいいものが出来上がる。
木と同じ程に軽く、木よりも丈夫で、しかして木と同じような色の鉱石なので、木石と名前が付いた。
その素材を使った商品や家具は、アガルタ大陸には出回っておらず、木石自体もそんなに数が採れる訳ではないため、消費は基本的にマグナリア国内だけで終わってしまう場合が多い。流通しても、ミンセミシア大陸内から出る事は殆どないだろう。
故にこの大陸では木石の存在を知らない者も多く、傭兵となってマグナリアへ行って、初めてその存在を知る場合がお決まりの流れだ。
そして、木石の存在を知った傭兵が考えるのは、木石を使った武器作成だが、それは実現する事がない。
それは何故か? ただ単純に強度が足りないのだ。木よりも丈夫な鉱石とは言え、武器に使われる鉱石と比べればその強度は低く、脆いとさえ言える。
加えて、木石程の軽さの鉱石で武器を作れば、軽すぎて上手く武器へ体重を乗せる事が出来ず、結局武器として欠陥を抱える事になるのだ。
物珍し気にカウンターの手触りを確認しつつ、宿泊手続きの書類に必要事項を書き留めるコウキに対して、ベスタは笑い声を堪えつつも関心の声を上げる。
「しかしあんた、駆け出しの割に木石を知ってるなんて、大したもんさね。今までここに来た傭兵でもこのカウンターに食いついたのはあんたが初めてさ」
「たまたま本で読んでていつかは見たいと思ってたが……まさかこんなに早く目にする事が出来るなんてな。いいもの見せてもらった」
「くっくっく。どういたしまして」
珍しく高揚を引き摺る様に息を吐きつつ、コウキは記入を終えた書類をベスタに渡し、ベスタは笑い声を上げつつも受け取った書類をカウンターの後ろにある棚へと仕舞い込む。
そのまま棚の左側に設置されている金庫の様な扉付きの棚をガサゴソと漁り、そして出てきたのは一つの鍵。
金属製の鍵に付けられているのは『翠』と掘られた木製のプレート。
部屋番号ではなく、敢えて文字で部屋分けしている辺り、ベスタの趣味が伺える。
鍵を受け取ったコウキの視線は未だに木石で作られたカウンターに釘付けだが、笑い声を漏らしつつ言葉を紡ぐベスタの声に、視線をカウンターから引き剥がす。
そこには想像通り嬉しそうに笑うベスタの顔があった。
「くっく。取り敢えずそうさね。食事は朝と晩が基本さね。昼はどこかで食べてもいいし、食堂でその時にお金を払えば食事も出すよ」
「りょーかいだ」
「どこかに出かける時は鍵を預けてくんな。食事がいらない時はその際言ってくれると助かるねぇ」
「出来るだけ目的はっきりさせて出掛けろって事か」
「そういう事さね。食堂は酒場と兼用だから、酒が飲みたきゃ好きに使いな。勿論その分の代金は貰うよ?」
「あいよ」
「とりあえずこれだけさね。あんた中々面白いから、出来るだけ長く泊まって欲しいもんだねぇ」
「そりゃあ俺の稼ぎ次第だ」
違いないねぇ、と笑うベスタの声を受けて、コウキは踵を返す。
木製の階段を上り、角を曲がるようにして作られた階段を登れば、ずらりと両側にドアが並ぶ廊下へと出る。
その廊下を歩いて上がってきた階段側から数えて左手の三つ目のドアに、翠と書かれたプレートを見つける。
鍵に付いているプレートと見比べてから、差し込み、回す。かちゃりと言う静かな金属音と共に鍵が開かれた事を自覚し、ノブを回して押し開く。
部屋の入り口を潜って見えたのは、ガラスと木材で出来た外開きの窓と、その近くにあるベッドが一つ。木製の机と椅子が一つずつ。
木製のクローゼットが一つベッドの横に配置され、床には部屋の文字と同じく翠のカーペットが敷かれている。
全体的には家具が少なく、その分広めの部屋として感じられ、総評としては中々良い部屋と言えるだろう。
鉄ガメによって若干裾が噛みちぎられた黒の外套を脱ぎ、ベッドへと放り投げると、窓に近寄って一気に開け放つ。バンッ。
「悪くねぇ眺めだな」
人々が生活を営む家屋や店がずらりと目に入り、その間から聞こえてくる喧騒も悪くない。
表通りの賑やかな光景こそ見えないものの、そこから離れて遠くから聞こえる表通りの喧騒と、路地に響き渡る露店等から上がる声を聞くのも、中々に感慨深い物がある。
「さて、と……準備はまぁ、これでいいか」
部屋も確保出来たとすれば、次にやる事は出かける準備ではあるが、外套を脱ぎ捨てただけでその準備は完了。
道具袋には金も入っているため必須。武器も採寸や製造してもらう武器の見本や、破損状況を見てもらう事を考えればあった方がいい。素材として布に包まれた鉄ガメの金属塊は、武器製造のメイン素材であるため、これがないと始まらない。
傭兵が使用するのに耐える長袖の黒いシャツと黒い長ズボン、戦闘用のブーツに、様々なものを吊れるベルト。外套を脱いでもあまり変わらないため、もう一度外套を羽織り直す意味はない。
そう結論づけたのか、ベッドに放り投げられている外套をくるくると丸めて、木製のクローゼットへ無造作に投げ込み、重いブーツが木を叩く音と共に、コウキは部屋を後にする。
目的地はまたしても傭兵ギルド前である。
はいどうも。こんばんわ。あっくすぼんばーであります。
見てくれてる人も、見てくれてない人も、皆に申しあげます。読んでくれてありがとうございます。
さて、今回ですが、残念ながらミーシャちゃんが当面お休みです!
残念ですね……私も……残念ですッ
もっと可愛いミーシャちゃんを書きたかった……でもしばらくお預けです。
さて、今回の見所はどこか? そう、そうですね? 宿屋のおばちゃんこと、ベスタさんです。
予想外にかっこいいおばさんになってしまいました。ベスタさんマジ男前。
しかしモブキャラです^^
よし、一通り物語については触れましたね? よし触れた!
では待ってる人も待ってない人も、お楽しみ雑談コーナです。
私オンゲが大好きでして、とは言っても時間ないのでそんな色んなタイトルやってないですが、今やってるのはPSO2ですね。と言うより、それ以外で面白いゲーム探すのが面倒臭いって言うのと、新しく始めたゲームでキャラを育てる気力がないのが原因で、今はPSO2しかやってないです。
それでですね、最近ようやくPSO2で☆12の武器拾いました。
嬉しいんですけど、出た時はもう動転して今何やってんのかわからないままに、落ち着け、落ち着け私。等と心の中で繰り返していました。
総評:とっても嬉しかったです。
以上! 意味もオチもない雑談でした!
ではでは、今回はこの辺で。
次の話でまたお会いしましょう! あっくすばんばーでした。