最高の変態を目指すもの
「僕は変態になる。それも最高の変態に」
「な、何を言ってるの?」
僕が口にした言葉は彼女には理解できなかったらしい。
彼女は口を半開きにして今僕が言った言葉の意味を理解しようと頭をフル回転させているだろう。
まあ、別に本当にフル回転させているわけではないが・・・。
実際に彼女が頭を回転させていたら僕は彼女のことがもっと好きになっていたであろう。
「だから変態になるんだよ。誰もがドン引きするような。誰もが認める最高の変態に!」
もうすこし呆けた顔の彼女を見ていたかったのだが、彼女の頭がフル回転し続ければきっと彼女自身がショートしてしまうだろう。
だから僕はもう一度言ってあげた、今度はさっきより分かりやすく。
「は?」
・・・どうやら僕の言葉は彼女の心に届かないらしい。彼女の顔はさっきと同じように・・・いや、もっと酷くなっているな。
しかし、こんなに酷い顔になっても可愛らしいというのは流石だな。
彼氏として鼻が高いよ全く!
「え?変態ってなんで?」
やっと僕の声が届いたらしい彼女が疑問の声を上げる。
まあ、そうくるとは思っていたけどね。
「何故、僕が変態になりたいのか」
「ただ暇だからだよ!暇で暇で仕方がないんだ!暇って嫌だよね、何もすることがないつまらない毎日!暇な時間がとても苦痛で仕方がない!誰かが、退屈は最大の罪って言ってたけど、確かにそうだって頷けるよ!僕はこんなにも退屈で苦痛な時間をずっと続けなければいけないのか?そう思ったとき、どうすればいいかを考えたんだ!そのときに出た答えが」
「へ、変態になるってこと…?」
「そう!分かってるじゃないか!変態になること、これがこの退屈で苦痛な時間から抜け出す一番の方法なんじゃないかと思うんだ」
「君はどう思う?」
僕は彼女に聞いた。もしこれで別れを告げられてもすんなり別れるつもりだ。覚悟は出来ている。「だれでもドン引きするような変態」の中には彼女も入っているのだから…
「私はあなたの言っていることがよく分からないし理解もしたくない。でも私にはあなたしかいない…私はあなたに依存してしまっているの。今、そのことに気がついた。離れたくないし離れる気もない。だから、もし、あなたが変態になっても、私はあなたに着いて行くよ」
彼女は僕にそう言った。彼女は僅かに震えていた。予想ができないことが起きて、理解ができなくて怖いのだろう。
僕はそんな彼女も可愛いと思った。
「ほんとうにいいんだね?変態になっても」
最終確認のつもりだった。彼女に選択肢を与えた。
彼女はコクンッと頷いた。
僕は彼女を抱きしめた。これからは退屈しない楽しい毎日が過ごせそうだ。
「僕の変態道はまだ始まったばかりだ!」
僕の腕に包まれている彼女はまだ少し震えていた。
ドゥン引きです