表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Skew World Overture  作者: 本宮愁
I.離島の魔術学園
86/156

第五話(7)

「……――――っはぁ、ハァ、ハァ、は……?」


 荒い息を整えながら、ぼうぜんとつぶやく。

 身体中がじっとりと汗ばんでいて、肌に張り付いた衣服が気持ち悪い。

 どこだ、ここ。いつだ、いま。


「おれ、なに、して」


 鈍く痛む重い頭を片手で抑えながら、上体を起こす。


 寝ていた?

 どこで――いや、部屋。部屋だ。寮の。俺の。


 ここは魔術学園。

 大陸の東南に浮かぶ離島。

 一面のい海に囲まれた、豊かな島。


 無数の色にあふれた、ここが俺の世界(・・・・)


「ああ…………そう、だよな」


 他になにがあるってんだ。

 真白いシーツを握りしめて、シミひとつない天井を仰ぎ、深々と息を吐く。


 ここが、俺の生きてきた場所。

 疑うまでもない。


《なにをしてるの》


 あきれたような、小馬鹿にしたような、どこか尊大な少年の声が、頭の内側に響く。


 ひょうが?

 ――【飆牙】。


 ああそうだ、俺に預けられた【風】の剣。


 部屋の片隅にたたずむ美しい刀剣に視線を流し、頭の片隅に引っかかった記憶をたぐり寄せるようにして、すこしずつ今を理解していく。


 俺はノア=セルケトール。


 魔術学園の先代学長クリス=セルケトールの養子にして、魔術の使えない落第生。


 破天荒な女剣士シュナ=フェブリテに師事した結果、六回生に上がると同時に首席に収まってしまった異端児。


 そして、神剣と称えられる至高の刀剣、【飆牙】の主だ。


 ホントウニ?


「っ……」


 再び襲った鋭い頭痛に、こめかみを抑えてうめく。

 そこに【飆牙】が、キンキンと追い討ちをかけてくる。


《ちょっと、この僕を無視するとか何様のつもり?》


 なんか、お前、うるさくなったなあ。

 柄を握るどころか、触れてさえいないのに。離れた場所からよく喋る。

 最初のころの威厳はどこへ消えたんだ。


《不愉快なこと考えてるね……?》


 いーえ、めっそうもございません。


 ご機嫌斜めの相棒が風を纏いはじめたところで、ベッドから降りて両手を掲げ、早々に降参の合図を送る。備品を切り裂かれちゃたまらない。こんなことで騒ぎを起こしたら、またレナに怒られ――。


 ないか。

 あいつは俺を避けてるんだった。


 適当に着替えた制服の襟を整えて、よれよれのローブを肩にひっかける。黒は良い色だ。薄汚れていてもわからない。問答無用で浄化魔術をかけてくる幼馴染も今はいない。


《ノア》


 関係ない。

 俺は俺の好きにするだけだ。


 いちいち細かなことに目くじら立てられずにすんで、せいせいしている。


《聞いてるの、ノア》


 ピリ、と背中に嫌な鋭さを纏った風を感じて、あわてて【飆牙】を掴む。


 なんだよ。

 俺はいま支度に忙し――。


《死ぬぞ》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ