表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Skew World Overture  作者: 本宮愁
I.離島の魔術学園
7/155

第一話(6)

 足がかりになるような凹凸はまるでない、つるりとした壁面。下から見上げると、垂直にそびえたつ壁は、なかなかの高さがある。


 現在は使われてないとはいえ、もともと浮遊術の使用を前提として作られた倉庫の屋上だ。魔術なしに行き来できる場所じゃない。


 ――俺みたいな、『規格外』を除けば。


 魔術の素養に恵まれなかった代わりに、身体能力には恵まれた。あるもんは有効活用して、悪さもしながら生き延びてきた……けど、まさか若づくりのオッサンから財布スろうとして、防護魔術に弾き飛ばされるなんて思わねーよ。それで特異体質と魔力が一気にバレた。


「なんでそう、あんたって無茶苦茶なの? この高さ、生身で跳び降りるなんてありえない」


 遅れて着地したレナが、降下に使った足場を消しながら言う。予想よりも早い到着に、こいつもこいつで規格外だってことを再認識する。


「って言われてもね。できるもんはしかたないだろ」

「絶対おかしい……っていうか、魔術も使わずにどうやってあんな場所に……」


 納得がいかないと文句を言うレナに、俺は黙って隣の木を見上げた。


 倉庫よりやや背の高い、見事な枝ぶりの大樹。魔術は自然と相性がいいらしく、こんな木は学園のあちこちに生えている。枝を切り落とされることもないから、登りやすくて助かる。


「ありえない……!」


 今度こそ頭を抱えたレナをおいて、さっさと別の場所に移動しようかと思ったときだった。


「――ああ!」

「なんだよ」


 悲壮な叫び声に、渋々足を止めて振りかえる。

 レナは、青ざめた顔で、時を示す砂時計を確認していた。


「次、FDなのに」

「FD?」


『Fighting Dome』は、戦闘用に作られた施設だ。主に上級生の実技演習で使われる、かなり本格的な闘技場。俺ら中級生だと、魔術実技でたまに使うくらいで、そんなに縁のある施設じゃない。


 学園の端に位置していることもあって、俺が近づいたことはほとんどなかった。魔術実技なんて出席したくない授業の筆頭だからな。


 ……しかし、妙だ。


「クソジジイの講義なら、明日じゃなかったか?」

「今日から剣の実技なの! シュナ教官、遅刻者に厳しいって噂なのに。うわあ、どうしよう」


 剣? ああ、そういや上級生になれば剣魔術を扱うから、昇級前に訓練するようなこと言ってたな、たしか――シュナ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ