第四話(3)
「まさか。俺とレナは違う」
「そりゃあ姫とは全然違う形だよ。でも教授陣の意見が割れて学生の意見がまとまるわけないだろ? 立場が変われば見方も変わる。俺らにとっちゃ今更だけど、お前の自由さは眩しいからな」
さっそく行事一個サボってるし、とあきれたように言う。
くだらないものサボってなにが悪い。新入生に興味なんてないし、向こうだってないだろう。
「憧れ、ねえ……」
コウにもそう言われたが、俺の首には錆びた鎖がかけられたままだし、こうして狭苦しい世界に閉じ込められている。どこが自由に見えるんだか。
「あと顔がいい。俺とお前で女子の反応が違う。これまじだからな。まじでずるい」
「……」
それは多分、俺がどうこうという問題ではなく、ウィルの印象が悪すぎるんだろう。
「大体、あの姫を抜いた首席ってだけでセンセーショナルなのに、始業式から騒動続きで、ましてカイル先輩と姫の取り合いだろ? そりゃ一躍時の人になるわけよ」
今も注目集めてるぜ、と肩をすくめるウィル。
だから嫌なんだよ帰りてえ。
ため息をついて視線を流せば、なぜか色めき立つ女子の群れ。なんだあれ。ドレスアップしてるのもあって誰が誰だかわからない。つか、もともと顔も名前も覚えてねーけど。
そのとき、ホワイエの入り口がざわめいた。
「――お、ようやく姫様のお出ましかな」
最初に見えたのは、人の群れの向こうに煌めく金髪と、それを飾る白銀のティアラだった。
艶やかな唇に微笑みを浮かべた彼女が足を進めると、その先に立っていた学生が気後れしたように道を開ける。
やがて二手に分かれた人壁の間を悠々と進む、その足元のハイヒールの色も銀。生花をあしらったストラップが螺旋を描いて細い足首に巻きついている。
赤い絨毯の敷かれた道を、一歩一歩しっかりとした足取りで進む姿は毅然としたもので、青い瞳はまっすぐ前だけに向けられたまま揺るがない。
ドレスは白一色。上半身はシンプルに、一枚布をぐるりと巻いたような光沢のあるワンショルダー。くびれを強調するように結ばれたオーガンジー素材のリボンが背中を飾り、腰元からふわりと広がった下半身は、たっぷりとしたドレープが優雅なシルエットを形作る。
通り過ぎた後に残る男たちは、まとめ上げられた結い髪から肩に伸びるうなじのラインに釘づけだ。いつもよりハイトーンな声で歓談していた女子学生も黙り込み、ほんの一瞬、場が静まり返る。
その貫禄といったら、姫君というよりむしろ。
「……女王様のまちがいだろ」




