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Skew World Overture  作者: 本宮愁
I.離島の魔術学園
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第三話(8)

 机上に頬杖をつきながら、午後の退屈な講義を聞き流していた。


 最後列の端の席からは、ずらりと並んだクラスメイトの後頭部と、せわしなく動き回る羽根ペンが一覧できる。その最前列にはレナの金髪。おーおーさすが真面目なことで。


 移動教室がある関係で、席順が自由だったのは幸いだった。これで番号順に並ばされて、俺も最前列なんてことになったら笑えない。


 ……それでもサボるが、俺は。


 魔力感応式の黒板に次々と流し込まれていく光文字の年表を、ぼんやりと目で追う。


 科目は、魔術史。


 人間の作った魔術の歴史なんて大した重みもないのに、よくもこんな仰々しく講義をするな。


 魔法は精霊のものだ。ヒトやエルフが使う魔術とは、根本的な力の性質が違う、らしい。魔術は比較的新しい技術で、魔法は昔から変わりなく存在しつづけている現象。精霊の身体は霊気で出来ていて、彼らは存在することで魔力を生み出す。


 長い年月のあいだ精霊がこぼしてきた力のかけらを集めて、再構築し、人間は望みの結果を得る方法を編み出した。それが魔術だ。


 ヒトやエルフは魔力を使って存在を固定している。だから失い過ぎれば死ぬ。または個体を保てなくなって消える。自然に回復できる程度に消費を抑え、力を増幅するのが、術式と呼ばれる陣や詠唱の効果らしい。


 ――が、そんなものはすべて、近代国家が争いのために作り出した、それこそ戦道具のようなものだ。


 かつて、世界の仕組みはもっと単純だった。


 始まりの世界は、一本の大樹だった。その枝で天を支え、その幹で天地を繋ぎ、その根で大地を固定していたという巨大な樹は、いわば世界の骨組みであった。ゆえに、世界樹と呼ばれる。


 世界樹を取り巻くように一体の竜が眠り、その骸に根差して森が生まれた。


 世界樹の森を中心として、大地の東側には竜が、西側には精霊が住んでいた。

 天界には純白の翼を備えた美しい天使が暮らし、神に仕え、世界を統べていた。


 やがて地上に降りた天使の一部が、翼を失って天人となった。


 精霊との交流を望み、世界樹の森に定住した者たちからエルフが生まれた。

 新天地を求めて東に向かった者たちからは人間が生まれ、竜とともに今日の国家群の元となる集落を形成した。


 国家間の紛争を嫌った竜は、東北の高山地帯に引きこもり、一握りの人間とともに里と呼ばれる独自の集落を形成した。


 以上が、教科書にも載っている、表向きの(・・・・)この世界の成りたちだ。本当のところがどうだかなんて、人間に知ってるやつはいない。


 ただ、もうこの地上に世界樹や天人なんてものが存在しないことと、人間と竜は袂を分かったこと、天界の天使様は地上に降りてはこないこと、それから、創世譚には出てこない瘴気と魔物の存在を、知っている。

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