表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Skew World Overture  作者: 本宮愁
I.離島の魔術学園
4/155

第一話(3)

「またそんなところでサボって……!」


 片手を腰に、もう一方の腕を伸ばしてまっすぐに俺を指し示すレナは、ずいぶんとご立腹。黙ってさえいりゃあなあ、ほんと。


「毎回毎回、なんで高いところにばっかいるのよ。探す方の身にもなってよね!」


 距離を物ともせず響く甲高い声に耳を塞ぐ。すぐこれだ。なんでと言われても説明するほどの理由はない。なんとなく好きなんだよ。空が。


「べつに頼んでないしな」

「なんか言った!?」


 キッと俺を睨みあげたレナに、ひらひらと片手を振るって降参の意思表明。こういうときは、下手に逆らわないに限る。火に油を注いで、説教が長引くのは避けたいところ。……いまさらか。


「いい加減、授業サボるのやめたら? こんなこと続けてたら、どんどん心象悪くなるよ」

「どうせ意味ないし」

「ノア!」

「事実じゃん。どれだけ理論をたたき込まれたって、実践できないんじゃ無意味。そもそも、俺に学者は向いてない」


 いまどき魔術が使えなけりゃ末端の騎士にさえなれない。せいぜい使い捨てられる駒が関の山だろう。


 小耳に挟む国際情勢は『神童』有するヴィストリア王国の一強で、小競り合いも減った。兵の使い道もないことだし、奇跡的に卒業したところで、ろくな就職先は思い描けない。


 ……つーか、考えれば考えるほど、俺ってここにいる意味ないよなあ。


 気づいたら独りだった。

 それ以前の記憶はなにもない。


 親の顔も知らずにさまよって、うっかり手を出した相手が魔術学園の学長だった。魔力があることがバレたから、半ば強制的に保護されて、ここに入学させられた。


 よくある、とまでは言わないけど、ままある筋書きだ。


 魔力の強いガキを野放しにすることは危険。そりゃ俺にもわかる。保護の名目として養子縁組させられたのは、まあ、大人の事情ってやつだろう。その辺の事情はよく知らないけど、べつにいい。


 最大にして唯一の誤算は、俺が魔術の一切を使えなかったこと。

 ――行使できない力に、なんの意味がある?


 実力主義を極めたこの学園で、俺の存在は異端としか言いようがなかった。


 魔力自体が消えたわけでもなくて、ただ外に出せない。形として練りあげることができない。理由もわかっちゃいないから、俺は解放されることのないまま、この学園に留め置かれてきた。


 どうせ行くあてもない。放りだされないことを幸運に思うべきなのか、それとも、恨むべきなのか。正直なところわからない。


 わかってるのは、俺はこのまま、いつか無意味に死ぬんだろうってこと。大半の人間とおなじように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ