第二話(19)
そのとき、俺の手の内でシュナの剣の柄が急激に熱を持ち、あまりの熱さにたまらず取り落とした。
「あっつ!?」
真っ赤に色づいてひりつく手のひらを冷ますようにブンブンと振る。なんだこれ。ぜんぜん熱が引かない。見えない炎に炙られているように、手首から先が異様に熱い。
「そいつの名は【獄炎】――神剣とまではいかないが、竜の焔で鍛えられ、鞘に収まった状態でも人を消し炭にしえる魔剣だ。迂闊に手を出せば火傷する程度の矜持はある」
可愛いやつだろう、と言うシュナは軽々と愛剣――【獄炎】を掴み上げる。その途端に異様な熱は引き、火傷未満のひりつきだけが手に残った。矜持、ね。あんた初対面で振り下ろしてこなかったか、その危険物。
つか、尋常な重さじゃなかったんだが。奪うのが精一杯で、片手で持ったときには肩が外れるかと思った。
「なるほど、そりゃ、すげ――」
シュナのそばに置き去りにした【飆牙】が風を起こし、俺は【獄炎】に対する賛辞を途中で飲み込んだ。
……面倒くさい相棒め。お前がすごいのは知ってるよ。使いこなしてやれなくて悪かったな。
あえてなにも言ってこないあたり、また派手に出血させられそうな予感しかない。
頬を引きつらせた俺に、馬鹿なことをするからだ、とシュナが呆れた目を向ける。
「さて、いろいろと言ってやりたいことはあるのだが」
「シュナ教官……そろそろ時間が」
砂時計を回収したレナが声をかける。不安げな顔をする彼女に、シュナは頷いてみせる。
「時間もないことだ、手短にいこう」
筆記と異なり、実技成績は即日発表するのが伝統だ。俺以外の学生は全員結果を知らされている。
ごくり、と生唾を飲み込む。
俺の進級に必要な最低点数は、100点満点中の90点。免除者の前例がないとすら言われる高い基準だった。
「全体的に動きが荒すぎる。動線に無駄が多い。速さに甘えて守りが薄い。試験中、三度まで見逃されたのは気づいているな――後半に至っては、私の教えをことごとく無視し、挙句に足技ときた」
くつくつと笑うシュナは、俺の暴挙を面白がっているようにも見えるが、これはあくまで試合形式をとった剣術の試験なのである。……途中から完全に忘れていたが。
耳の痛すぎる内容に、ぐうの音も出せずに黙り込む。
「甘く見積もって60点」
「はあ!?」
「教官、それは――」
口を挟みかけたレナを手で制して、シュナは続ける。
「しかし、これは公正な試験だ」




