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Skew World Overture  作者: 本宮愁
I.離島の魔術学園
31/155

第二話(11)

「なんだそれ、どういう――」


 シュナを追ってフィールドに近づこうとして、途中で立ち止まる。


 学生の壁が、じゃまだ。


 同じローブを身にまとったクラスメイトたちは、話しかけてこそこないものの、なにかと俺の行動を監視している。あの中に飛び込む気にはなれない。


 中途半端な位置で立ち止まっている間にも、突き刺さるような視線が、四方八方から飛んでくる。


「……くそ」


 このあいだまで、あからさまに存在無視してたじゃねーか。


 耐えかねて踵を返すと、最後列にいたウィルが気づいて、俺を呼び止めてきた。


「おいノア、どこいく気だよ! 姫の試合始まるぞ」

「上で見てくる。視線がうるさい」

「あー、なるほどなるほど? 色男はつらいね」

「……」


 無視して観客席を目指すと、ウィルはあわててついてきた。


「あ、待てって。俺も行く」


 シュナの弟子という肩書きは、俺に新しい世界を見せた。


 もともと俺の見た目は目立つ。レナのように憧れられる色彩ではなく、否応なく目に入る異様な色としてだけど。


 どこにいてもすぐに見つかる。遠巻きに眺められて、物言いたげな視線を無数にぶつけられる。面と向かって文句も言いに来ないくせに。


 ……これが、あいつの感じてきた世界か。


 良くも悪くも特別としか見られない。見上げられるのも見下げられるのも、行き過ぎれば苦痛だ。いつまでも俺につっかかってくる理由がわかった気がした。


 いや、今はそんなことより――。


 最前列に腰を下ろし、中段に構えて向かい合う二人を遠目に見下ろす。


 まがりなりにも闘技場の名を冠する施設だけあって、観客席からでも動きは十分見て取れる。さすがに大スクリーンの中継はされてないから、音は聞こえないけど。


 開始の合図と同時に、仕掛けたのはコウだった。


 ――速い。


 一切の迷いなく踏み込んで繰り出された突きを、間一髪、身体をひねって躱したレナは、どこか戸惑ったような表情を浮かべた。


「あっぶな!?」


 隣でウィルが立ち上がって叫ぶ。


 たしかに際どいタイミングだった。俺は普段の講義のレベルを知らないけど、全力で勝ちを取りにいったのがわかる。


 レナもすっかりコウの気迫に押されているようで、突き出された剣を叩き落とせばいいものを、むりやり横にそらして距離を取り、なにやら声をかけていた。そんな余裕あるのかよ、お前。


 シュナに提示された課題は、10分間の試合だ。勝敗を付ける必要もなく、時間が経過すれば、それでおしまい。相手の剣を弾くなり、かすり傷でもつければ即終了。


 宣言通り、コウは本気だ。二手三手と容赦なく追撃して、レナがなんとかしのぐ、という流れのくりかえし。このあいだ話したときの一面を思い出させるコウの猛攻に、レナは防戦一方だった。


 おとなしげに見えて、なかなか一癖ありそうなやつだったな、そういえば。


 レナの剣術は始めてみる。運動神経は良い方だし、あいつに出来ないことなんてないとは思うが、さすがに魔術とは勝手が違うからな――。


 隣で観戦していたウィルがつぶやく。


「なんか……おかしくないか?」

「ああ、そうだな。らしくない」

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