表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Skew World Overture  作者: 本宮愁
I.離島の魔術学園
13/155

第一話(12)

 番号順、なんて言ったって、つまりは成績順だ。進級試験の席次そのものだから、レナが最初で、俺が最後。はいはい、安定安定。しばらく呼ばれることもないだろうし、気詰まりな空間を離れてどっか適当に――。


「どこへいく? ノア=セルケトール」


 シュナ=フェブリテに呼びとめられて、ギクリと身を固める。


「私は、意欲のない者は欠席にすると言ったが」


 おそるおそる振りかえった先で、凪いだ茶褐色の瞳にぶつかった。予想外にも、怒っているというより、まるで面白がっているかのような瞳。シュナの考えが読めずに、戸惑う。


「……あんた、ずいぶんと俺に肩入れするね」

「クリスが直々に引き取った秘蔵っ子だ。教導者として興味を引かれるのは当然ではないか?」

「俺になにを期待してんのか知らねーけど、無駄だよ。期待外れで悪かったな」


 内心うんざりしながら、おざなりな返答をする。このパターンには、いい加減に飽き飽きしていた。


 一応、養父ってことになる先代学長クリス=セルケトールは、名の知れた術士だったらしい。弟子をとることもなく、伴侶もいない。たった一人、気まぐれに拾い上げた孤児が、俺。的外れな期待は、度々投げかけられた。


「しかし、魔力はある」


 シュナは、気分を害した様子もなく、より面白がるように目を細めた。気まぐれで獰猛な肉食獣のようだ。愛玩用に飼いならせるとは、とても思えないけれど。


「あーそうらしいね。でも、使えねーもんになんの意味がある?」

「使えない? 違うな。お前は、『魔術が組めない』だけだろう」


 言うが早いか、シュナは愛剣を振り上げた。


「は!?」


 突然のことに、わけがわからないまま頭を守る。一か八か、鞘をつかんで勢いを殺そうとするが――おいおい、フェイクかよ。いま一瞬、力を抜くどころか手放しやがった。


「触れた、か」


 ニィ、と笑ったシュナは、すぐに剣を引いてしまう。――ほんの束の間、彼女が手を放した短い時間だけ支えた長剣は、冗談みたいに重かった。


「なるほど、あの男の姓を与えられるだけはある」

「はあ……?」


 意味わかんねえ。触れた? なんでここであの人が出てくるんだ。


 俺がセルケトール家に引き取られた経緯は、学内なら誰だって知ってる。ほとんど義務みたいな、単なる保護。拾ったもんは自分で責任取りましょうっていう、あれ。それ以上でも、以下でもない。


 シュナを問い詰めようとした矢先、クラスメイトが一人吹き飛んだ。数メートル宙を舞って、どさり、と地面に落ちる。


 ――沈黙。そして、ざわめき。


 すぐに別のやつが、血相を変えて飛んできた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ