炎神、再来 1
怒涛の連日投稿でございます。
ようやく、待ち望んでいた戦闘がやってまいりました!
しかし、完全に手探りで戦闘シーンを書くことに………。戦いの技の名前に関する知識が少ない故、同じ言葉の繰り返しは避けられません。
専門的な知識を身につけるのも大切だと学びました。
後は経験、今回を通してスキルアップを図りたいものです。
失礼ながら、読者様、読む時は気合いを入れ、おおらかな気持ちで読んで下さい(笑)
読みにくいと思います。
炎弾は直人との距離をみるみると縮めていく。直人はその炎弾を恐れ、目を見開き、見つめるばかりであった。
しかし、炎弾は校舎と衝突する手前で碧色の刀に切り裂かれ、直人に命中することなく、その場で大きな爆発音だけを立てて消滅した。
「直人!早く逃げて!」
碧色の刀を携えた幼い少年、充は直人にそう大声を張り上げ言った。その声は直人だけでなく、眠りに落ちていた教室中に響いた。充が炎弾を消滅させた時に生じた大きな爆発音が聞こえた後だ、それに宙に人が二人も浮いているのを目の当たりにした者もいるのだ。クラスメイトは現状、何が起きているかも分からないが、異常事態だということを感じ取り、慌ただしく廊下に逃げ出した。教室どころか学校中にまで、その混乱状態は伝染していく。
しかし、直人は未だ一歩も動き出すことができず、椅子に重たい上半身を乗っけたままである。この場に残って生き残ることなどできないと否応なしにわかっているのに、直人は動き出せずにいた。いつまでも、恐怖のあまり、うまく動かない足に力を込め続けた。
いくら直人が自分の足に念じても、がくがくと震えるばかり。直人は自分のことを不甲斐なく思い始めた時、今朝屋上で綾音が言っていたことを不意に思い出した。
『うじうじなんかしてらんない。何か行動を起こさなきゃ』
そうだ、直人がここでじっとしてるわけにはいかない。綾音の言葉が直人の意思を一層強いものにすると、直人は何とか立ち上がることに成功した。しかし、置かれた状況が違うだけで、いつも何気なく行えている動作はここまで違うものなのだろうか。ただ立ち上がっただけであるのに関わらず、直人の足はふらつく。足を取られ、直人が倒れそうになった所、芝がその肩を支えてやる。
「大丈夫か!直人!早く逃げるぞ!このままじゃまずい!」
芝は直人の耳元でやかましい程大きな声で言った。直人はその時こう考えた。
このままここに居たら、再び命の危険が到来する。しかし、炎神の狙いはこの自分。炎神がこのおれを狙ったことで、クラスメイト達も危険に晒されているのだ。ならば、おれがこの場から離れることで、皆を助けることができるじゃないか。そうだ逃げるんだ。おれには逃げることしかできないから、逃げるんだ、と。
直人の心は段々と落ち着いて行き、足の震えも治まっていく。少し時間がかかったのだが、平静さを取り戻したのだ。
「芝!未奈と綾音を頼んだ!おれには絶対について来るな!」
直人は自分の肩に乗っかった芝の手を払いのけると、教室から飛び出して行った。
「おい、待て直人!勝手な行動はよせ!」
芝がそう叱咤したところで、直人が立ち止まることは無かった。直人は廊下に出ると生徒達が流れていく方向とは逆に駆けていく。
廊下では火災報知器が鳴り響き、所々で悲鳴が聞こえる。そんな中、スピーカーから校内放送が流れ始めた。直人は走りながら、スピーカーに耳を傾ける。
謎の爆発が起きました。生徒の皆さんは校庭に速やかに避難して下さい。繰り返します………。
直人はそのアナウンスを聞き、進路を中庭に変更した。炎神がおらず、生徒たちが集まらない場所。そこを経由して校舎から抜け出すことを謀ったのだった。
場面は変わって校門前。直人が初めて充と出会ったあの日のように、充は炎神と対峙していた。しかし、どういう原理か、二人は宙に立っていた。
「また私達の邪魔をするのか、『時の神』よ」
炎神は堂々と空中で仁王立ちをし、充を睨みつけながら尋ねる。
「君達が直人を殺そうとする限り、君達の計画を邪魔し続けるよ」
充も鬼の形相で炎神を睨み、己の刀の切っ先を相手の喉元を狙わせたまま答える。
「言っても聞きそうにないな、ならば、本気で相手をするまで」
炎神は背中に背負った先が三つに分かれ、鋭く、たくましい槍を右手に持った。丈は炎神と同じ程で、大きな槍であった。そして、炎神は左手を槍に添えるようにして構え、充に標準を合わせる。
「参るぞ………」
炎神がそう呟くと槍は炎を勢いよく吹き出し始める。そして、炎神は身体を加速させ、充に急接近する。充はその動きをかろうじて目で捉え、ギリギリの所で槍を避ける。炎神の槍は空を突いた。しかし、炎は熱気を持っている故、炎神の攻撃は充に命中しなかったものの、充はその熱気で少しばかり体を焼いた。
「………くっ」
充は苦い声を漏らしながら、炎神と距離を取る。それから、炎神が逃れた充を視界に入れ、再び二人は向き合うことになる。炎神は槍を垂直に立てて持つと、充にこう述べる。
「この槍は中華国に眠る、獄炎の槍。名は『朱雀』。我が炎を浴びようと朽ちることのない唯一の至高の槍。貴様の命を狩り取ることになる槍だ。名を記憶しておれ」
「うるさい、戯言は済んだか」
充は炎神に対し、挑発的にかかる。そして、こう続ける。
「御託はいい、本気で来い」
この時の充には、もう幼さなどもう感じない。炎神と同じく殺意ある凄みのある目つきで、炎神を睨む。炎神はそれを見て、恐れる事無く、口元を緩ませる。
「見事」
炎神はそう囁くと再度、『朱雀』を構え、充に向け再び急接近する。充は今度こそハッキリとその動きを目で捉えることができた。眼前に突き出された槍の先を刀で払うと、充は一気に炎神との間合いを詰め、炎神の腹部を目がけて刀を振り上げる。それに対し、炎神は後ろに下がり、碧色の刀は何も無い所で、軌道を描くこととなる。
充の攻撃を後ろに避けた事により、炎神は再び充を『朱雀』の攻撃範囲に捕捉した。炎神は充に向けて、連続で突きを繰り出す。充は『朱雀』の攻撃を弾く事で精一杯であった。燃える槍との距離が非常に近いため、熱で次第に体力は奪われていく。幾度と充は『朱雀』の攻撃の軌道を変え、直撃を免れてきたが、ついに『朱雀』は充の左肩を貫く。
「捕らえたぞ………」
炎神はそう言うと、『朱雀』に纏わせた炎をよりいっそう激しいものにし、その傷口を業火で炙る。充は耳をつんざくような高い声をあげ、呻吟する。朦朧としていく意識の中、充は燃える『朱雀』の柄を握りしめ、体から引き抜く。
そして、充は刀を持った右手で左の肩を押さえながら、宙を移動し再び炎神との距離を保つ。傷口は焼けており、出血は少ないものの、痛く、熱い。だが、一切弱音を吐くこと無く、動きがぎこちなくなってしまった左手を刀に添え、敵に向ける。息は荒く、目は虚ろ、充はぼやけて幾重に重なって見える炎神がまた戯言を始めたことに気付く。
「『朱雀』は貴様が体感したように敵の体を貫き、身体を焼く殺しの槍。抜いた際にも、貴様の体を傷つける。刺さるも地獄。抜くも地獄。貴様のような餓鬼風情が、どこまで耐えきるか見物であるな」
そう言い終えると同時に、猛スピードで充に近づいて行く。
充も対抗するように、剣に力を込める。すると、充を中心として緑色の円が完成する。そしてそれは、波紋を描き、広げていく。炎神が『朱雀』の攻撃範囲に、そして充の描いた円の内側に入った瞬間、充は呪文を口にする。
「時間停止魔法!!」
時間停止魔法は直人が充と初めて会った時に、炎弾を静止させた魔法。範囲は術者が描く円からできる、半径5メートルの球の中に捕捉したもの全て。ただし、術者が停止させたくないと判断したものは免れる。能力は対象を1秒間以内静止させるという強力な魔法である。その強大な能力の代わりに、術者は莫大な魔力を消費することとなるが、戦闘中1秒間も相手の動きを止めることができるのだ。戦況は一転する。力量が及ばない相手を倒すのには、適した魔法である。
しかし、炎神はその魔法を食らおうが、動きを完全静止させることは無かった。炎神の身体の周りに、バチンと音を立てて電気のようなものが走っただけであった。炎神はそれを確認すると充から5メートル以上の距離を開き、落ち着いた物腰で喋る。
「時間停止魔法か………。貴様の能力をすっかり忘れていた。何かを貴様が仕掛けたと感じ、咄嗟に我が体に魔力を纏わせ、防御の構えを取って正解だったな」
充の不意打ちは不覚にも失敗に終わったようだった。
魔法は魔力と呼ばれるエネルギーを攻撃的に変換させたもの。よって、相手の放つ魔法に対し、その魔法と同量の魔力を与えることで魔法を消滅させることができる。例を挙げるならば、炎神が今回のように時間停止魔法から身を守ったこと、充が炎神の放つ炎弾を消滅させたことなど、全て魔力の力である。
しかし、充の時間停止魔法が炎神に対し、効かないわけではないのだ。そこで、充は頭の中で次のような作戦を練る。
(僕の時間停止魔法の範囲は僕を中心として、半径5メートル以内。その範囲に炎神を捕捉した状態で、時間停止魔法を当てることしか勝ち目が無い。しかし、闇雲に時間停止魔法を放った所で、さっきのように防がれるのが関の山だ。上手く不意を突いて、体に纏った魔力が薄い時、そこを狙うしかない。時間停止魔法はたくさんの魔力を使うから、連発はできない。チャンスは数回のみだ。)
しかし、先程の失敗によって、充の戦略が成功する可能性はわずかなものとなる。相手に切り札がばれてしまった以上、炎神が全く警戒せずに、充の接近を許すことはないだろう。
この通り戦況は良いものでは無い。充は左肩に痛手の負傷を追っている上、頼れるのは成功率が低い作戦。しかし、充が炎神を食い止めない限り、直人には未来が無い。理不尽な未来が創り出されてしまうのだ。
この戦争で直人が生き残る条件。それは全て、この幼き少年、充の双肩にかかったのだった。
読んで頂きありがとうございます。
読みにくかった箇所、または解説が欲しい場所はどしどしお申し付け下さい。一応、この戦いが終わった後、魔力の話をたっぷりとする説明回をとるつもりではあります。
また、誤字・脱字もあれば気軽に送ってください。
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