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第94話

「――確かにこれは予想してなかったな」

「だろうな。私としても、今回でそうする事は想定していなかった。だがこの先が、あまりにもくだらない結果になりそうなのでな」

「ああそうかい――少なくとも“ふざけんな”とだけは言えるな!」

「ふざけているのは、人と言う種その物だろう」


ガキィンっ!


「――いつまでも、自分たちが夢を描き、邁進しながら生きていける存在だと思いあがっている」


ユウの焔群、白夜の大剣がぶつかり合う。

ギシギシと刃と刃が押し合う音がなり、ユウと白夜の鍔迫り合いで2人の足もとの地面が、陥没し始める。


「――言うなおい」

「自分に危害が及ぶなら救いではない――我儘で身勝手極まりない発想だな。まして、そんな物が堂々と権利の様に主張されているなど、悪ふざけ以外のなんだと言う?」


合わせている刃が、ギリっとこすれる音が鳴る。


「反吐が出る――確約された幸福が本当にあるのなら、欲望も理性もいらんだろうに」


それと同時に、2人は後ろへ飛び距離を取った。


「――俺達大罪にとって、美徳はただの敵対関係じゃない」


ユウは剣を構えると同時に、そう告げた。


「対は敵であると同時に、最も理解すべき存在――俺が宇宙を最も理解している様に、お前も北郷を最も理解している」

「そうだ。北郷が突きつけられた現実、“一徹”を狂気に駆りたてた物……そして、先ほどここで見たやりとりを踏まえれば、人の願いは平和ではない」


理性と自分以外の欲望の排除、他人が意志を持たぬ世界だ


「……それで否定しているつもりか?」

「――別に否定するつもりはない。だが今の人では不可能だ」


「――契約者社会はまだ始まったばかりじゃないですか。結論を出すには早すぎます!」


白夜とユウが剣を下ろし、声の主――ひばりに目を向ける。

その次に白夜はため息をつき――


「――その小さい身体に見合った、幼い発想だな」

「ちっちゃくありません!」

「思い上がるな。前提自体が壊れている今、いくら必要性や重要性を説いた所で言い訳にもならん」

「前提が壊れたとしても、意味は壊れてなんていません。救う余地なんてまだまだ……」

「――それでジレンマのつもりか?」


バリンっ!


「――!?」

「救いも所詮は人の意思だ」


何かが割れるような音

それが響いたと同時に、眼前には大剣を振り下ろそうとする白夜。


そして――


「よそ見してんじゃねえぞコラ!!」


ユウがマグマを纏った右腕を振るい顔面に拳をブチ込み、そのまま白夜の頭を地面にたたきつける光景。

ひばりは叩きつけられると同時に後ろへ飛び、ガードの体制を取って修哉達と部下の契約者を守る。


バキバキと地面が衝撃でわられ、その割れ目が真っ赤に噴き出るマグマで彩られ――爆風が巻き起こす。


「くっ、うぅっ――確かに失礼だったな……流石に頭は堪える」

「確かに、そいつらの説得も出来ない俺には、無理かもしれないのは理解してる。でもせめて、やれるだけの事はやって終わりたいんでね」

「――精々、土壇場で裏切られん様にな」



――一方。


「――それが君の切り札ですか?」

「ええ……僕も綾香も、“勇者”一条宇宙の名に縋るだけの役立たず、なんてレッテル貼られて黙って居られるほど、のんきではないので」

「そうですか」


岩崎賢二 対 吉田鷹久


“神の左手、悪魔の右手”を展開した鷹久に、賢二は表情を引き締め――ウロボロスの柄を振り上げ、回す様に振り回す。

回すごとにウロボロスは長さを増し、50mはあろうかと言う長い身体へと変わり――


「“大洪刃タイダルブレイド”!」


賢二が踏み込み、まるで大洪水かと言う軌道を描いて、ウロボロスが鷹久めがけて襲いかかる。


「――“ゴッド左手ハンド”」


眼前に迫る、“削る”鱗の刃。

鷹久が右腕を――二の腕と手の甲を完全に隠す程の重厚な盾と、その下に手の甲に沿う形で斧の様な刃が取り付けられた、重々しい形状の小手を纏った右腕を構える。


「――はあっ!!」


バキンッ!!


気合とともに放った一撃が、ウロボロスの削る鱗の刃に纏われた身体に叩き込まれ――。


『ゴギャアアアアアアアアアアアア!!!』


殴られた個所が吹っ飛び、激痛の咆哮が響き渡る


「――ウロボロスの鱗の切れ味と強度に、耐えきった!?」


ゴッド左手ハンド

防御と打撃に特化した小手であり、パワーと強度なら上級系譜でもトップクラスに位置する


「――うおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


ウロボロスの身体を殴り飛ばし、隙が出来たことで鷹久は駆けだす。

賢二は小太刀を抜くのを見た鷹久は、指の一本一本に剣の様な爪が、肘から手首にかけて螺旋状に刃を取り付けた、禍々しい形状の小手をつけた右腕を構え……。


「“ドラゴンヘッド”!」

「“悪魔デス右手ハンド”!」


小太刀と小手がぶつかり――


バキンッ!!


「ぐあっ!!」


小太刀の刀身が6つに切り裂かれ、小太刀を握っていた賢二の腕に、爪跡が刻まれた。


悪魔デス右手ハンド

外見通り、切れ味に特化した小手で、その爪は鷹久の能力で金属粒子を振動させることで、抜群の切れ味を誇る。


「はあっ!!」


ドラゴンヘッドを破って間髪いれず、左腕をラリアット気味に振るい――賢二を吹き飛ばした。


「――よし。綾香、すぐに……」


「ぎゃあああああああああああああああああああああああっ!!」


今が好機と見て、綾香に声を掛けようとしたその時

断末魔が、鷹久の声を堰きとめた。


「――え?」


鷹久がその断末魔の音源の方向に目を向けて――その先にあった物。


「ぐっ……ううっっ……」


負傷し、立ち上がった賢二が――ウロボロスの柄を、自身の腹に突き立てている光景。


「――なっ、何を!?」

「――ウロボロスがいつ僕の切り札だと言いましたか?」

「! まさか……」

「――傲慢はプライドが高いんですよ。だから……そこらの負の契約者とは危害も品も違って当たり前」

「……」

「増して僕は上級系譜……最強の大罪の、側近なんです!!」


『ゴアアアアアアアアアアアアアアア』


ウロボロスの咆哮が響く。

そして――自身の尾に噛みつく形で、賢二の身体を呑みこんだ。


『ご……でい……どで』

「――まさか」

『――コノテイドデヒケルワケ、ナイデショウ!!』


ウロボロスが人語を離した。

そう思った瞬間、尾から口を離し――ウロボロスの身体が変貌する。


蛇の体から足が、そして頭の横に腕が生え、その間――胴体に当たる部分が、ぶくっと膨らむ。

まるでと影か恐竜か――という形状に成ったと同時に、元々の頭部が胸の部分になり、頭頂部分から頭が――人面の形状の頭部が生えてきた。


『サアゼツボウシテクダサイ! コノ“ウロボロス・ヒュビリス”ノマエニ!!』

「――光一の凶雷獣といい、なんで大罪側の上級系譜ってバケモノじみた人が多いんだろ?」


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