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第92話

――一方その頃。


「やりますね、吉田君」

「椎名九十九とやりあってから、宇宙さんに鍛えて貰ったんです」

「――そうですか」

「だから、ここで終わらせてもらいますよ!」


思念武装、大蛇刀ウロボロス。

それをかいくぐり、鷹久は得意の近接戦闘へと持ち込み、特殊金属製の籠手を武器に殴りかかる。


「――やれやれ」


鷹久の拳に、賢二が小太刀で応戦。

逆手に持ったそれで鷹久の拳を撃ち払い、回し蹴りをブチ込んでウロボロスを引き戻した。


「――ウロボロスを一度かわした程度で、僕を攻略したつもりですか? 最強の大罪、僕はその側近を任されている身だと言う事、甘く見過ぎですよ吉田君」

「……参ったな。距離を詰めても、相応の対応ができるなんて」

「――勇気の上級系譜に言う事ではありませんが、ここは退いてください」

「お断りします。限界だなんだと、諦めるにはまだ早いので」

「早いですか……ふふっ」


含むような笑いを浮かべ、オーケストラを指揮するかのように賢二が、ウロボロスの柄を指揮棒のように掲げる。


「――何がおかしいんですか?」

「いや、失礼――矛を交えた身として、同じ秩序の二枚看板を支えた者が、こうも正反対の意見を持っている事が、あまりにも不思議でしてね」

「……そうですね」

「それだけに滑稽ですよ――勇気と正義の対立など、所詮は“罪が先か悲劇が先か”。とどのつまり、その程度でしかない」


ウロボロスが咆哮をあげると同時に、身体を縮小させていく。

先ほどまでユウの斬城剣を上回る巨大さはなりを顰め、媒体となっている“竜頭蛇尾”のサイズを一回り大きくした程度の大蛇へと変貌した。


「――救う事など出来ない。そう言いたいんですか?」

「その通りです。自分にとって都合のいい物しか求めないのなら、救世主など所詮は奴隷でしかなく終戦も意味がない。だから正義も、力尽くの方針を取る様になった――そう見てますからね」

「そうですか――考えてみたら、貴方達が正義を肯定する理由はわかりますけどね。僕達が憤怒を最も理解してるように、貴方達も正義を最も理解している」

「僕達はただの敵対関係ではなく、単純に戦って勝てばいいと言う物ではありません――対を理解してこその理性であり欲望。それを理解せずして、大罪も美徳もない……そこはきちんと理解はしてるようですね」


ウロボロスを振るい、先ほどとは段違いのスピードで鷹久めがけ襲いかかる。

鷹久はこれを受け止め――地面をえぐりつつ、何とか受け止めきった。


「――重い」


スピード、重さ。

どれをとっても、九十九の砲撃を上回っている攻撃。


「――さて、覚悟はいいかい?」

「最初からいいですよ。あれで本気だなんて、ある訳ないと思いましたから」

「結構」

「それに、貴方も僕を見くびり過ぎです」


バシっと、両手を叩き――こすり合わせるかのように、何度も手を叩く。

それに呼応するかの様に、両手の小手が形を変え――肥大化していく。


まず右手が、指の一本一本が剣の様な爪へと変わり、二の腕は螺旋状に刃をとりつけたつけた、まがまがしい形状に

次に左手が、二の腕と手の甲を完全に隠す程の重厚な盾が取り付けられ、その下に手の甲に沿う形で斧の様な刃が取り付けられた、重々しい形状に

その両肘から鎖が伸び、その鎖は背に展開された巨大なカイザーナックルに、繋がっている。


それが展開され終わると、鷹久は左腕を牽制する様に前に出し、右腕を振り上げる様な構えを取る。


「“ゴッド左手ハンド悪魔デス右手ハンド”――僕にも切り札位はあるんですよ」

「歯ごたえのある戦いが出来る――そう見てもよろしいのですね?」

「ええ」




「おっ、タカも本気か」

「――思った以上にやるか」

「じゃ、あたしも負けてらんねえや!」

「俺の周りをちょこまかとしている程度で、どう勝つつもりだ?」


一方、夏目綾香対新田一馬。

スピードと身のこなしで勝る綾香が、パワーファイターを翻弄すると言う展開。


――しかし、新田一馬のダイヤモンドボディの前に、綾香はそれを突き崩す攻撃力を持たず、実質はじり貧。


「なーに、すぐに突き破ってやるよ」

「そのナイフでか? ――“夢”と“願い”の違いがわかるか?」

「違い? どっちも同じじゃねえか」

「違う――“夢”とは覚める物、“願い”は叶える物……お前達の方針は、明らかに“夢”だ。叶う物ではない」

「そんな御託並べた所で知るかよ! あたしはあたしの信じる道を進むだけだ!」


綾香の手に握られているのは、1本のナイフ

しかし一馬の眼には、どう見てもダイヤモンドを貫ける物には見えない。


――ゆらっ!


「ん?」


突如、綾香の幻影の姿が揺らぐ。

その次に幻影達が、一斉に一定のリズムでステップを踏み始めた。


「“幻想舞踏ミラージュステップ万華鏡ファンタジア”」


自身の周囲を取り囲むように、幻影達が列を組み輪の様に並ぶ。

それらが一斉に身体を揺らし、たんたんとステップを踏み……手をたたき、口笛を吹き始める。


「――成程」


催眠能力ヒュプノ


精神感応テレパシー、あるいは特定の動作やリズムを通じ、相手に暗示をかける精神系能力

瞬間移動テレポートに次いで扱いは難しく、相手が望まない暗示をかけようとすれば、成功率も精度も下がる。


綾香は元々が瞬間移動テレポートの方に重点を置いており、催眠能力ヒュプノの方は錬度も精度も高くはなく、精々自分の分身幻影を造りだす事位。

しかし、攻撃手段に転じる事が出来る能力であることを踏まえ、基礎を見直し新たに構築した“幻想舞踏ミラージュステップ”の新しいバリエーション。


「――さらなる暗示をかけようと言う事か」


――口笛、ステップ音、動作、拍手のリズム。

これら全てか、カムフラージュにすぎないか――まず、一馬がとった方法は


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」


口笛、ステップ音、拍手のリズムといった、音をかき消す大声

次に地面をえぐり、法則を乱す様に幻影達に投げつけた。


「うわっ!」


その内の1体が、その岩をかわす際に傷ついた。

それを見て、一馬はそれが本体だと辺りを着け、突撃――


「そこ――!?」


しようとした途端、違和感を感じ――その次の瞬間。


「――なんだと?」


自らの肩に、ナイフで切られた傷が。


「――“幻想舞踏ミラージュステップ痛撃ペイン”……さ、快進撃行くぜ!」


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