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第90話

解き放たれれば全てを跡形もなく焼きつくす、火山を司る“憤怒”のマグマ

無限の可能性へと飛び立つ一歩を踏み出す、天空を司る“勇気”の風。


契約者の頂点、大罪と美徳の契約者にはそれぞれ、司る力がある。

その司る力も、それぞれの契約条件と密接に関わっている物の為、頂点達は言うなればその契約条件を力として具現出来る者。


――起動させるための契約条件が系譜以上に必要なため、未だにこの14人以外で起動が出来た物は1人としていない。


「――流石、宇宙と並んで契約者随一の美男子と、評判が高いだけあるな。男でそんなメルヘンチックな翼が似合う奴なんて、そうそういないぜ?」

「似合う似合わない等どうでもいい。この方がイメージしやすい為に、そうしているだけ。それに――」


全てを生みだす物にして行きつく物――無を司る、始まりであり終端の欲望

傲慢の契約者、大神白夜


大罪最強にして最強の瞬間移動能力者テレポーターでもあり、瞬間移動テレポートの究極ともいえる力、“空間破壊”を使い空間の垣根を壊し、法則そのものに干渉する能力を持つ男。


その背に展開するのは、垣根を壊した先の空間にのみ存在する“異界物質”

彼はそれをコントロールする事も出来、それを使い剣を精製し翼を形成している。


「――メルヘン等とのんきな事を言える物ではない筈だがな」

「ああ。相手にするとなると、俺も色々と覚悟決めにゃならん」


「――支倉さん、動かないでください」

「……治療して貰ってなんですが、早く」


傘下の契約者の中に幸いにも治癒系能力者がいた為、治療を受けているひばり。

それを確認し、一先ず意識を外し――出来る限り衝撃波の出ない戦いを


「!」


白夜の背の翼が、白い羽と黒い羽を舞い散らせ、羽ばたく。

足が地面から離れ、飛翔し――加速して斬りかかる。


背に展開した“鬼蜘蛛”の握る6本の太刀、“六連”

振り下ろされる大剣を手に握る“焔群”、翼には“六連”で受け止め、鍔迫り合いに


「うわあっ!」


一撃一撃のぶつかり合い自体、下級契約者に耐えられる物ではなく――

やむおえず、止血だけは済んだひばりが間に入り、ガードししのぐ。


「……」

「支倉さん、大丈夫!?」


「――!」

「動揺したな」

「!」


大剣を1つ消し、その大剣を握っていた手をぐっと人差し指を伸ばした形で握りしめ、ユウの心臓めがけ突き出す。

それに反応したユウは身体を捻りかわし――重心がずれたその瞬間、白夜が剣を引き足払いを仕掛け、ユウが刀を握った右手と右膝をつく。


「――ふんっ」


侮蔑する様な引いた大剣を下段に構え、踏み込むと同時にユウめがけて振り上げる。


「舐めるな!!」


背の鬼蜘蛛を、右片方三本を地面に突き立て、それを伸ばし自身の身体を持ちあげ、回避。

大剣が振り抜かれたと同時に鬼蜘蛛を解除し、焔群を振り下ろす。


「――ふんっ」


白夜の背の悪魔の翼が交差し、剣を阻む


「くっ……!」

「甘いな。今のは“迦具土カグツチ”を出すべきだったろう? ……そんな事で倒せると、見くびる様な男でもあるまいに」


実際その通りだった。

今のは、必殺ともいえる6本の太刀を牙としたマグマの竜、“迦具土カグツチ”で攻めるべき場面。


――それをすれば、白夜を倒すまではいかずとも深手を負わせるくらいは出来た筈。

しかし、今のひばりに無理をさせられない事と、修哉達が居るが故に出来なかった。


「皮肉な物だな――一条と同盟を組み、北郷に攻められた大罪のナワバリの住民が、北郷が正しく一条が間違っている証拠となるとは」

「何を……!」

「人は思い違いをしている。我等が何を現しているか、平和とは何か、そして――命とは一体どういう物かすらも。目の前にある物を自分勝手に解釈し、都合のいい物を喰い荒し、都合の悪い物を踏み躙り続けている」


――それが正義を今の形にしたとも気付かないままに。


「納得出来る訳ないでしょ! あんな侵略者……」

「……(ギロッ!)」

「……!」

「――こんな風にな。理解することを拒み、拳を振り上げた解決しか認めない……人は他人の意思を持つ事を許さない」

「コイツ等を基準に全部をあてはめるだなんて……いや、それだけじゃないか」


ユウとて、理解はしていた。


大地の賛美者や犯罪契約者。

言葉が通じるのなら、そもそもこんな事にはなってない。


「己の不幸と言う陳腐な悲劇しか見ない者が、他者を理解し慈しむ事など出来るか。そしてその陳腐な悲劇が破綻を生み、その破綻が悲劇を生み、悲劇が破綻を生む――全部に当てはまるのも、そう遠くはない」


――だから、平和とは強いる物と言う結論を、北郷は出したのかもしれんな。

白夜はそう言って言葉をしめた。


「――ああ、確かにそうだろうな……だが、人が意志を持って取った行動なんて、常に正しくもあり間違っている。肯定と否定、幸福と不幸、長所と短所……それがせめぎ合ってるのが、思想だろ。納得できない奴だって存在する」

「理由にも寄るな。現状ではどう見た所で、人が求める未来等“他人が意志を持たない世界”……現状でいくら正義の方針が間違っていようと非人道的だろうと、否定意見に中身などありはしない」


「どうですか、支倉さん?」

「大丈夫です――ありがとうございます。じゃあすぐに避難を……」


そんなやりとりを横目で見た白夜は――


「――そう言う訳にはいかんな」


思念結晶体クリア

上位の下級系譜以上が精製できる、契約者の力“思念”の結晶体。


見た目は水晶にも硝子にも見える、拳サイズの結晶。

しかしそれ1つで、都市のエネルギー5年分は賄える程の高エネルギー体で、現存する契約者の技術の動力には、ほぼすべてこれが使われており、憤怒のクエイクもまたクリアを動力とし、更に来島アキの開発した新型クリアエンジンを搭載してある。


――そのクリアはそれ以外にも使い道が存在する。


「――! させ……」

「――“奈落ドゥームズデイ”」


バキバキバキ


「――!」


白夜の手にクリアが精製されたと同時に、何をするかに気付いたユウが、ひばりを助けに向かう。

――その間の空間を白夜が叩き割り、ユウは足を止めた。


「――行け、アシュラ」


『ゴァァァアアアアアア!!』


自身の手で生成したクリアを、ひばりめがけて投げつける。

そのクリアを媒体に、思念獣――鬼、菩薩、明王の3頭を持ち、6本ある腕はそれぞれ金棒、剣、錫杖を握り4mの巨大な怪物が形成され、ひばり達の前に立ちはだかった。


「――やってくれるな本当に」

「今回上級系譜は連れてきていない。今の状態で悲愴にうろうろされても困る」

「それでこんな所いやがるのかよ……っと、おしゃべりしてる時間も惜しい」

「正解不正解など、意味はない。均衡、ジレンマを経てこそ、平和がある――それを解せぬ限り、正義に対等……対として機能すべき物等、あってはならない」


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