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第89話

――一方、その頃。


「はあっ!」

「ぬうっ!」


ガキィッ!!


綾香が繰り出した双剣を、一馬が右腕でガード。

一馬のダイヤモンドの身体は傷つく事無く、綾香を払いのける。


「――コイツにあたしの速さは捕らえられない。普通ならいけるな」


瞬間移動テレポート”を駆使、あるいは元々自身のある身のこなし使いを、綾香はヒットアンドアウェイを繰り返していた。


「良い身のこなしだ――能力など使わず、生身でやりたい位だ」


上級系譜以上となると、そのレベル内での大きな差は存在しない。

しかしその分、能力あるいは戦闘スタイルの相性、そしてブレイカーを起動する上で重要なメンタルの差が、大きな差となる事が多い。


――椎名九十九との戦いで、相性の悪さが大きく出た所為で追い詰められたように。


「……けど、やっぱり厄介な硬さだな」


攻撃力不足に悩む綾香にとっては、目の前の相手は言うなれば天敵。

綾香の十八番“幻想舞踏ミラージュステップ”は、あくまで幻惑系であり直接攻撃ではない。


更に言えば、傲慢の系譜だと言うのに満身どころか見くびりもせず、ダイヤモンドボディを破る手立てがなかろうと、手を緩める事はない。

巨体だから鈍重と言う訳でもなく、直線スピードは鷹久なみの速さを持って距離を詰めてくる。


(……ここまでは、何とかなったな)


綾香に1つだけ、打開策はあった。

しかしそれはまだ実戦で試した事がない上に、あまり錬度が高くはない力をメインに据えているため、賭けの要素が強い。


だからこそ、綾香には仕込みが必要だった。

――確実なダメージとして、相手に通用させるために。


「攻撃の手を緩める――等と期待するなよ?」

「……!」

「俺は“闘争”の契約者。相手を舐めてかかる様なバカな真似はせん」


――気付かれている。


これは相手が上級系譜、増して大罪最強の上級系譜相手である以上、予想はしていた。

しかし、何を狙っているか――までは、気付かれる様な要素はない。


「諦めろ。お前では俺に傷をつける事は出来ん――物わかりが悪い事と、意志を貫く事は違うぞ」

「諦める事と臆病風に吹かれる事も違う――そもそも、相手が強いから尻尾巻いて逃げましたーじゃ、宇宙兄に合わせる顔がねえよ」

「意気込みは買おう。だが――お前達は一体何を持って、正義の方針を否定する?」

「あんな独裁者の恐怖政治そのもののやり方、あたしは認めない!」

「何が違う? 人の願う裁きと正義の執る方針……元々人は他人の――増して自分に不利益を被らせた者の意思を、絶対に汲まないだろう」

「それを変える為にあたし達は戦うんだ。それに――」


綾香は愛用の双剣――幾度となくダイヤモンドボディにぶつけ、刃が欠けた剣を鞘に納める。

そして――


「まだ始まったばかりだ! 決定づけるにはまだ早い!」


綾香が執りだした物。それは……


「――ナイフ?」

「この前貰った、ユウさん手製のワザ物だ――“幻想舞踏ミラージュステップ”」


取りだした一本のナイフを見せる様に突き出し、“幻想舞踏ミラージュステップ”発動。

綾香がゆらゆらと身体を揺らし、その身体の振りを起点に“催眠能力ヒュプノ”を発動させ、相手に自身の幻影を見せ――その幻影の座標を瞬時に演算し、重なる様に“瞬間移動テレポート”を発動。


幻影と瞬間移動を組み合わせた、幻惑高速移動能力。


「――見せてやるよ。新しい“幻想舞踏ミラージュステップ”を」




『キシャアアアアアっ!!』


武器を媒体にした、思念獣の形成。

蛇腹大刀を媒体に、巨大な剣の思念蛇“ウロボロス”。


ユウの斬城剣以上の巨大さを持ち、武器その物が意志を持つ。


「うっ……くっ!!」


その思念獣装ともいえる武器の攻撃に、鷹久は苦戦を強いられていた。


剣の勢い事態も素早いと言うのに、背びれの様な刃、岩も噛み砕きかねない牙、1枚1枚が鋭い刃の鱗。

噛み砕こうとする牙をかわした所で、鱗で削られるか背の刃で斬られるか――一瞬でルートを見極めねばならない為、回避も難しい。


尾の部分となっている柄を握りしめ、賢二が再びウロボロスを振るう。


『ギシャアアアアアアッ!』


賢二の意を受け取ったかのように咆哮を上げ、剣先から賢二の下へと戻っていく、

そして賢二の後方でとぐろを巻き、いつでも出られるようにスタンバイ体勢に。


「――貴方達は何故、限界だなんて言葉を使うんです? ……まだ契約者社会は出来てまだ何年も経ってないのに、何故人を否定するんですか?」

「肯定が存在しない上に、全否定しか使えないからですよ」

「――?」


一般人は、契約者の力を恐れ、あるいは利用できるか出来ないかで否定する。

犯罪契約者達は、理性を持つ事を拒み――正義は欲望を否定し、勇気は正義を否定する。


「やり方は確かに過激ですけど、北郷正輝が秩序を担っている事は事実。そして契約者社会は、文明を数百年は早めた――認めるべきところは確かにあるのに、人は全否定して認めるべき所を無意味にする……これで成長だなんだと言えるのですか?」

「僕達は……」

「否定することで終わって、その先がない――だから正義の方針は、意味を持ってしまったのかもしれないね」


ウロボロスの柄を握る手に力を込め、咆哮が上がる。


「――“武装解放オーバーアームズブースト重装ヘビー”」


眼前に迫りくるウロボロスの牙。

鷹久が勢いに逆らわぬように、受け流して回避し――その後の鱗に削られる。


ガギィっ!


『ギャゴォッ!!』

「――!」


前に、重量強化した武装で渾身の一撃を叩きこみ、迫る勢いのまま余所の方向へと逸れて行く。


「――巨大過ぎるが故の弱点ですね」

「だから何だと言うのです? もう使えなくなった訳ではありません」


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