表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/171

第87話

「……何考えてるんだ、あいつは?」


終戦の安息も、文字通りのつかの間。


戦いも終わり、正義勢と別れナワバリに戻った宇宙の耳に入った情報

“眠れる獅子”と呼ばれ、尚且つ大罪最強と名高い傲慢の、終戦と同時に開始された憤怒への進軍。


同盟相手ともあり、いざ援軍に――


「ユウさんじゃあるまいし、そんな身体じゃ無理ですよ」

「――炎熱能力特有の自己治癒が羨ましい」


と行きたい宇宙だったが、流石に北郷との一戦直後だった為、無理だった。

その為宇宙はナワバリに残り、綾香と鷹久に憤怒へ援軍に向かわせる事に。


「行ける、綾香?」

「任せろ」


綾香は相手が下級だった為、そんなに疲労はない。

――多少しこりの残る戦いではあったが。


「気をつけろよ。あいつが俺達の動きを予期できない訳がない」

「大丈夫だって、宇宙兄。あたし達に対応なんて、戦力割いてできる訳ないだろ」

「――だと良いんだけど」

「心配性だなあ、タカは。んじゃ、さっさと行くぞ」

「うん」



――綾香と鷹久の進路上。


「――新田君、来たみたいですよ」

「そうか――では手はず通りに」

「ええ――」



基本的に、瞬間移動テレポートは行えばすぐ目的地――と言う訳ではない。

能力者のレベルによって距離も精度も上下し、何度かに分けての移動となる。


「――傲慢と言えば」

「? どうしたの、綾香?」

「ちょっと瞬間移動テレポート邪魔された時のこと思いだしてさ――今度会ったら、あの鉄仮面泣かしてやる」

「いや、大罪最強相手で、能力でも上下関係にあるんだから流石に――」

「タカ!」

「え?」


「“刃龍ソードドラゴン”」


突如感じた違和感。

綾香が鷹久を抱え、後ろへと瞬間移動テレポート――したと同時に、綾香たちの進行方向が、突如薙ぎ払われ地面が抉られた。


念動力で強化された蛇腹大刀“竜頭蛇尾”の一撃で


「なんだ!?」

「やっぱり待ち伏せされて……」


「うおおおおおおおおっ!!」


次に来たのは、咆哮とダイヤモンドの輝きを持つ拳。

契約者の中では、さして珍しくはない3mを超す巨体――とは思えないスピードで迫ってくる。


「綾香、ここは僕が――」


鷹久が迎え討つべく、綾香から離れ構えを取る。


「“龍牙ドラゴンヘッド”!」


しかし、その背に乗っていたもう1人――岩崎賢二が小太刀を構え、鷹久に斬りかかった。


「くっ!」

「タカ!」

「お前はこっちだ」


援護に向かおうとした綾香を、ダイヤモンドの巨漢――新田一馬が遮る。


「――よりにもよって、防御力のある奴かよ」


傲慢の上級系譜“闘争”の契約者、新田一馬。

瞬間移動テレポート”をベースに、物質と融合する能力を持つ。


彼は主に、傲慢で開発した特殊ダイヤモンドと細胞レベルで融合し、生体ダイヤモンドとなった上でその強固なボディを駆使する肉体派。


「強固な防御は、転じれば攻撃力となる――更に言えば、鍛えれば鍛えるほどより強靭なダイヤモンドボディを作り上げる事も、可能だ」

「へえっ。あたしそう言うの好きだぜ」

「ほうっ――話のわかる女と言うのも良いが」


ガシッと拳を討ちつけ合い、一馬は構えを取る。


「俺は女と遊びに来た訳ではないのでな」

「――隙がない……さて、どうしたもんかな?」


幻想舞踏ミラージュステップ”を駆使すれば、負けない戦いは出来るだろう。

しかし綾香には、このダイヤモンドボディに通用する攻撃力は、残念ながら持っていない。


「……ちと試してみるか。こいつの硬さが鉱物としてじゃなく生体ダイヤモンドとしてなら、あれが通じる筈だ」


腰の双剣を抜き、くるくると手遊びする様に回して、逆手に構える



「……綾香に新田さんをぶつけると言うのは、いい判断ですが」

「おや、僕では不服ですか? 吉田君」

「まさか。貴方が椎名九十九と互角に戦ったという情報なら、ちゃんと入ってます」


そして、鷹久は目の前の男――メガネをかけ、温和な雰囲気を纏いつつ、蛇腹大刀“竜頭蛇尾”を背に、手には小太刀を握る男。

傲慢の上級系譜“野心”の契約者、岩崎賢二を見据える


「――どういうつもりなんですか?」

「僕等の盟主の“憤怒の援軍に向かうだろう、勇気の上級系譜を抑えろ”と命令がありまして」

「――そっちもですけど、傲慢は一体何のつもりで動いてるんです?」

「そちらは僕達も存じません」

「――貴方達上級系譜ですよね? 真意も知らずに動いてるんですか!?」

「“精神感応テレパシー”、“接触感応サイコメトリー”予防の為だそうです。それに聞いたとしても、僕達ではきっと理解はできないと思いますので」

「……そんなんで貴方ほどの契約者が従うなんて」

「――彼にはそれだけの力も器量も備わった、カリスマとしても優れている……そう言う事ですよ」


そう言って賢二は小太刀をしまい、先ほどの一撃を繰り出した蛇腹大刀を構える

対する鷹久も、装備をパワー仕様に変更し構えを取る。


「――それに個人としても、君達に聞きたい事もありましたので」

「?」

「君達は何故、一条宇宙と行動を共にしてるのです?」

「僕も綾香も、宇宙さんの思想に共感している為です」

「――北郷正輝の正義については?」

「……納得はできないけど、現状では仕方がないと思っています。でも結局、その先に宇宙さんの――僕達の望む様な未来がない以上、僕達は北郷さんの方針にこれ以上従う事はできません」

「――救うと言うのは何をもってですか?」


賢二の言葉に籠る雰囲気が、微かながら変わったことで鷹久は直感で悟った。

――恐らく、これが本題なのだろう。


「人とは何だったか、人の命はどれほど尊い物か――否定する事の意味も、人が生きる意味さえもほかならぬ人の手で、それも自分勝手な理由で完全に真逆の物にしてしまったこの世で、何をもって救いとするんです?」

「……今は変える事は出来ないかも知れませんが、命が“放っておいても勝手に生まれる物”程度でしかなくなってるなら、僕達が命を守りいつか取り戻すべき価値の礎にする事位は出来ます」

「――いい答えですね。でも尊ばれるべき素晴らしい思想であればある程、人は褒め称えこそすれど実践はせず、否定の材料へと変えてしまう……人にとっての人は否定する為の物であり、意思を汲む物ではないのです」

「責められるのがこわかったら、北郷さんに負けて離反すると決めた時に離れてますよ」

「そうですか――だが、それは間違いです」


賢二がごそっとポケットに手を入れ――ある物を取りだす。


「――おいで、ウロボロス」


取りだした物――上級系譜以上、そして一部の上位格の下級系譜だけが造りだせる、思念結晶体クリア。

主に思念獣の媒体に使われるそれを手に“竜頭蛇尾”を振るい、刀身が伸びて行くと同時に刀の柄にクリアを合わせ――


『シギャアアアアアアアアッ!!』


クリアを、そして竜頭蛇尾を媒介に思念獣“ウロボロス”を展開。


元々の柄の形をそのままにした物を尾に。

鱗の一枚一枚が刃の様に鋭く、削る事を目的とした身体に、巨大なノコギリの刃の様に鋭い背びれを持ち、槍の様な角を持った蛇となった。


「――それは人を腐らせる救いです。北郷正輝を否定する要素にはなりえません」

「一条さんは北郷正輝を否定したい訳じゃない。平和な世を実現したいんです」

「それは君達だけです。人は自分に絶対の幸福を齎す平和でなければ、平和とはみなさない――そして、自分たちが求める救いではないなら、意味を理解もせず自分勝手に踏み躙る……所詮は人にとって平和も救いも、自分勝手に踏みにじられる物でありません。程度第三次世界大戦終結がそうであったように」

「貴方達は……」

「“力こそすべて、弱さは罪”――全ては人の勝手が齎した事です。増して、否定の意味が踏み躙り貶す事になっている時点で、今の人ではそこが限界です」

「――すみませんが、命の価値が貶められて黙っていられる思想ではないので」

「汚れた命の価値は、血でしか洗えませんよ――許しを請う事は出来ても、許す事が出来ない限り……まあこの先は、僕の“ウロボロス”と交えながらにしましょうか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ