表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/171

第9話

「本当に面白い事件が起きてますね――流石は凪さん」

「――何故お前にこの事を教えたのか、わかるか?」

「え?」

「予知は完全ではない。未来とは、たとえるなら透き通った純水――絵具を一滴垂らすだけで、簡単に色を変える」

「?」

「未来に絶対等ない――この事件もまた、表面上が面白いと言うだけかもしれん。そう言う事だ」

「どういう事です?」

「それを考えさせるために教えた……失望させるなよ?」

「――はっ、はい!」




「――成程ね」

「その辺り、頼めないかな?」

「やめといた方が幸せ、とだけ言わせてもらうよ。しかし――」

「? どうかした?」

「いや――こっちの話」


ガラっ! 


「終わったよー」

「じゃあ……」

「あっ、ちょっと待ってくれない?」


愛奈が終わり、紫苑が入ろうとした所で、光一がストップをかける。

疑問符を浮かべる2人をしり目に、光一は教室の中へ。


「? どうしたの、光一君?」


次の生徒かなと思ったひばりは、入った途端に戸を閉めて周囲を警戒し始めた光一に、疑問符を浮かべながら質問。


「ひばり、調査は一旦中止だ」

「? どうかしたの、いきなり?」

「――この学校、被害者が多過ぎるのが気になる」

「え? ――確かに、被害者が今まで調査に出向いた所より、多い気がするけど」

「この学校での調査は方向性を変える。後日改めて……」


「それは困りますね」


相談を遮るように、1人の女性教師が入ってきた。

事件の事で、女生徒の相談役となっていた教師で、この調査の手伝いをしてくれた温和な雰囲気を纏い、メガネをかけた人。


「――あの、教師が盗み聞きなんて感心しませんね?」

「すみません。ですが調査を中止と言うのは、流石に教師としても女性としても、聞き捨てなりません。今学校はこの事件の所為で、男女の軋轢が生まれてしまい、乱れています。ですから、迅速な対処を求めます」

「いえ、調査をやめるのではなく、方向性を変えるんです。この学校は他と比較して、被害者が多過ぎるので――」


光一の発言は、突如遮られた。

教室内に轟音と共に爆発が生じ、窓ガラスは全て割れ校舎を揺るがした。


「きゃーーーっ!!」


教室から響いた轟音に、調査のために並んでいた女子生徒たちがパニックを起こし、逃げ惑う。

当然他の教室でも、突然の轟音と爆発に全員がパニックに陥り、絶叫と脚音が校舎内に充満する。


「だから困るって言ってるのよ、バケモノ」


――その渦中の教室で、女教師が吐き捨てる様にそう言い放った。

銃口から、煙を出す小型グレネード砲を手に、


「先生……何を、やってるんですか!?」

「――それ、本物?」


一部始終をたまたま目の当たりにしていた、紫苑と愛奈が唖然とした状態で問いかける。

くるりと向けた顔は、明らかに教師がするような表情ではなかった。


「うるさいわね――“バケモノ”が広大なる大地の贄となった。ただそれだけ」

「! “大地の賛美者”!?」


ひばりの叫びに、女教師はにっこりと笑い頷く。


「ええ。人の道を外れ、悪魔に魂を売り渡した外道“契約者”……死と言う浄化を施し、広大なる大地の贄とする神聖なる使徒。それが私達、大地の賛美者」

「そんな……先生が、テロリストだなんて」

「汚らわしい呼び方しないで頂戴。私たちは使徒よ、悪魔を討つ正義の――」


「――下着泥棒をカムフラージュに、上級系譜の暗殺か。確かに俺の想定外だった」


ぎょっと、ひばりを除く全員が目を見開いた。

小型グレネードで吹っ飛ばされた筈の光一が、けろっとした顔で服をはたいてるのだから。


「壁壊れちゃったね」

「あとで物質操作系呼んで直させるよ」

「くっ!」


女教師が小型グレネード砲を投げ捨て、太腿のホルダーから取り出した銃で、光一を撃つ。


チュイン! チュイン! チュイン!


「やめとけ、弾代の無駄だ」


銃弾を受けつつ、光一は右手を軽く上げ掌に電流を流し始める。

その電流ごと右手を突き出すと、派手な放電音を鳴らし電流が女教師を襲い――


「あぐっ!?」


電流を喰らい、倒れる。

――顔に施した特殊メイクがはがれた様を晒しながら。


「……変装かよ。本物は生きてるかな?」


「……」

「……」


その様子を見ていた愛奈と紫苑は、呆気にとられていた。

契約者は、人を超えた能力を使える事は知識として知っていただけで、実際に見た事はない。


――増して、上級系譜クラスの力等、そうそう見られる物ではない。

故に、面喰っていた。


「大丈夫?」


ひばりの声で、2人ははっと我に返る。


「えっと……うん、大丈夫」

「――契約者の能力なんて、見るの初めてだから、つい」


ドガアンッ!


2人の戸惑いを無視する様に、グラウンドの方から轟音が。

3人が目を向けた先では、光一が窓を開けてリボルバーを構えている姿が。


――外では、超電磁砲を受けてスクラップとなったパワードスーツの残骸が。


「なっ、なんだよ今の!?」

「光一の“超電磁砲レールガン”だ。以前見たことあるからわかる」

「――これが、上級系譜の力」


避難した生徒たちの中の錬、修哉、和人は、突如校舎から走った光の線に、パワードスーツの破壊される場面に、唖然としていた。


「――嘘だろ? 今の、あのモヤシ野郎がやったのかよ!?」

「嘘じゃない。信じれないかもしれないが――あっ」

「え?」


ふと校舎を見た先。

破壊された校舎の3階から、何かが飛び降りた。


「――怖かったあっ!」

「私も――出来ればもうやりたくない」

「ひばりもコントロール上手くなったな」

「まあ、これ位はね」


現れたのは久遠光一、支倉ひばり

そして、学校の生徒の江藤愛奈と、佐伯紫苑。


『死ねえ、契約者! 悪魔に魂を売り渡した外道め!』

『広大なる大地の贄となれ!!』


その比較的近くのテロリスト――“大地の賛美者”のパワードスーツ2体。


1つは、刃を人型に継ぎ合わせた様なフォルムの、近接戦闘型。

そしてもう1つは、両腕のガトリング砲と肩の砲身が特徴の重爆撃仕様。


その重爆撃仕様のパワードスーツが、肩のキャノン砲を光一達に狙い定め撃ち出す。


「させねえよ」


3人を庇う様に光一が立ちはだかり、両腕の袖を捲る。

不自然に黒く染まった両腕に電流を纏わせ、2つの砲弾めがけて電流を纏ったパンチをぶつけたその瞬間、両腕を纏う電流の強さが増し――


砲弾が打ち返され、重爆撃仕様のパワードスーツが破壊された。


『おのれぇぇええええええ!!』


それを見て激高した、もう一体の刃を継ぎ合わせた様なパワードスーツが、光一に襲い掛かる。


「……テロリスト相手でも、やっぱり悲しいよ」


そう呟いた少女は、自身の腕くらいの長さの2本の剣を抜き――


「“属性武装エレメンタルウェポン”」


ザンッ!!


『!?』


パワードスーツを四肢を斬り裂いた。


「光一君」

「――一般人の安全確保が最優先。その次で良いなら」

「……わかった。あたしも、そのつもりでやるよ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ