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第84話

誠実の契約者、御影凪

最強の予知能力者プレコグであり、最強の思念獣使い。


戦闘時においては、四霊を模した思念獣を使役し、あるいはそれらと融合する多彩な攻撃を得意とし――。


「――」


相手が取りうる動きを予知し、最善の戦闘スタイルで万全の対応を駆使する、“未来”を司る美徳の契約者。


「――やはり、剣戟で対応はしきれんか」


ただし、予知が完璧でも対応しきれるかは別問題。

相手(同格限定)の得意分野、例えばユウの剣戟戦や宇宙の格闘戦では、対応しきれない事が多い。


麒麟との融合形態――麒麟の角の槍を手にした、ケンタウロス

それを解除し、応龍に手を伸ばす。


「待て」

「――なんだ?」

「……3対も最強格がぶつかる事態を引き起こしてまで、何故俺達を止める?」


――美徳と大罪の全面戦争。


それが1対の物でも世に与える影響は、計り知れない。

まして、何の理由があるかは知らないが、美徳の二枚看板をぶつけてまで止める理由。


どう考えても、ユウの脳裏には今もなお続く政府の議会に、何か関係しているとしか思えなかった。


「議会は関係ない――希望と怠惰の戦争を仕組んだのも、政府の派閥争いに乗じて井上首相を失脚させ、首相の座を奪い取ろうとする輩だ」

「何――?」

「高額で雇ったフォールダウンを希望の傘下に嗾け、怠惰のナワバリに誘き寄せ衝突させたのが今回の戦争の発端。今頃昴がその証拠を集め、首相と共にその派閥をご退場願う準備を進めている筈だ」

「…………?」


予想外の答えに、ユウは絶句した。

ここまでするからには、議会の暴走が絡むと予想していただけに――全く関係ない事に。


幾らなんでも、功績をあげて貰っては困る程度なら、ここまでして止める事ではない。


「ちょっと待て! じゃあなんで……宇宙に死相でも見えるのか?」

「一条だけではなく、お前にもな」

「……!?」

「――更に言えば、お前と一条に何があってそうなったのかが見えない」

「――なん……だと?」


予知能力者プレコグは、自分の力を超えた事象を予知する事は出来ない。

更に言えば、レベルが低いと簡単に予知がブレる事もある為、予知能力を生業にする下級契約者は1つの事柄に数人で対応するのが普通。


しかし凪は最強の予知能力者であり、その法則にしたがえば彼に見通せぬ未来はない。

その彼に見えない未来――美徳、大罪を超えた何かが関係しているかもしれない


「――見えたのはお前の死体にあの小さい上級系譜が、そして一条の死体に夏目が泣き縋る光景だけだ。更に言えば、その2人もボロボロだった」

「お前で見れないって事は、俺達を超えた何かが実在する――でもあれは都市伝説同然の」

「そこを議論するつもりはない――改めて、勇気との同盟破棄を要求する。それが無理なら、一条に美徳へ戻るよう説得して貰いたい。勿論相応の……」

「対の信用を裏切る気はない」


応龍が差し出された左腕から、凪に絡みつくかのように頭部を除いた全身に、くまなく巻きつく。

その巻き付いた個所から、溶け込むかのように凪の身体に融合し、その身体に刺青を思わせる模様へと変化。


「――その意思は尊き物だと認める。だが」

「それとこれとは話は別だって事はわかってる。だが北郷を否定するだけで終わるんじゃ、他の大罪や美徳、首相にあわす顔ねえだろ」

「――大罪であるお前に言うのもなんだが、一般人や下級契約者が少しでもそう考えてさえ居れば、正義傘下の過激思想派閥がああなる事はなかったろうに」

「――? ……何か知ってるのか?」

「“役に立たないバケモノの分際で、人間様の世界で生きて居座るな”――契約者を受け入れる者たちの中に、そう言う考えを持つ者がいる事だ」


凪の右腕に、全身を覆うタトゥーのように融合した応龍の頭が、口を開く。

それと同時に、稲光が凪の掌から生じ、バチバチと音を立て始めた。


「――大地の賛美者の思想、犯罪契約者のバカさ加減もそうだが……どうしてこう、胸糞悪いもんばっかり抱えてんだろうな。人間って奴は」

「それを直接言われた者――お前が以前取り押さえた上級系譜はそれ以来、性格も思想も別人のように変わったそうだ」

「――あいつか」


――頭を抑えつつ、ユウはぼやく。

が、考えを振り払う様に頭を振り、凪を見据える。


「――色々と聞けた事は感謝するよ。考えるべき事が増えたし、これから成すべき事も随分と見えた」

「どうやら、色よい返事は無理のようだな」


凪が右手を突き出し、右腕の龍の頭のタトゥーが吠える様に口を開く。

その右腕の電撃が、息吹の様にまっすぐにユウめがけて襲いかかる。


「ちっ!」


ユウがその電撃をかわす――と同時に、龍の尾が仰ぐように動いている左手をかざし


「! うああああっ!!」


左手の動きに呼応するかのように電撃が曲がり、ユウに直撃。


「まだだ。“龍鱗スケイルアンカー”」


凪の応龍との融合部分――タトゥーの個所が蠢き始める。

そこから鱗がこぼれ、それが電撃をロープにした楔のような形状となり撃ちだされる


「遅い!」


それもユウにとっては取るに足らない攻撃で、1本残らず横に打ち払いつつ駆けだす。

距離を詰め、ユウが焔群を構え居合を――


ガンッ!


「! しまっ……!」


メキメキっ!


何かが突き立てられる音が響くと同時に、地面から違和感と物音。

ユウの足もとに突き立てられた楔を中心に地面が引っこ抜かれ、ユウは体勢を崩す。


「――もらった」


応龍との融合を解除し、次は霊亀と融合。

甲羅を分割したかのような全身鎧を纏った、重装甲スタイルへと……。


バキィッ!!


「ぐあっ!!」


なったと同時に、融合する前に着けた勢いのままユウの顔面にパンチをブチ込む。

ユウが吹き飛ばされ、凪は着地する前に融合を解いて、着地する。


霊亀融合時の体重は格段に跳ね上がっているが故の配慮である。


「――ってえなこの野郎!!」


怒号と同時に、噴火したかのような爆音が響く。


その爆音の中心。

汗の用にマグマを身体から噴出し、左手に打刀“焔群”、右手に斬城剣の二刀流。

背からは蜘蛛の足のように収束したマグマを噴き出し、その6つにそれぞれ腰の六本の胴太貫“六連”を1本ずつ握らせている、のユウの姿があった。


「――漸く本調子か。心してかからねばな」


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