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第81話

――宇宙と正輝の交戦するその一方で。


「――まいったなあ。まさかここまでわっちらの動きに対応しきるやなんて」


怠惰と希望の全面戦争。

その話が出るや否や、久遠光一は即座に憤怒忍者軍に指示を出し、怠惰の諜報へと向かわせていた。


――が。


『キーッ!』

「思念獣!? 撤退や!」


「来たぞ! 迎撃に入れ!!」

「こっちも!?」


その憤怒忍者軍は悉く妨害にあい、身動きが取れなくなっていた。

思念獣、あるいは部隊での待ち伏せにあって。


「――団長。他の小隊とも、連絡がつきません」

「……やろうな。せやけど、敵の正体はわかったえ。わっちらの動きを正確すぎる程完全に封じる言うたら、誠実の予知能力者以外あらへん」


「憤怒忍者軍団長、神埼深紅。武器とブレイカーを捨て、降伏せよ。如何に優秀な諜報員だろうと、我等の包囲から逃れられんぞ」


「――見つかったみたいやな」

「ここは我等がくいとめます。団長は、お早く――」

「無駄や。気付かれても構わん布陣しいとるなら、もう美徳自身が動いとる筈――こうなった以上、わっちら憤怒忍者軍の負けや。せやったら……」


深紅は非常用の通信装置に、非常コードを発信し――愛用のナイフを構え、戦闘態勢を取った。


「今は生き残ることを第一に考えや」

「了解」




「――非常コード!? まさか、深紅達が……」


――一方、光一は深紅からの非常コードを受け、驚きを隠せなかった

いち早く対応したつもりだったと言うのに、先を越された事に。


「どうした、光一?」

「――諜報に出した忍者軍が、襲撃を受けたみたいだ」

「襲撃って、なんで? 今あたし達の動きを制限したって……」


『お前達は動かず、大人しくしていて欲しいからだ』


突如割り込む声。


ユウ、光一、ひばりが振り向いた先には、うっすらと幽霊みたいな何かの膜に覆われた、人型に切られた1枚の紙。

――そこから声が……誠実の契約者、御影凪の声が響いていた。


「――成程な。凪、お前の仕業か」

『お前の所の上級系譜は優秀だな。おかげで、実力行使で止める羽目になってしまった』

「――一体どういうつもりだ?」

『今すぐ勇気と同盟を解消し、怠惰と希望の戦争に介入をしない事を約束して貰いたい』

「前者後者共に無理な相談だ」

『――ならば朝霧裕樹、戦闘準備を整えた上でこちらが指定する時間、場所に1人で来い。そしてその間、憤怒は住民の避難と防衛活動以外の行動を、一切禁止する。こちらの要求は呑まなかった場合、我ら誠実は憤怒との全面戦争も辞さない』

「……わかった、憤怒は避難と防衛以外の行動はしない。それで――」

『捕らえた、あるいは包囲している憤怒忍者軍は、お前の姿を確認し次第解放する』

「――わかった。さて、場所は……」


ふっと人型の紙を覆っていた、幽霊みたいなうっすらとした膜が消え、パサリと地面に人型の紙が落ちる。

ユウがそれを拾い――広げると、そこには地図が描かれていた。


――誠実は最強の思念獣の使い手であると同時に、最強の予知能力者。

嘘は通じないし、契約条件が誠実である以上……彼の言葉を疑う者は、この世界には存在しない。


「ひばり、斬城剣の修復は?」

「終わってるって、アキちゃんから連絡はありました。じゃあすぐに準備して貰います」

「ああ。それと光一、避難と防衛主体で頼む」

「任せろ」

「ああ、任せた――行って来る」



――所変わり、指定された地点にて。


「――いきなりの呼び出しと無茶な要求、すまなかったな」

「それはいいが――お前が俺って事は、宇宙には北郷か?」

「そうだ」


正義派閥は、知識、希望、誠実が同意の意を示している。

今ぶつかっているのが希望と怠惰である以上、自分の所には凪が来ていて、尚且つ宇宙を止める事が出来るなら……


簡単な消去法で、正輝がユウの頭に浮かんだ


「お前も随分と過激な手段使う様になったな」


ユウは肩に担ぐ斬城剣を下ろし、打刀“焔群”を抜き――

対する凪もパチンと指を鳴らし、周囲に四霊を模した思念獣を展開する。


「変わりもするさ――こんな世ではな」

「ああそうかい……だが、そう簡単に譲ってやるわけにもいかねえな」

「――一条にも言える事だが、安易な救いを考えるな」


思念獣の1体――鳳凰が凪の背に留まる。

その鳳凰が凪を包む様に同化し、背から翼を生やし足が鳥のそれという姿へと変わる。


「そんな事をした所で、気休めにもならん」


ガキィインッ!!


凪が飛びかかり、打撃と言うより斬撃を思わせる蹴りを放つ。

それをユウが、焔群で受け止めた。


「――諦めろ。とでもいいたいのか?」

「やり方が悪過ぎる上に、前提が間違っていると言いたいんだ」


焔を弾き、背の翼で空を飛び――凪は鳳凰との同化を解除。

空を飛ぶ力を失った凪は、そのまま重力に従い落下し――その下にいる麒麟と同化。


下半身が麒麟のそれとなり、槍となった麒麟の角を握った神々しいケンタウロスとなる。

ガバッといななく様に身体を起こした後に、槍を構え突進。


「はっ!」


ガギィっ!


その突きだされた槍に向け、ユウは焔群を突きだす。

突き出された槍の先に剣の先が寸分狂わずぶつかり、止められた。


「お前達は世を二分し、余計な諍いを引き起こしているだけだ――何の解決にもなってはいない」

「――んな事はわかってるさ。だから……」


焔群をずらし、切っ先のぶつけ合いをやめて距離を取り――ユウは焔を鞘に。

そして斬城剣を手に取り――。


「だから変えるんだろ。俺達が第三次世界大戦を止めて、首相と一緒に契約者社会を打ち立てた様に」


頭上で一回転させ、構えをとった。


「ならばまず人を変えることから始めるのだな」

「――わかってるさ。良い案は出ねーけど」

「今の人では、欲望を斬り捨てた方がまだまともな生を送れる――そう思える現状では、平和などただの気休めだ」


凪が麒麟角の槍を握りしめ、力を送り込み――

角の部分が、斬城剣の刃とほぼ同格の巨大さに膨れ上がった。


「――やるしかないだろ。命の価値を取り戻す為にも」

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