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第78話

「ですが、言われっぱなしと言うのも気分がいい物ではありませんので、反論位はさせて貰いますよ」

「どうぞ」

「北郷正輝さんが何故、欲望を斬り捨てると言う結論をだしたか――彼自身がこれ以上は限界だと悟ったのか、それとも私達には及びもしない何かを見たのか……と言った所で、彼の真意がどこにあるかはわかりません」

「うん」

「ですが貴方は14人の子供達と言いましたが、北郷さんに拘り過ぎです」


アキに指摘に太助は目を丸くし――うーんと唸って、首を傾げる。


「……言われてみればそうだね。そんなつもりはなかったけど」

「そんなつもりがないなら、何故欲望を斬り捨てるなどと言う結論を賛同するのですか? 14人の子供達……その内の7人のブレイカーは、欲望で機能しているのですよ?」

「そうだね。医療で命を救う色欲や、食の暴食や芸術の嫉妬の様に世の文化発展に多大な貢献を成してる大罪が居るのも事実だし、強欲だって汚職をやってる訳でもなければ、憤怒や怠惰だって政府に反乱の意思がないし――傲慢は得体が知れない所はあるけど、そんなことするほど馬鹿じゃないとも思うしね」


ならばなぜ――と、アキが問おうとした所で、太助はそれを制した。


「――単純にその人たちは信じる事は出来ても、人を信用できなかったんだよ。この傷の事も、サイボーグ義肢の悪用の事もあるしね」

「サイボーグ義肢の悪用はともかく、その傷の事はそれだけでは正解だとは言えませんよ」

「その理由は?」

「貴方がそんな仕打ちを受けた原因は、“欲望”ではなく“恐怖”だからですよ。それだけの力を持っているからこそ、14人の子供達が自分達にその力を向ける事を恐れ……と言うなら、それは欲望ではありませんよ」

「……」

「――貴方のその傷をどうこうとは言いませんが、人は欲望を斬り捨てると言う結論に達するには、まだ早すぎますよ」


――太助は黙っていた。

撃たれた個所を抑え……古傷を1つ1つ摩る。


「――早すぎる、ねえ」

「いずれはたどり着く場所かもしれませんし、そうでないかもしれません――いずれにしても、まだ早いです」

「ぐずぐずしてる医者に救える物はないよ」

「焦って答えを出した所で、失敗は目に見えてるでしょう?」


――太助はポリポリと頭をかく。


「――別にそれだけじゃないんだけどね」

「――?」

「いや、なんでもない――ただ、正輝様とは一度キチンと話をしておく必要があるか」


そう言って、太助はカルテを入れていたカバンから、一枚のディスクを取り出し――

アキに手渡した。


「――これは?」

「僕が構築した最新のサイボーグ義肢の設計理論。それを使えば、そっちのデカブツはより効率よく動ける筈だし、余剰分のエネルギーはバリアとか開発すればよりよくなるんじゃないかな?」

「確かにありがたい話で、良い案である事も事実ですが……何故これを?」

「――礼だよ。確かに僕も正輝様と過去に拘り過ぎてて、正輝様の本当に願う世界を蔑ろにしてたかもしれない。それに気づかせてくれた事の」

「でしたら私達も――」

「いらなきゃ捨てていい」


言葉を遮る様に言い放った太助の言葉に、アキも流石に何も言えなくなった。

太助にとっての北郷正輝と言う男の存在の大きさが、どれだけの物かを断片的にかもしれないが、理解出来たが為に。


「――わかりました。クエイクの改良の為に、これはありがたく使わせてもらいます。あとコレの入手経路は、拾ったと言う事にしておきますので」

「ん」

「出来る事なら、正義の方々の考えを変える一因になれる様に」

「それは無理だよ。クラウスを始めとした、仕方ないと判断した上で行動する、“こっちでは”比較的穏健派ならともかく――そっちが良く知る正義の面々は、それだけじゃ止まる事は絶対にないから」


「――だよなあ」


元々美徳としていくつかの接点があり、対峙した事もある綾香としては理解は出来た。


更に言えば、元々が度を超えた過激思想を前面に出し、少し前にユウと相対した事件の元凶であり――

決定的なのが、こちらの言い分を無視して街を焦土と化そうとした、1人の男を思い浮かべれば。


「――なあ、あのアンドロイドはやっぱり」

「配備するよ。量産して」

「あんないきなり襲いかかる上に、どうみても過剰装備な物を配備なんて、どうかしてますよ」

「防犯用途の品なんて、威嚇以外で役に立つ事の方がおかしな話だと思うけどね。それに上手く機能すれば、僕も医療に専念できるし」

「――上手い事を」

「ところで、時間大丈夫?」


そう言われて、ふと周囲を見回す。

時分は夕方を通り越し、夜が訪れる頃合い。


「あーーーっ! やばい。もう帰らないとタカと宇宙兄に怒られる!!」

「結局最後はしまらないね」

「うるさい! ――ひばりとアキはどうする?」

「そうですね、私達ももう帰りましょう」

「うん」


帰り支度を進める3人と、キャンプの準備を始める太助とクラウス。

――太助自身が医者の為、ここにとどまって予定通りの日程をこなす事に問題はないと判断した為に。


そんな太助にひばりとアキは……。


「色々と話ができて良かったです」

「そう」

「出来れば今度は、平和的に話し合いたい物ですね」

「機会があればね」


そう言って太助は、ひばりとアキに向けて手を差し出す。

2人はその手に手を添え、握手を。


「……それじゃ」


と、太助は素っ気なく、クラウスに支えられながらテントの中へと入って行く。

――最後にちらりと、アキの方を名残惜しそうに振り向いて。


「――ねえ、来島さん」

「なんです?」

「…………出来れば今度は、友達として会いたいね」

「――そうですね」




――次の日。


「アキお姉ちゃん、一緒にゲームやろ」


技術班のアキ専用研究室。

朝霧裕樹の妹、裕香がゲームを手に入ってきた。


――アキが徹夜明けの状態で


「裕香さんですか。いらっしゃい」

「また徹夜したの? ダメだよ、美容に良くないってテレビでもやってたんだから」

「美容とかそう言うのに興味ないです」

「もったいないなあ、アキお姉ちゃん美人なのに――それより、これの対戦やろ」


そう言って裕香が差し出したゲーム

今大人気のアニメを原作とした“魔機動少女パワードミコト ハイパードリームバトル”


「――わかりました。では、えーっと……」

「ねえアキお姉ちゃん、今度は何作ってるの?」

「クエイクの新しいフレームと駆動機構の設計ですよ」


では、次回から――どうしようか?

と、考えてます。

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