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第73話

「――どういう事だよ? だって、アキは……」

「昔そうだったと言うだけですよ。ただ、私にはとある経緯から過去の記憶がありませんので、知識で知っていると言うだけですよ」

「政府主催のエクスポで会った時は、目を疑ったよ――まさか突如行方不明になった友達と、憤怒の技術班長として再会するだなんて。正直複雑だけどね」

「――来島さんは……」

「知識で知っていると言うだけですよ。彼の事をどうこうという事はありません」

「――わかってはいても、だね……で、これが君の所の新型ロボット?」


衝撃の表明に3人が驚く中。

当人たちはさして意にも介さないまま事情を離し――太助がクエイクに目を向ける。


「――装甲厚過ぎないかな? エネルギー運用も、大半が稼働に回る程の重装甲って。スペックは調べたけど、僕ならもっと効率のいい稼働フレームや駆動機構を設計できるから、その分を……」

「貴方達と一緒にしないでください。私はクエイクを、もっと日常生活に役立つ事前提で作りたかったんです。ですので、人命を守るための装備以外を着ける気はありません」

「――来島アキ流の拘りって奴? なら仕方ないか」


技術者としての拘り

それを自身も持ってるだけに、太助はアキの主張を無碍にはしなかった。


「――あれも貴方なりのこだわり、と言う事ですか?」

「ん? ああ、“デストラクター”の事?」

「“殲滅者”、ですか……明らかに防犯アンドロイドに着ける名称じゃないでしょう」

「名称なんてどうでもいいだろ。防犯の役割をきっちり果たす、それで……」


「よくないだろ!」


その会話に、不機嫌さ丸出しで綾香が怒鳴りながら割り込んだ。


「――何が?」

「いきなり襲いかかるような危ない物を量産配備するとか、何考えてんだ!」

「それはそうだよ。最初からそういう設定にしてるからね」

「なお悪いだろ!」


いきりたつ綾香をひばりが抑え、更に間にクラウスが太助の護衛としていつでも飛びだせるよう、体勢を構えている。


「良いよクラウス、下がってても」

「――あのですね」

「良いから。止められてるから好き勝手に――何て思われるのも不快だからね」

「……はぁっ」


――それを太助が下がらせる。

ひばりに止められてる綾香はそれを見て、多少の毒気を抜かれた。


「いい度胸だな」

「――別に度胸じゃないよ。ただ単に感覚が壊れてるってだけ」

「?」

「もうやめようよ、綾香ちゃん。あたしは気にしてなんてないし、こんな所で正義と衝突したりなんかしたら、一体どうなるかわからない訳じゃないでしょ?」

「けど……わかったよ」


ひばりの訴えに、流石に綾香も折れた。

――が、その様子を見て太助は目を丸くしていた。


「――変わってるね、君は」

「何がです?」

「大抵が殴りかかるか罵倒するかのどちらかだから、ちょっと新鮮だっただけ」

「――でも、その“デストラクター”ですか? そんな物を量産、配備する事には」

「別に、拒否するなら力ずくで「おいこら!!」何てやらなくても、世が勝手に必要な流れになると思うよ」

「紛らわしい事言うな! まあそりゃあ確かに、あのテロ騒動で北郷さんはなくちゃいけない存在になっちまったが、だからってそんな事そうそう……」

「いや、勝手に勘違いしただけじゃない。そんな事がそうそう起こるのが今の世だよ、だって……


ゴオォォォオオオオオオオっ!!


「――人はもう、人である事すら保てない……いや、保つ事を許さないんだから」


突如、こちらに向けて何かが飛来してくるのが見えた。


綾香とひばりが装備を取り出し、クエイクがアキの前に立ち、ガードの体制を。

クラウスも思念結晶体“クリア”を取り出し、思念獣を展開。

5mはある身体を、神聖さを醸し出すデザインの騎士甲冑で包み、背には翼を持つ天使を模った、クラウスの思念獣――メタトロンが、姿を現した。


『ケケケ、見ツケタゾ』

『壮観ジャネエカ。上級系譜ガ3匹モ――』

『間違エルナ。狙イハ東城博士ノ方ダロ』


降り立ったのは、数十名にも及ぶ人間――もとい、戦闘用にチューンされたサイボーグ義肢を取り付けた、戦闘サイボーグ達。


「戦闘用サイボーグの軍団!?」

「悪趣味な……」

「――それだけじゃないよ。あれ」


太助が指さした先――恐らく、サイボーグ部隊の指揮官と思われるサイボーグを見て、綾香は目を疑った

生身の部分が全くない、純粋なロボットの様な様相。


「なっ、なんだありゃ!?」

「――僕が開発した、全身不随用サイボーグ義肢だよ」

「あれもサイボーグかよ!?」

「人としての身体を失う事にはなるけど、見た目は人工培養皮膚外装を使えば、さして問題はないから、これも十分幾多もの人を救った技術だったんだよね――こんな使い方されてりゃ、世話ないけど」


ガシガシと頭をかく太助は、不快感を――だす事もなく、サイボーグ達を見ていた。


『ドウダ、バケモノ博士! 自分ノ技術ニ殺サレル気分ハ!?』

『感謝ヲ込メテ、優シク広大ナル大地ノ贄ニシテヤルカラヨ!』

『ヘヘヘ。マズハ手足ヲモイデカラ、徐々ニ輪切リニシテヤリテーナ』


身体の大半をサイボーグにし、機械的な声がげひた笑いをもらしつつ、太助に向けて武器を構える。


「“命は大事”――これが本当に大切にされるべき物なのかな? 来島アキ」

「なんです? いきなり何を言うかと思えば……」

「誰1人として実践できやしなければ、簡単にその意味も価値も失う――そして、大切にする意志だって、所詮は出る杭になる」


それを意にも介していない。

そんな様子で、太助はアキに気楽に声をかける。


『無視シテンジャネーヨ!!』

『ブチ殺セ!!』


そんな太助の様子に激怒したサイボーグ達は、太助に向けて一斉砲撃し――

それが、メタトロンに全てガードされた。


「太助さん。あまり挑発しないでください」

「――ごめんごめん……」


そう言って、ひばりと綾香にも視線を向け――。


「これが人だよ……自分以外は踏み躙る為のありもしない敵か、自分を善に仕立て上げる為の道具でなければならない――最低である事を望み、それを維持する為に手段を選ばない」


そう言い放ち、太助は手元の端末の画面に触れ――


「常に最低でありたい――それが人の願いなんだ」


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