閑話 絶望と無の境界線(前篇)
突然ですが――
東城太助と、とあるキャラとの絡みが書きたくなったので――
ただし“正義の鉄槌鍛冶”ではなく“契約者社会の魔王”としての太助となので、ちと本編の世界崩壊の描写を盛り込みました。
一応作者様には了解は得てますが――できれば作者様はオフレコで。
ではまずは短いですし、とあるキャラは出ませんが、どうぞ
一条宇宙の死
それから一年が経過した後に、宇宙の妹一条宇佐美が宇宙の意思を受け継ぎ、2代目勇気の契約者となり――
そして、乱世が襲来し――世界は崩壊した。
その後の世界は、大罪と美徳が手を取り合う事を選び、世界の復興へと尽力する方針が可決され――
皮肉にも、世界の崩壊と言う大きな問題が、大罪と美徳の垣根を崩した。
しかし、それで上手くいくほど世は優しくできてはいない。
正と負の友好を反対する声、契約者を疎む声――
そして、現状の不満を現実逃避という形で、大罪や美徳にぶつけようとする者達。
正負友好は、そう言った火種をも燃え上がらせ、崩壊した世界の救済プランに危害を及ぼすに至ってしまっていた。
――そんな中で
「人間……万物において、最も醜悪で最低な存在」
人の荒廃と腐敗、暴走は1人の男を狂気に駆りたて、契約者社会の魔王へと変貌させた。
「自分の満悦……そんな欲望ですらない物の為に全てを食い散らし、踏み躙り、捻じ曲げ……そして秩序すらも踏みにじり、それを省みることすらできない」
正義の系譜“忠誠”の契約者にして、正義の技術班長“正義の鉄槌鍛冶”東城太助。
世界崩壊後、正義の契約者、北郷正輝は突如の行方不明。
それに加え世界崩壊の煽りを受け、正義の組織は程なく壊滅状態へと陥り――結果、傲慢の傘下へ下る事を余儀なくされた。
その際、東城太助は“敬虔”の契約者、クラウス・マクガイアの手引きで亡命。
正負友好が成され、復興されて行くだろうこの世界を――正輝の正義が否定された事を、納得出来る未来を信じ、一条宇宙の遺伝子情報を使用し造り上げた生体兵器“ブレイブシリーズ”のデータと共に、姿を消した。
――しかし彼を待っていたのは、それを裏切る人の闇。
「――人は己を律することを忌み嫌う。だから誰もが、他人の悲劇を無視して人の勝手を見逃し、秩序を踏み躙る……自由と偽った自分勝手を守るために」
――テロリストにとらわれ、大量虐殺を可能とする合成獣の開発を強いられ、太助は研究施設と言う名の牢獄にとらわれ……
未来を見据える事もせず、過去を振り返る事もせず――ただひたすら今をむさぼるしか頭にない人間に、絶望した。
その後は、ただひたすらに機を待ち、力を蓄え――それを実行。
自身をとらえ、踏み躙り、正輝の正義を歪曲して利用しようとしたテロリストたちは、既に自身の開発した合成獣により無残な死を遂げさせ――
当然の満悦と言う、欲望ですらない物の為だけに全てを踏み躙り、歪曲させ、ただひたすらに贅を貪るどころか食い荒らし、自分本位の不平等を誇示し――。
かつて正輝が提示したそれを、気に入らないと言う理由で踏み躙り、自分たちが贅を貪る為だけに歪曲した形で利用しようとした挙句、世界が壊れてなお未来をも踏み躙り、喰い荒そうとする者達――人間。
欲望を斬り捨てる――正輝の正義は、ある意味では間違っていたと、太助は思い知らされた。
「――人は欲望に腐っていたんじゃなく、最初から腐っていた……人は穢れたんじゃなく、穢れそのものだった……人は満足したいんじゃない。満足が当然なんだ……だから、人は平然と踏み躙る――果てしなき欲望の方が、まだよっぽど綺麗な物だったよ」
正輝の正義は、人という存在の見立てが甘かった。
正しき世界を創るためには、欲望を切り捨てる程度では全然足りない。
「――僕は、絶対に許さない。そんなに秩序が嫌いなら……」
――しかし、正輝の正義を掲げるつもりはない
自分が突き動かす物は、正輝を踏み躙ったことに対する憎悪であり、これは復讐。
言うなれば、正輝の正義その物を否定し、人間を踏み躙る為の物。
その為に、自身の開発した巨大合成獣“四凶”とブレイブシリーズをつかい――
「――永遠の苦しみと不幸を与えてやる……“魔王”としてな」
すべては既に手遅れだった。




