表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/171

第53話

北郷正輝の健在

それが示されると同時にテロ騒動が治まり、世は安寧へと戻っていった。


しかし、核兵器や毒ガスなんてシロモノが出て来て、これまで通り。

――と言う訳はなく。


「欲望は未来を食いつぶす有害因子である!!」


――北郷正輝が重傷を負った事による、影響力の低下。

それに伴っての、核兵器や毒ガスと言った兵器を使用するテロの連続勃発。


「此度の事で理解出来ただろう!? 人は高度な力を持ちながら、自身を律することを忘れ、欲望のままに暴虐の限りを尽くし、未来を食いつぶす存在になり果てている!! ――最早我ら人類の未来は、欲望が存在する限り存在はしない!!」

「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」

「正義の契約者、北郷正輝の名において諸君に命じる!! この世に悪と欲望の存在を絶対に許すな!! 悪に絶望を与え、殲滅せよ!! 正義の名の下、未来を――正しき世界を築き上げるのだ!!」

「「「はっ!!」」」


――それらが起因し、正義はその思想と活動、強硬姿勢を激化させる事となる。


また、世の秩序の不安定さが露呈した事で、“ご機嫌取りや理不尽より、規則に気をつけた方がまだ納得出来るし、生存確率はある”

――という考えが世に浸透し始めつつあり、反対意見も今回の事で発言力をほぼ失い、正義は完全に世の流れを担う存在となっていた。


「――大神、貴様が一体何を目論見、我に一条と接触したかは知らん……だが、我が貴様の思い通りになると思うな」




――しかし、変化が起こったのは正義ばかり

と言う訳ではなく……


「――まあ、当然っちゃ当然の流れだよな」


場所は憤怒のナワバリ。

新聞を読み、コーヒーをくいっと飲み干しーー


残虐の契約者、久遠光一はポツリと呟いた


「他人事のように言ってるけど……」

「わかってるよひばり。宇宙さんが傲慢に勝ってなかったら、完全に終わりだった」


世の流れは、正義が完全に掌握している訳ではなく――

今回の傲慢との一騎打ちの勝利の情報が流れ、一部は宇宙の方針――正と負の友好的な関係構築に賛同の意を示す者は出始めていた。


――主に、正義の方針について行けない正の契約者たちや、善意的な負の契約者たちから。


「――つくづく情けない」


同じく新聞を読んでいた宇宙は、ポツリと呟いた。


結局、施しを受けるしか自分の立ち位置は維持できなかった。

――恥を晒してでも、よりよき未来を模索し、見つけ出す覚悟はあった


しかし、自身は組織の長を務める身。

恥を恥と認識すればするほど、自身を信じた者達に対する申し訳なさが湧きでてくる。


「宇宙さん?」

「――いや、なんでもない。それよりだ、2人とも。この先俺達は、正義との対立がメインになる」

「うん。美徳の中じゃ、正義と相対出来るのは宇宙さんだけだからね」

「――とはいえ、どうするかの具体的な案はまだですよ。それに」

「傲慢の動きも、気になるよね」


勇気・憤怒同盟、正義が共通して懸念している事。

――傲慢がこの対立に介入した理由について。


今回の事で、傲慢は正義と同格かそれ以上の力を保有している事が証明された。

更に言えば、傘下にも正義と渡り合えるだけの戦力を保有している。


――そんな力を持ちながら、あれから傲慢は動こうとはしない。


「――この対立を煽って、一体何しようとしてんだか?」

「…………」

「――光一君」

「! ……そろそろ行こう、ひばり。正義と互角以上の傲慢とぶつかるとしたら、今の俺達じゃ勝ち目がないんだ」

「――そうだね」


「――やるしかないか。大神が何を目論見俺達に接触したかなんて、暴いた所で俺にはどうしようもない以上……利用されてでも、進むしかないんだ」



――所変わって、鍛錬場。


ガギィっ!!


「っくぅっ!!」

「――まだ甘い」


そこで綾香に鷹久が、朝霧裕樹相手に模擬戦を行っていた。

綾香とユウが握る刃の潰れた剣がぶつかり、綾香の剣戟が弾き飛ばされる。


「いってえ!!」

「バカ正直に攻めるな――」


ガシィッ!!


「――誰相手にしてると思ってんだ?」

「――!?」


斬撃が弾き飛ばされた瞬間、ユウの後方から鷹久が攻撃

武装解放オーバーアームズブースト重量強化ヘビーライト”の攻撃が――


「えっ!? ちょっ――!!」

「え? わっわああっ!!」


その腕をユウに掴まれ、一本背負いの要領で綾香めがけて投げ飛ばした。


「ま、良い攻めではあったけどね。コンビネーションなら、お前らに勝てる奴はそうそういな――って、何いちゃついてんだよ?」


綾香を下敷きに、胸に顔を埋める様な体勢の鷹久

――と言う形で倒れてる2人に、問いかける。


「いや、ユウさんの所為だろ。それにタカとはそんな関係じゃ――」

「良いから早く離れろ。押し倒された体勢で言われても説得力全然ないし、少しは恥ずかしが……るキャラでもないか」

「――側近がモテて自分がモテないからって」

「悪かったな!!」


鷹久が綾香の胸から顔を離し、ゆっくりと立ち上がる。

それに続く様に、綾香が背と腰を払いながら立ちあがって――


「それじゃ、続きだ!」

「――? どうしたんだよ、えっらい気合入ってるな」

「綾香、宇宙さんと大神さんの戦闘から、こうなんです」

「ふーん」


肩に担いでいた模擬刀を下ろし、くるんと手遊びの様に回し、構える。


「――宇宙の戦いを見て、思う所があったってコトか」

「? 何か言ったか、ユウさん?」

「なにも――良いからさっさとかかってこい」

「「はい!」」


「――勇気はまだ潰えず、か。ならまだ何とかなるか」




「――正義にしても勇気にしても、最良の形で事が進んだ。後は待ち、探すのみ」

「大神君」

「なんだ?」

「――強欲が何やら嗅ぎまわっている様ですが」

「放っておけ。嗅ぎつけたら嗅ぎつけたで、別に構わん」

「はい」

「では、私は眠る。ナワバリは任せるぞ」

「畏まりました」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ