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第51話

「……正輝様に続き、勇気とも接触だと? ――貴様等の狙いはなんだ?」

「さあ? 順番ならば、そちらを後にすると色々とややこしい事になるから、じゃないでしょうか?」


正義の系譜“一徹”の契約者、椎名九十九は、入ってきた情報に困惑し――

傲慢の系譜“野心”の契約者、岩崎賢二に問いかけるも、はぐらかされる。


「――それでも解せませんね。ならば何故私たちを足止めをする必要があるのです?」

「さあな」


援軍にやってきた、牧師服に手には聖書と言う牧師スタイルの、正義の系譜“敬虔”の契約者、クラウス・マクガイア。

それと相対するのは、こちらも援軍にやってきた身体が3メートル近くはある、大熊を思わせる様な屈強な体つきの大男、傲慢の系譜“闘争”の契約者、新田一馬。


クラウスも、傲慢の不可解な行動に疑問を持ち、問いかけるも――

傲慢側は決して口を割らない……もとい、全容を一切知らない事に、疑問を持つ。


「わかりませんね――正義に攻撃を仕掛ける事がどういう事か、わからない訳もないでしょう? それも、何故トップを動けなくしていると言うのに、手出しの出来ない私達上級系譜に攻撃を仕掛けるのです?」

「――だからわからんと言っているだろう。なんなら、“接触感応サイコメトリー”でも“精神感応テレパス”でもなんでも連れて来て、徹底的に調査してくれてもかまわんぞ?」

「……つくづく不気味な奴らだ」


クラウスと一馬のやりとりに、九十九は毒気づいた。


――悪の徹底的な殲滅がモットーの正義でも、特にその考えが強い九十九だが、どうにも解せない事の方が多過ぎ、二の足を踏めない。

自分たちは傲慢の手の上で踊らされているかもしれない――そう言う考えが浮かび、九十九の中でいら立ちが地団太を踏み自己主張をする。


「九十九さん、落ちついてください。焦っては向こうの思うつぼ」

「わかっている……!」


九十九は真実の瞳を起動し、賢二に狙いを定める。


「――やれやれ」


それに対し賢二は蛇腹大太刀“竜頭蛇尾”を頭上に構え、振り下ろす体制を取る。


「無理はしない方がいいよ――その“真実の瞳”って仮面。恐らく“精神感応テレパシー”と“透視能力クレアボヤンス”を、高度な照準演算装置と組み合わせた媒介何だろうけど……高度過ぎるが故に、君の脳にかかる負担も大きい筈だ」

「――!」

「――勇気の上級系譜には、耐えきれるような力はなかったが故に通用しただろうけど……僕には通用しないよ」

「舐めるな!!」


九十九が、背に砲台を展開したまま軍刀を抜き、賢二に向けて駆けだす。


「ファイア! ファイア!!」


駆ける最中も、賢二に向け砲撃。

砲撃自体は、賢二も一発とて油断は出来ない攻撃力であり、たたき落とす。


「貰った!」


至近距離まで詰め、九十九が軍刀を突きだす。

それに対し、賢二も小太刀を構えそれを弾き――眼前に砲口が迫る。


「――!」

「ファイア!!」


一瞬反応が早かったおかげで、賢二は眼前と砲口の間に“竜頭蛇尾”を割り込ませ、ギリギリでガード。


ドブッ!


「ぐっ……!」


その隙を狙い、軍刀が賢二の脇腹を貫きーー。


「ファイア! ファイア!!」


連続砲撃を賢二にたたきこんだ。


「――流石に、まともに当たると効きますね」

「ウソつけ。応えている様に見えん」



――一方にて。


「――主よ。神に仕える身でありながら戦場に立ち、十戒が一つ“汝、殺すなかれ”を破りし事、お許しください」


牧師服を纏った男、クラウスは聖書を開き――懺悔の祈りをささげていた。


「……」

「お待たせしました。では、始めましょう」


その様子を黙って見ていた一馬に礼を言い、クラウスは聖書を閉じ、懐に入れる。

そこから、自身の精製した思念結晶体“クリア”を取り出した。


「――ああっ、始めよう」


相対する一馬も、掌の上に傲慢のナワバリで作成した、人工ダイヤモンドを手に取る。


「――いでよ、メタトロン」


クリアに意識を集中し――自身のイメージした姿を投影し、思念獣を形成

5mはある身体を、神聖さを醸し出すデザインの騎士甲冑で包み、背には翼を持った――天使を模った、クラウスの思念獣。


「――傲慢を司るルシフェルは、神に逆らい地獄へと堕ちた……ならば傲慢の系譜として、、天使を引きずり出すと言うのも悪くはない」


一馬の掌の上の人工ダイヤモンドが、溶ける様に姿を消した。

――正確には、一馬の掌に溶け込むかのように。


その掌がぐっとにぎりしめられると同時に、拳から徐々に人ではない輝きを発し始め――徐々にダイヤモンドへと変貌していき……。

最後には、全身がダイヤモンドへと変貌していった。


「――“瞬間移動テレポート”の変形発動で、ダイヤモンドと融合したのですか」

「行くぞ」


そう言うと一馬は、ひとっ飛びでクラウスの懐に飛び込んだ。

咄嗟にメタトロンが横からタックルをし、軌道をそらす。


「――驚きましたね。その巨体で、そのスピードとは」

「傲慢の系譜を舐めるな」


ダイヤモンドの拳を握りしめ、一馬はメタトロンの顔面にパンチをブチ込む。

鈍い音が響くと同時に甲冑は拳型にへこみ、メタトロンはたたらを踏む。


追撃する様に膝を曲げ、クラウチングスタートの体制を取り――一気に体当り。

ガァンと派手な音が響き――メタトロンに受け止められた。


「――甘く見ないでもらいたい。私も正義の上級系譜です」


クラウスは首にかけているロザリオを引きちぎり、掌に乗せメタトロンに向け--そのロザリオから放たれた光の線が、メタトロンと繋がった。

それと同時にメタトロンが一馬のダイヤモンドボディを担ぎあげ、思い切り上にブン投げ――飛び上がり、拳を腹にブチ込んだ。


その勢いのままに地面にたたきつけられ、その身体で地面をえぐっていく


ツッ……!」


「ん? ――どうやら、硬度が高い分壊れた際のダメージも大きいようですね」

「ちっ……」

「そして、硬度の高い物を破壊するには、壊れた個所を狙うのが常套……葬儀は私の手で行いましょう」

「葬式を頼んだ覚えはないな。それに死ぬのは……!?」



「――“大地震アースクエイク”」


突如、その場の系譜以上の契約者は、異変を察知。


それと同時に……大地が悲鳴を上げるかのように轟音をあげながら振動し、引き裂くかのように亀裂が走り――


「うわあああああああああっ!!」


地面が爆発する様に裂け、岩石と共に幾多もの契約者達を巻き上げ、あるいは地割れの中へと呑みこんでいく。


「これは……!」

「――間違いない……これは!」


そんな中で、正義側はその全員が――絶望どころか、逆に歓喜に満ち溢れた表情だった。

この規模の大地震を引き起こせる者はたった1人。



「――ダメだよマー君。まだ立てる様な……」

「大丈夫だろうと、大丈夫じゃなかろうと……関係ない。我は立つ……立たねばならんのだ。欲のため、踏みにじるためだけに、その意味も知らず力を振り回す者以下に堕ちて、何が正義か」

「……マー君」

「我は幾多もの屍を踏み越え、同法であった一条宇宙の思想を否定した……だからこそ、勝ったからこそ……未来を奪い取ったからこそ、半端は一切許されん――屍の山を築くだけで、終わる訳には……未来を築くことなく、恥を晒す訳にはいかんのだ。絶対に!!」

「……」

「――我は北郷正輝! 我、正義の契約者はここにあり!!」

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