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第50話

傲慢が勇気に接触、交戦開始。

その情報は瞬く間に広まり、その影響を危惧したテロはなりを顰め――一先ずの警戒態勢をとりつつ、現状維持


……契約者側としては、格兵器や毒ガスと言った環境汚染を考える必要はない分、ある程度は楽になった。

しかし一般人からすれば、最上位の契約者のぶつかり合いである時点で、刺して変わらず。


「……」


――そんな緊張が続く事、2日。


「はっ……はっ……」

「ふっ……ふっ……」


休みなしでひたすらに続く傲慢と勇気の戦いは、未だ決着の様相を見せない。


「――宇宙兄」


――如何に上級系譜と言えど、巻き込まれては無事ですまない綾香は、絶えず“瞬間移動テレポート”で移動し身を守りつつ、見届けていた。

ついていくと決めた、勇者と呼ばれる男の姿を。


「――お前と言い北郷と言い、美徳の要となりえた者ともなれば、時間も苦痛も意思を折る要素となりえんか」

「……それと接触し、この混乱の元凶となった挙句、短期間で2回も日越しの戦いを繰り広げるお前は、一体何を考えてる?」


ギリっと歯を食いしばり、宇宙は構えを取り白夜と相対。


「――“力こそすべて、弱さは罪”」

「?」

「これが私の信条であり行動理念――弱者に存在価値はない」

「――いきなり何だ?」

「私を混乱の元凶……そう言ったな? だが北郷正輝との一騎打ちの始まりという時点で、それを理解出来た者はどれだけ居た事か――増して、引き分けと言う情報が出た時点では、私に対しその認識どころか非難の声など挙がってはいない筈だ」


――実際その通りである

特に負の契約者のナワバリ――最近攻撃を受けた憤怒では、称賛の声もあったほど。


「人は最早、自分の醜さを知覚する事すら出来ず、欲望を満たす為なら人である事すらも保てないどころか、拒むに至っている――己の弱さゆえにな」

「――けど人は元々が弱いもの」

「言い訳だ」

「――!」

「自分を哀れむ意思は、必ず歪みを生みだす――その歪みが、北郷正輝の正義でなければ世の秩序、人が人である事を保つ事も出来なくさせ……」

「――成程」


――宇宙は遮る様に、呟いた。


「――だから北郷を止めなかったって事か? それ自体が、お前の理念に反するから」

「そうだ」

「そうかもな――だが、弱さが生み出すのはゆがみだけじゃない」

「それはそれで構わん――だが」


大剣を肩に担ぎ、白夜は空間を叩き割り――


「ゆがみを甘く見過ぎだ」


叩き割った個所に大剣を突っ込む。


ブチィッ!!!


「!? 何だ……!?」

「――“三千世界崩し”」


何かがちぎれる様な音が響くと同時に、宇宙は周囲に広がる違和感を感じ――周囲を見回す。


「――何をした?」

「直にわかる」


今まで感じた事もない、言いようのない違和感が充満した雰囲気。

その中で白夜は、大剣に手をかけたまま悠然と立っている。


「――“風銃ふうガン”!」


――しかし、何かしない事にはその正体はわからない。

宇宙は人差し指を伸ばしたまま握りしめ、その指先に風を集中させてそれを撃ちだす。


「……」


その弾丸は、白夜の額と肩に命中し――服も肌も傷つける事無く拡散し、消えて行った。


「――何!?」

「……」

「……だったら!」


宇宙は右手に風を纏わせ、駆けだし--。


「――!?」


突如、天地のバランスが傾いたかのような感覚に襲われ、宇宙はバランスを崩しその場に倒れた。


「……重力操作? いや、違う。一体」

「宇宙兄!」

「綾香!? バカ、なんで近づいて……」

「違うよ。下がろうと“瞬間移動テレポート”したら、ココに出ちゃって……」

「――! まさか……!」


「……気付いてももう遅い」


白夜が大剣を捻り――突きさした先の空間内から、バギバギと鈍い音が鳴る。

その音に合わせる様に、目の前の風景が歪み始める。


「え? なんだよ、こりゃあ?」

「――まさか、蜃気楼?」

「え? ちょっと待った、宇宙兄。ここ砂漠じゃないんだから、蜃気楼なんて」

「あの剣だ」


綾香はそう言われて、白夜が空間に突き刺している剣を見る。


「――あの剣。恐らく空間を捻じ曲げて、法則自体に干渉してるんだ」

「砂漠でもないのに、蜃気楼を引き起こせるのかよ……って事は、さっきの違和感も」

「――恐らくな。だが、そうとわかれば!」


「甘い」


白夜が両手で大剣を握りしめ、突きさした空間を抉るかのように一回転させ――


バギバギバギバギバギバギッ!!


「! あっ、足場……いや、これは!?」

「うっ、うわあっ!」

「綾香! くっ……!」


その剣を中心に、地面ごと一回転するように上下がひっくり返り――


「……」


大剣が引き抜かれると同時に、壊れていた空間が閉じ元に戻る。

その影響を失い、宇宙と綾香は落下し始めた。


――頭上に、先ほどまで地面だった直径20kmは在りそうな大岩が、同じく落下する状態で。


「え!? まっ、マジかよ!?」

「くそっ、間に合わない! ……綾香、しっかりつかまれ!」


ズズゥゥゥゥウウウウン!!


落下した大岩は轟音をあげ、地面を潰し、周囲を薙ぎ払った

地面はせんべいを割るかのようにひび割れ、周囲は蜘蛛の子を散らす様に自然物から人工物まで、区別もなく吹き飛ばす。


その轟音が静まり、見るに無残な光景が広がる中――


ボコォンっ!!


「げほっ! ……けがはないか、綾香?」

「けほけほっ! ……ありがと宇宙兄」


綾香を抱きかかえ、風でガードし宇宙は吹き飛ばす様に姿を現した。


ブヂンッ!!


「! 綾香、離れ――」


綾香を突き飛ばす間もなく、宇宙は身体を引き寄せられ――


バギッ!


「ぐぅっ!」


白夜の拳が、宇宙の顔面にめり込んだ。


「――法則の狂った世界。それがどういう物かの意味、理解出来たか?」


ガシッ!


「!」

「ああっ……意味は違うが、確かに俺の認識は甘かったらしい」


顔にめり込んでいた拳を掴み、へし折ららんと言わんばかりに握りしめ――


「――だからこそ、変えなきゃな!!」


その腕を引き寄せ、白夜の顔面に宇宙は拳を叩き込んだ。



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