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第48話

「ファイア!!」

「――しっ!」


バギィン!! バギィン!!


しなるムチの様な軌道の剣戟、瞬間移動テレポートすら迎撃可能な砲撃。

互いに強力かつ正確な一撃が、幾度となく轟音が鳴り響くと同時にぶつかり合い、相殺されては衝撃波を生み――


「うああっ!」

「おああっ!」


地面を抉り、周囲の契約者達を水飛沫の様に吹き飛ばしていく。


「――負の契約者風情が、なかなかにやる」

「――たかが正の契約者に褒められてもね」


まだまだ余裕と言う感じで、両者ともにさらにスピードアップ。

轟音はより大きく響き、衝撃はより強くなり、戦場の流れを大きく変化させていく。


「はっ!!」


突如砲撃を止め、九十九が軍刀を抜き駆けだす。

対する賢二も、その動きを見据え小太刀を構え――剣がぶつかり合った。


「――妙な事ばかりをしてくれるな?」

「妙な、とは?」

「――憤怒に流れた怪映像、あれはお前達の仕業だと言うじゃないか。だと言うのに、突如の正輝様との一騎打ちでこの混乱を引き起こし、その混乱の最中である今我らに攻撃を仕掛ける……一体何が目的だ?」

「さあ? 僕達も事の詳細は全く知りませんし、そもそも知っていたとしても教える義理も意味もないでしょう? 貴方達の掲げる正義には、尚更にね」


九十九が自動拳銃を抜き、賢二めがけて発砲。

後退し距離をとり、小太刀で弾丸をはじき蛇腹大太刀“竜頭蛇尾”を振るう。


「ぬかせ。欲望を垂れ流し続ける事がどれだけ危険な事かは、歴史が何度も証明しているにも関わらず、人はそれに目もくれず同じ轍を踏み続け、その挙句の果てがこの様だ。否定される言われなど何一つない」

「その通りですね」


――否定の意が来ると思っていた九十九は、一瞬意識が止まる。

それを賢二は見抜いていたが、あえて攻撃を加えなかった。


「僕達は別に、貴方達の正義を否定した覚えはありませんよ。そうしなければ、こんな風に人は獣以下になり下がってしまう以上、仕方ない事だと証明するのに十分ですからね」

「――まさか、負の契約者から肯定の意が来るとは思わなかったぞ」

「僕達は“力がすべて、弱さは罪”がモットーの高貴な存在ですからね。自分の不満だけを高らかに宣言するなんて情けないマネ、する気などありません」

「何が高貴な存在だ。負の契約者の分際で」

「当然でしょう。僕達は“傲慢”なのですから――では、そろそろ本気といきましょうか」


蛇腹大太刀を上段に構え、刀身に念動力を纏わせる。

念動力は膜となり、その膜が龍の形を取り――賢二は踏み出す


『“刃龍ソードドラゴン”』


大太刀を振り下ろし、念動力で模った龍の頭が口を開き襲いかかる。

それに怯む事なく、九十九は膝を突き――


「クラッシュ!!」


背の自分の身体程ある、最も大きな砲台を発射。

念動砲弾と念動龍がぶつかり、龍が砲弾に喰らいつき噛み砕こうとし、砲弾も龍を貫かんと言わんばかりに突き進む。


「ファイア!!」


その行方を気にすることなく、九十九は6つの砲身の方を発射。

大太刀は現在ぶつかり合いの最中で、小太刀ではガードは不可能。


「――ドラゴンヘッド


――かと思われていたが、小太刀の方にも念動力の膜を張り、龍の頭の形をとる。

その龍が砲弾をとらえ――噛み砕いた。


――それと同時に、龍と砲弾のぶつかり合いも完全に相殺され、大太刀は元の形状へと戻されたため、互いに一歩踏み出す。


「…………」


そんな中で、九十九の被っている仮面“真実の瞳”の、瞳を模した装置全ては、ギョロギョロと見回す様に忙しなく動き続けていた。

矛盾が生じている戦い故に、罠を疑い真実の瞳を介し、戦場の様子をチェックするために


「…………」

「……?」

「――何か特別な流れもなければ、妙な動きもなしか……」


九十九は真実の瞳の照準を賢二に合わせ、背から伸びている砲身全てを構える。


「……成程、処理を全体に向けていたと言う訳ですか。処理が甘くてあれとは、甘く見ていました」





「なんだって!?」


場所は、勇気のナワバリ。

襲撃があり、先ほどまで戦闘を行っていた宇宙は、突如舞いこんだ情報に驚愕を示す。


「――宇宙兄」

「……まずいな。この前の正義とのぶつかり合いで醜態さらした以上、どう流れても俺達にとって不利になる」

「……ごめん、あたし達が不甲斐ないばっかりに」

「――いや、綾香が謝る事じゃない。なら、今すぐでもその戦いを止めに……」


「宇宙さん! B-12地区にテロリストの襲撃だ!!」


「――ダメか……仕方ない。綾香、B-12地区へ行くぞ!」

「え? でも……」

「ナワバリの安全が最優先だ!!」

「――わかった!」


――八方ふさがりの上に、裏目に出てのしっぺ返し。

状況がどんどん悪くなる一方であり、宇宙は――


「――くっそお」


自分の無力さを痛感し続けていた。



――勇気のナワバリB-12地区。


「ついたぞ、宇宙兄!」

「よし――」


到着と同時に、宇宙は脚に風を纏わせテロリストの集団めがけて駆けだす。


「いっ、一条宇宙だ!!」

「撃て! 撃ちまくれ!!」


如何に転落の一途をたどる不遇の勇者と言えど、契約者の頂点の1人。

テロリストの鎮圧など、特に時間もかからず――


「“奈落ドゥームズデイ”」


「え?」


終わると思われたその瞬間――


「え? うっ、うわあああああああああああああああっ!」

「たっ、助けて! 助けぇええああああああああ!!」


宇宙の目の前に展開されていた筈の、テロリストやそれが扱うパワードスーツを始めとする、兵器群。

目の前にあった筈のそれが、まるで地面に飲み込まれる様に姿を消し――まるで何もなかったかのような光景が広がっていた。


「これって……」

「宇宙兄! 今の――?」

「ああっ……これは」


「久しぶりだな、一条宇宙」


戸惑う綾香と宇宙の会話を遮る様に、1人の男が声をかけてきた。


「――大神!」


――傲慢の契約者、大神白夜


「なんでここにいる?」

「お前に確かめたい事があったのでな」

「北郷にケンカ売るわ、正義の軍勢にちょっかい出すわの暇人が一体何の用だ?」


「――大罪相手でも、あたしなら隙を突く位は出来る筈……“幻想舞踏ミラージュステップ”」


空気的に良くない物を感じ取った綾香は、隙を造って逃げ出す為、“幻想舞踏ミラージュステップ”を展開――


バギン!!


「!? うっ、うああああああああああっ!!」

「! 綾香!?」


しようとしたその瞬間、白夜が横なぎに腕を振るい、空間が叩き割られたと同時に綾香が悲鳴を上げ、倒れ込んだ。


「――バカが。私の“空間破壊”は、“瞬間移動テレポート”の最上位に位置する力。瞬間移動テレポート発動をねじ伏せるなど造作もない」

「うっ、くぅっ……」

「――それで、何の用だ?」


綾香を庇う様に、宇宙が白夜と対峙。


「何、簡単な話だ」


そう言って、先ほど綾香の“瞬間移動テレポート”を妨害した際叩き割った空間から、1本の剣を取り出し――無言で構えをとった


「――綾香を抑えられた以上、逃げられないか」

「……宇宙兄」

「――降りかかった火の粉だ。払うしかないな」






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