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第40話

『……今ならまだ間に合うが?』

『――俺には俺にとっての守るべき物がある。お前の方針ではそれを守れない以上、それだけは聞き入れる事だけは出来ない』

『そうか――ならば最早何も言わん』

『……守られている物の存在が確かにある以上、お前の狂気ともいえる正義その物まで否定するわけにはいかない――だが、理解する事と納得する事は別物って事だ』

『……最もだ――だが正義の厳しさとは、それ即ち人の価値。お前が狂気と評するものでしか保てない秩序、抑えられない程に堕ちた人……変えられるのか? お前に』

『――変えてやるさ。踏みだした以上、絶対に』


ザッ! ザッ!


『――お前の決意はわかった……だが我とて、相応の覚悟を持って踏み出した以上、退く訳にはいかん』

『……わかってる――だが、負けるわけにはいかないのは、俺も同じだ! 行くぞ!!』

『来い!!』



「ふぅーっ……きっついなあ」


所は、勇気のナワバリ。


正義の上級系譜率いる一部隊との交戦。

――そこで正義と自分たちの力の差を思い知らされる結果となってしまった故に、勇気の傘下契約者は系譜諸共に鍛え直し。


「そうはいっても……」

「わかってるよ……接戦の末の負けだった宇宙兄に比べると、あたし達はかなり情けないって事くらい」

「……負けた内容を比べるのもどうかと思うけど、そう言う事だよ」


その中には、上級系譜の2人の姿もあった。

――正義側の上級系譜1人に、2人がかりで押される結果であったが故に。


「――最も、重さ自体は僕達とは比較にならないけどね」

「だよなあ。何せ、美徳の盟主の座――正の契約者全体の方針を決定する戦いだし……想像を絶する領域って、この事を言うんだろうな」

「うん――あっ!」

「? どうした、タカ?」


ふと鷹久は、何かに気付いたかのように眼を見開き、声をあげる

それを綾香は、首を傾げ問いかけた。


「僕達と正義側との力の差の原因、わかった気がする」

「差の原因? なんだよ、それは?」

「それを乗り越え、見事美徳の盟主を勝ち取った男……そんな人の傘下なら、それを誇りに思うに決まってる。僕達契約者の力の根源は、意思の力――だからこそ正義の軍勢は、より強力な軍勢に進したのかもしれない」

「そう考えたら、理解できるなあ……あたし達だって、もし宇宙兄がそんな立場だったとしたら、これ以上なく誇らしいし、何よりもっと頑張ってやるって気になると思う――けど」


納得しそうになるのを抑え込み、綾香は鷹久に――


「あたしにとっては、美徳の盟主だろうと恥さらしだろうと、宇宙兄は宇宙兄だ。立場なんて関係ない」


そう言い放った。


「けど、意気ごみでどうにかなる物でもないよ? ――上級系譜のはしくれなら、綾香だって契約者社会の汚点ともいえる……」

「なら北郷さん以上の案を出せばいいだろ――あんな事しなきゃならない程、今の世は難しいのわかってるけど、それ諦める理由にならないし、何より決闘までした宇宙兄にもし訳ないじゃんか!

「――うん……やろう、絶対に。宇宙さんの覚悟と決意、無駄にさせないためにも」



「――綾香、鷹久、そろそろ休憩は終わりだ」

「うえーっ……」

「ほーら、さっきの意気でやろうよ」

「さっきの?」

「いえ、こっちの話です」





「――誰かな? ここは立ち入り禁止……これはこれは、正輝様に昴様」


所変わり、正義城の地下研究施設。

――正確に言えば、技術班長東城太助専用研究ラボ。


合成獣キメラ、兵器、ロボット、ETC……。

彼の手掛ける研究は生体から機械まで幅広く、その研究成果は正義の活動に大きく貢献しており、その事から“正義の鉄槌鍛冶”と呼ばれている。


そんな彼、東城太助はそこで、ただひたすらに時間を無視して作業に没頭していた。


「――掃除は清掃ロボットが居るから良しとしても、もう少し照明器具を増やしたり、何か音楽でも流したらどうだい? これでは気が滅入ってしまう」

「僕はこの薄暗さと静けさが良いのです。研究に集中できますので」

「そうかい――しかしこの広い空間で立った1人の作業とは、憤怒の来島アキでもこうはいかないと思うけど……」

「僕は根暗で人嫌いですから、作業は1人の方が良いのです」


この研究施設に生体と言える物は、東城太助と培養ビーカー内の合成獣キメラのみ。

――事実、その広い研究施設内には、助手どころか彼の部下さえ1人としていなかった。


「それで太助、作業の進捗状況は?」

「えーっと……」


ぐぅ~っ!


「――その前に食事を取れ」

「了解です。ではすぐに朝食を――」

「――もう夕方だよ。助手を、あるいは生活補佐ロボットをここに置きたまえ」



――数分後。


「もふもふっ……」


開くように切ったバゲットに、トマトやレタスなどを挟んだ特大サンドイッチ。

それを頬張り、太助は端末を操作し詳細を表示する。


「もぐもぐごくん――ご馳走様……では進捗ですが」

「頼む」

「作業の方は、新型の合成獣キメラはこの前やられた所為で、培養する所からやり直し。兵器の方は、真実の瞳の第2作の設計が終わった所と……例の兵器がもう少しと言ったところでしょうか」

「――九十九の治療があるとはいえ、少し遅れているな」

「申し訳ありません。ですが、これ以上急いては完成度に響いてしまい――出来あがりは、憤怒が開発したロボットにも勝ります」

「……ならば任せよう」

「はい――正義の鉄槌を作り上げる事……それが僕の役目ですから」


そう言って、太助は端末を操作する

――今開発している、新兵器の項目を。


「――それはいいが、今日はもう寝た方がいいよ。君、時間の感覚がくるっている以上、それ以上の……」

「結構です。寝るより研究する方が良いですし――何より、正義の為ですから」

「休め。倒れて貰っても困る」

「――正輝様は一条宇宙に、心臓に届くかと言う攻撃を受けてなお立ちあがり、勝利を掴み取ったったじゃないですか。ならば僕もそれ位……」

「休め」

「――畏まりました」


太助は部屋を出て、備え付けの仮眠室へとはいって行く。

――その様子を、正輝と昴は見届け……地上階へのエレベーターへと歩いて行く。


「研究者は僕の所にもいるし、他の美徳の研究者にもあってはいるが……彼ほど異常さを感じさせる研究者はいないね」

「――あいつは第三次世界大戦後の契約者社会樹立前に、我の幼馴染と言う事でひどい迫害を受けてな……それ故に、ブレイカーと手を差し伸べた事があいつの契約者としての始まりだ」

「まだ僕達がバケモノと扱われていた時代だね? ……それで、君の正義に異常なまでに従順な意思をもつ研究者になったと言う訳か。良い話じゃないか」

「――それだけならまだ良いのだがな」

「え?」

「いや、こちらの話だ。それより、慈愛と友情は一体どうなっている?」

「彼女たちは契約の条件上、一条君よりの考えで正義の方針には否定的だから――彼女たちの説得は続けているが、頭では理解していてもと言う奴だよ」

「――クラウスを向かわせる」

「クラウス君を? ――まあ彼なら信用はされるだろうが」

「――これ以上美徳の中での不協和音は、世の秩序に打撃を与えかねん。説得に応じないのであれば、力ずくも考えねばな」

「また荒れるよ?」

「覚悟の上だ」



コツ……コツ……


「――北郷正輝の非人間性? ……本来は皆が見据えるべき問題だっていうのに、それから眼を背けて利だけを貪った挙句、問題解決の手段を実行した偉大な男を、揃って貶す……本来否定しなければならない問題を庇って」


コツ……コツ……


「――どいつもこいつも、何一つわかってない……正義の厳しさは、それ即ち人の価値の低下を意味する。なのに皆それを理解せず、悲劇の主人公気どりで否定する……法律は人を差別する基準ではなく、戒める基準なのに……誰もが都合の悪いことからは目を背けて、火の粉がかかればそれを一方的に否定する」


ガチャッ!


「――早く実現させなきゃ……人の堕落、腐敗をせき止める為の手段。それはマー君の正義……徹底的な強硬姿勢でなければ、もう人の腐敗は止まれないんだ」


カタカタカタカタ……


「――」


――本編の改訂が思うように進まないです。


本編の方の改訂済みと表示した回

あそこの出来がどうかがわかるだけでも……という気もしますが

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