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第36話

憤怒のナワバリにおける、突然起こった謎の電波ジャック。

正義の契約者、北郷正輝と勇気の契約者、一条宇宙の対立の決起ともいえる場面と、そこから決闘に至るまでの場面の流布で、憤怒のナワバリには波紋が広がっていた。


――いわく、“勇気は正義の侵攻を防ぐために同盟を結びに来た”

――いわく、“勇気を信用させて、攻め入り易くするための罠”

――いわく、“決闘自体がすでに仕組まれた物である”


否定的な部分は、上級系譜2人を引き連れてきた一条宇宙が、瀕死の重傷を負っている状態で訪問して来た映像が残っていた事で、ほぼ撤回された。

――何より、元々勇気と正義の折り合いが悪い事自体が、正の契約者側では有名な話であり、方針を巡っての論争をした事等1度や2度ではない。


等の、状況証拠自体が揃えられていて、否定派の意見は1日で消滅。

――しかし、状況が状況ゆえに、信用できる証拠は欲しい事を……


「成程、わかりました――勇気には憤怒の名において、伝えさせていただきます」

「――よろしくお願いします」


ナワバリの市長面々からの要請と言う形で、憤怒の契約者、朝霧裕樹のもとへと届けられる事となった。


「何とか、住民の皆さんからは承諾してもらえたけど……これって喜ぶべきなのかな?」

「――確かに、釈然とはしないな。まるで誰かの手の上で踊ってるような感じだ」


その側近として控えていた光一とひばりは、ふとそう漏らす。


「だが、既に広まったことであり、現状勇気との再同盟が不可欠である以上、誰の意図の上に成り立っていようと、乗るしかない」


――それを聞いたユウは、2人にそう諭した。


「それに、何かがあっても大丈夫なようにするのが俺達だろ?」

「それもそうだ――なら、いつもと変わりはしないか」

「……うん。がんばるよ、あたしも」



――所変わって。


「――舌の根が乾かないうちからの再同盟支持……か」


知識の契約者、天草昴は首を傾げていた。


「……一体、誰がこんな事を?」


昴自身にとっては、よくない傾向であった。


元々、勇者と名高き一条宇宙の離反事態が、美徳にとって大きな損失である

更に言えば、正義と勇気の対立が続く事自体が、お世辞にも良いとはいえない状況ゆえに、どうにか納めたいのが現状。


説得は憤怒への正義の攻撃で、完全に不可能となってしまった事もあり、頭を悩ませていた所へ憤怒での電波ジャックの件が耳に入り――


「――対立は止まらない、か」


……避けられない事態である事。

覚悟していた事を自覚し、ため息をつく。



――更にその一方で。


「……」


鷹久と綾香に重傷を負わされた正義の上級系譜、椎名九十九はベッドで横になっていた。

――正確には、ベッドに固定された揚句、猿轡をされていた。


「へえっ……有用な稼働データだよ、これは。なら次は大丈夫、そんな無様な姿は晒させやしないさ」

「――!」

「次は大丈夫さ――友好なんて間違いを掲げる勇気のバカ達に、そんな醜態は晒させない」


その九十九に、白衣の男――東城太助はそう諭し、手元の端末を操作。

新たな真実の瞳および、兵器の開発データを纏めて行く。


「――熱心だなって思ったかい?」

「……!」

「当然だよ――法律なんか定めた所で、人が守れるのは自分の権利だけ。ほかは見て見ぬふりをするか、人を差別するための基準にするか、位しか使えない……その繰り返しでしかない歴史を、根本から変えるためなんだから」



--更にその一方で。


「――との事らしい」


勇気のナワバリ。

憤怒からの連絡を受けた宇宙は、上級系譜2名にそう伝える。


「って事は、制限は付くけど同盟再開かあ……思ったより早かったな」

「けど、一体誰が何の為に……?」

「確かに、俺もそこは気になっていた。憤怒の来島相手に足取りすらつかませない程で、俺達の同盟を支援する者――順当にいけば、敵が纏まっていた方が対応しやすいって事で、正義と知識かあるいは――何にせよ、俺達にはそれに乗るしかない……心しろよ」

「「了解」」


鷹久と綾香は、表情を引き締め応えた。


「さて、そろそろ訓練再開」


勇気のナワバリでは、修行のやり直しと言う事であちこちで模擬戦が行われていた。

――宇宙は鷹久と綾香相手に、ハンデ付きでの相手をしている


「――美徳との差って、多少のハンデじゃ全然埋まらねー」

「それ、美徳と相対した時にも言う?」

「……キビシーな」



――パタン


「――来島アキ、おそるるに足らず」

「あっ、こちらにいらっしゃいましたか。目を通していただきたい案件がいくつか」

「わかった。すぐに行く」

「急いでくださいね。正義が勇気と対立しているとはいえ、僕達ものんびりとはしていられないのですから」

「――案ずるな……私が居る限り、敗北などあり得ん」



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