第34話
「「「うおおおおおおおおおおおおっ!!」」」
――綾香と鷹久、九十九の戦いの間。
周囲では、生き残っていた勇気の勢力と、正義の勢力はぶつかっていた。
「突き進め!」
「勇気のクズどもを蹴散らし、悪を消せ!!」
「1人残らず殺せえ!」
街ごと薙ぎ払う砲撃のダメージのある勇気と、味方を薙ぎ払われてなお士気は下がるどころか、向上の一途をたどっている正義。
――上級系譜同士の戦いが、九十九1人に2人がかりで押されている事もあり、勇気はひたすらに崖っぷちの窮地に立たされていた。
「良いかお前達! 正義の兵足る者、悪と言う可能性の存在を絶対に許すな!!」
「「「おおおーーーーっ!!!」」」
九十九の号令に、正義の軍勢が咆哮。
「正義の鉄槌をくらえ!」
「うああっ!」
「死ねえ、この裏切り者どもがあっ!!
「ぐああっ!」
「――! 将太!! 恵一!!」
勇気の軍勢は押され、1人また1人と倒れて行く。
「――それがお前達の弱さであり、我ら正義とお前達恥さらし共との絶望的な差の根源だ」
所々で、眼を模した装置がギョロギョロと動く、とんがり頭の仮面
その仮面越しの視線は、侮蔑を含んで綾香達につきささる。
「我らは止まりはせん――我らの妥協が人の腐敗を招く以上、背負っている物が違う」
「――言ってくれるな。あたし達だって」
「何を背負っていると? ――美徳の方針をかけた決闘に負け、逃げ去った挙句クズどもとの慣れ合いと言う勝手をし続ける、恥さらしの分際で」
「――ふざけんな! 宇宙兄は恥さらしなんかじゃねえ!!」
いきり立った綾香が喰ってかかろうとしたのを、鷹久が遮った。
「恥ならいくらでもさらすさ――北郷正輝の正義は、宇宙さんにとっては許されて良い事じゃないんだ。美徳としての立場を捨てようと、恥さらしだの罵られ笑われようと、受け入れられる物じゃない」
「受け入れろ、でなければ死ね」
「そうやって、何もかもを消す気か?」
「問題はない。東城博士の手にかかれば、クローンの量産体制などすぐに整う」
仮面で隠れていたが、表情自体は全く変わっていないだろう事は簡単に予想は出来た。
「……どこまでも、正気疑うなおい」
「自由と身勝手の区別も着けられん負の契約者どもにより、自分本位の不平等がのさばり過ぎたが故だ。この世界は浄化されねばならん」
「自由と身勝手の部分は肯定するけど、正義と狂気も別物だよ……狂気に浄化された世界に、平穏などあるとは思えない」
仮面越しの瞳が、殺意に満たされるのを鷹久は感じ取った。
「――その正義への否定と腐敗への妥協が、新たな騒乱を引き起こすと言うのに」
仮面の眼を模した装置と背の砲門のすべてが、鷹久に標準を合わせる。
「言ってる事はわかるよ――でも、受け入れるわけにはいかない」
両手の小手、両足のレガースが、特殊液体金属で加工され形を変え――。
その横で、くるくると振りまわした双剣を構える
「その覚悟は無意味だ! ファイア!!」
背の砲門の1つが、鷹久に向け砲撃。
「!?」
「はっはー、慣れるとちょろいな」
――は当たらなかった。
「ファイア! ファイア!!」
次は綾香めがけての複数砲撃が放たれるが――
それは、鷹久の武装解放で、遮られた。
『――やっぱり。あの“真実の瞳”って仮面、複数照準が出来ないんだ』
『……ああ。考えてみたら、あたしの“幻想舞踏”すら捕らえる程の照準装置、あんなサイズで実現できる訳ねえもんな』
「――隙あり!」
九十九の背後に“瞬間移動”し、綾香は双剣を振り上げる。
「ほざくな!!」
「なーんてな」
九十九が振り向き、軍刀を抜き綾香に応戦――しようとした途端、綾香の姿が掻き消えた。
「はああっ!!」
それと同時に、鷹久が“武装解放・重装右腕”を展開し――
「ぐうっ!!」
渾身の一撃を九十九の左頬にたたき込んだ。
真実の瞳が砕け、露わになった顔面に拳がめり込み――振り抜かれた拳の勢いのままに、脳天を地面にたたきつけられ、バインドしながら吹き飛ばされていく。
「やった! 会心の一撃!!」
「うん、綾香の隙をついたのが大きいよ」
「いえーい!」
綾香が鷹久とハイタッチ――
「――ファイアァっ!!!」
する寸前に、怒声が響き――砲撃が二人を襲う。
「――ふーっ……ふーっ……」
何とか防御出来た、綾香と鷹久が目を向けた先――
拳を叩き込まれた個所は、どす黒く変色しつつ出血し、右側と比較しなくてもわかるほど酷い状態の九十九が――
朦朧とする意識を、昂りで無理やりつなぎとめている状態で、足取りの覚束ない雰囲気で立っていた。
「――ぶっ!!」
血へどと共に、九十九は今の衝撃でへし折られた歯を吐き出し――綾香と鷹久を睨む。
「まだだ……まだ……終わらん!!」
「もうよせよ! 死んじまうぞ!?」
「――だから……甘いと……言うのだ……」
鬼気迫る雰囲気に、綾香も隆久も一瞬ひるんでしまう。
「――自分は死なん……正義ある限り……正義の一部として、永遠に生き続ける……故に、我らには……死に意味はない!!
九十九が膝をつき、猫背の姿勢に移行。
――背の最も大きな砲台を、綾香たちに照準を定める。
「――! 出やがった!?」
「綾香、一か八かになるけど、行くよ!!」
「わかった!」
「正義に、傷はつけん……最後まで……正義の、尖兵として……恥じぬ、働きを――クラッ……!」
綾香と鷹久が駆けだし、九十九は巨砲を構え――
「「そこまでだ」」
突如、綾香と鷹久の腕が――
「――派手にやらかしやがったな」
背後から、朝霧裕樹に掴み取られた。
「僕達が言えた義理じゃないけど」
九十九の方は、背の訪問を切り裂かれた後、眼前に光剣が突きつけられ――
周囲の戦いも、それを見るなりぴたりと止まった。




